【前回記事】
この記事は、書籍「世界はラテン語でできている」を読んで興味深かった内容について抜粋して紹介する記事です。
この本は、古代ローマから用いられてきた言語が現代にどのように残っているのかについて書かれています。
政治、宗教、科学だけでなく、美術やゲームなど幅いジャンルに浸透している言葉について知ることで、世の中の解像度が上がって世界が少し楽しくなるかもしれません。
今回のテーマは、“バレンタインデー”についての話です。
ラテン語とは少し離れますが、キリスト教にゆかりのある逸話を紹介するので軽い気持ちで読んでみてください。
聖ウァレンティヌスとバレンタインデー
〜引用&要約〜
日本になじんだキリスト教圏の習慣としては、クリスマスに次いでバレンタインデーが挙げられるかと思います。
本来は恋人や家族に贈り物をする習わしですが、日本では主に女性が男性にチョコレートを贈る習慣になっています。
バレンタインデーの逸話として、愛のために犠牲になった司祭の話があります。
そのストーリーを以下に少し紹介します。
「時は13世紀初頭、当時のローマ皇帝クラウディウスは、兵士が家族を持つことで士気が下がるとし、結婚することを禁じていました。
しかしキリスト教の司祭ウァレンティヌスはその規則を無視し、密かに兵士の結婚式を執り行っていました。
このことを耳にした皇帝は怒り、ウァレンティヌスをローマ宗教な改宗させようとしました。
これに対しウァレンティヌスは改宗を拒み、皇帝に愛の尊さを説いても受け入れてもらえませんでした。
その結果、西暦1207年2月14日に処刑されてしまうのです。」
この逸話から、彼が処刑された2月14日をウァレンティヌスの日として恋人たちの記念日とされています。
しかし、上記のような言い伝えがそのまま書かれている古代の文献は見つかっておらず、加えてカトリック教会が1969年にウァレンティヌスを聖人暦から削除したことにもあるため、この話が本当かどうかは疑問が残っています。
ウァレンティヌスに関しての逸話は今なお定まっておらず、数々の聖人たちの話を集めた「黄金伝説」においては、ウァレンティヌスは3世紀にクラウディウスという皇格(クラウディウス・ゴティクス)の命により処刑されたと書いてあるものの、その理由はキリスト教の信仰を棄てなかったからだとされています。
「黄金伝説(Legenda aurea)」
大筋は上の話と違っていませんが、「黄金伝説」にはウァレンティヌスが結婚式を執り行ったことについては何も書かれておらず、祈りの力で人の視力を回復させた人物として記されています。
ただ、古代から2月14日を記念日とする聖ウァレンティヌスという人物が伝えられているのは確かであり、中世頃には恋人同士が2月14日に恋文を送りあうという習慣が生まれていました。
それはこの時期から鳥たちがつがいはじめると信じられていたからだと考えられています。
現在でも、いわゆる雑学として「聖ウァレンティヌスは兵士の結婚を執り行って皇帝の命により処刑された」と耳にしますが、すでに書いた通りこの噂は根拠が怪しく、そのまま他人に伝えて良いか迷うところでもあります。
加えて、この話はローマ皇帝の残忍さが際立ったりするため、反ローマ的な思想が色濃く出ているものとも考えられます。
〜引用&要約ここまで〜
この聖ウァレンティヌスの話が本当かどうかはさておき、愛や恋に関係するイベントとして認識されるようになったのは共通するようですね。
せっかくならこの素敵?な話のまま記憶にとどめておきたいものです。
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