今回から3回に渡ってまとめていくのは、プラトンが著“ソクラテスの弁明”です。
聞いたことはあるものの中身まではよく知らない著書のひとつとも言われています。
古代から語り継がれている一人の哲学者にフォーカスしたこの作品。
喋り口調でとても回りくどい表現が多用されまくっていますが、「ソクラテスの弁明?あぁ知ってる知ってる。」と言えるような状態になるまでまとめていこうと思います。
まずはストーリーに入る前に知っておくべき事前知識からです。
問答しまくりソクラテス
ソクラテスは古代ギリシャで活躍した哲学者です。
当時弁論が盛んだったアテナイにて、彼は賢いと言われる者に近づき問答を繰り広げ、相手の無知をさらけ出すという手法で有名でした。
ソクラテス「あなたの仕事は何ですか?」
↓
A「医師だ。」
↓
ソクラテス「何のために医師をやっているのですか?」
↓
A「人を幸せにするためだ。」
↓
ソクラテス「医師は人を幸せにするのか?」
↓
A「する。」
↓
ソクラテス「どのように?」
↓
A「薬を与え病苦を取り除く。」
↓
ソクラテス「薬を飲むことは苦痛ではないか?そもそも病気にならないことが真に幸せではないか?治すばかりで健康にいる手段を教えない医師は果たして人を幸せにできるのか?」
↓
A「うう…それは…。」
っといった感じで政治家、職人、医師、兵士…誰これ構わず答えられなくなるまで問いかけ続けていました。
問答をはじめたきっかけ
彼がこのような問答を始めるようになったのにはきっかけがあります。
仲間の一人であるカイレポンとアポロン神殿へ神託を授かりにいったときのこと。
もともと知識欲のあったソクラテスは、神の声を届けてくれるとされる神殿の巫女にこう問いました。
「私より知恵のあるものはどこにいますか?」
すると、
「あなたより賢い者はいません。」
と言われます。
その答えにソクラテスは納得できません。
自分が賢いなどと考えたことがなかったからです。
しかし神が嘘をつくはずがない、神は一体何を言おうとしているのか…。
彼は考えた末、あの神からの神託は何らかのメッセージだと捉え、実際に智者と呼ばれている者を尋ねるようになります。
自分より知恵のある者を見つけて神殿に連れ行けば、「私より賢い者を連れてきました。あのときの意味は一体どういう意味だったのですか?」と問えるからです。
「〇〇とは一体なんですか?
こういうパターンはどうですか?
それはこういうことではないですか?」
町に名だたる智者と呼ばれる者たちに問答をしますが、最後まで答えられる者はいませんでした。
彼は問答を続けることで恨みを買ったり身の危険があることも理解していましたが、神のお告げとあらば自らの意思で止めることはできないと考えていました。
そして問いかけを続けることで彼が得た結論はこうでした。
「神だけが本当の知者である。
人間の知恵などちっぽけなものだ。
神は私を使って彼らに人間は無知であることを知らせようとしている。」
これを確信したソクラテスは、命ある限り問答を続けようと決心したのです。
ソクラテス訴えられる
神の意思において問答を続けたソクラテス。
その様子を見ていたアテナイの市民は、普段は偉そうにしている智者たちが彼に論破される様子を目の当たりにし熱狂しました。
中にはソクラテスに恥をかかされ、名誉どころか職を失った者もいました。
彼が70歳の頃、そのような者たちの恨みによって裁判にかけられてしまいます。
理由は、国が信仰する神を信じずに独自の神を輸入し、青年たちを堕落させた罪によるものでした。
原告はメレトスという髭が薄く鼻のとがった若い男だったそうです。
ソクラテスの弁明
前置きが長くなりましたが今回の文学記事テーマである“ソクラテス弁明”は、この彼の裁判での様子が描かれたものです。
ソクラテス自身は著書を一切残しませんでしたが、弟子であるプラトンがその様子を書き残したものが現代にも残り続けています。
ソクラテスの弁明は、裁判の真っ最中が物語のスタートになっています。
なので最低限の予備知識が無いと楽しむことができないため、冒頭に裁判に至るまであらすじを書かせてもらいました。
次回は正真正銘ソクラテスの弁明をまとめていきます。
コメント