カインとアベル
アダムとイヴが楽園を追放された後、二人の間に生まれた子どもがカインとアベルです。
兄のカインは農耕で生活し、弟のアベルは羊飼いでした。
ある日、神はカインとアベルにそれぞれ捧げ物をするように言いました。
アベルは、神はどんな捧げものをしたら喜ぶかを考え、大切にしている子羊(肥えた羊)を一匹捧げることにします。
カインは、何を捧げれば一番自分が困らないかを考え、果物と穀物をいくつか捧げることにします。
神は当然、アベルの捧げ物を選びました。
人類初の殺人
自分の捧げものが選らばれなかったことを理由に、アベルに嫉妬したカインは、怒りに任せ弟のアベルを殺してしまいます。
神がカインにアベルの行方を尋ねると、カインは言いました。
「さあ、知りません。私は弟の番人でしょうか?」
カインは神の前で嘘をついたのです。
神がこのことを知ると、罰としてカインを呪いをかけます。
その呪いは、土を耕しても作物はできず死ぬまで地上を彷徨うというものでした。
カインは、
「彷徨っているうちにいつか追い剥ぎに殺されてしまう!」
と嘆きました。
すると神は、慈悲としてカインが殺されることのないよう呪印を施し、地上を彷徨せました。
美術としてのカインとアベル
ルロワールはカインとアベルが神へ捧げものをする姿を書きました。
弟のアベルが神にその身と供物を捧げる姿とは対象的に、兄のカインは怪訝な顔をしながら弟の後を追います。
ルーベンスの作品では、神に選ばれなかったカインが嫉妬によってアベルを殺す瞬間を描いています。
カインの怒りとアベルの苦悶の表情が見て取れます。
光の表現か、カインは少し薄暗く、アベルは少し明るい感じがします。
色のイメージでも善悪が対象的に見えますね。
ティントレットのカインとアベルも、殺人のその時を描いています。
表情は見て取れませんが、遠巻きでもカインの怒りの様相が伺えます。
首を切られた羊が不気味の宙を見ているのも、負の感情が湧き出てきます。
この絵は、ルーベンスの絵よりもハッキリとカインが黒く描かれています。
この絵は後に、黒人を奴隷にする際の行いを正当化するためにも使われたりするなど、負の歴史にも関係することになります。
アベルの殺害後のカインを表現したものが、アンリ・ヴィダルの彫像です。
うなだれ、手で顔を覆う姿は、
「なんてことをしたんだ…。」
と後悔と嘆きが伝わってきます。
…いや、でもあなたこの後神に嘘をつくんですけどね…。
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