近年、思春期の若者における不安障害の増加が世界的に深刻な問題となっています。
米・National Library of Medicineの推計では、2023年には子ども・青年の約5人に1人が何らかの精神疾患を抱えているとされ、とりわけ不安症はその中でも最も頻度の高い状態の一つです。(日本では公式発表されている統計は見当たらず……)
こうしたメンタルヘルスの課題に対して、従来の研究は主に身体的健康(肥満や糖尿病など)に焦点を当ててきましたが、最近発表されたレビュー研究は日常的な食習慣が不安症状とどのように関連しているかを検討した点で新しい視点を提供しています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考研究)
・Sugar-Sweetened Beverage Consumption and Anxiety Disorders in Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis(2026/02/19)
研究の目的と実施体制

本研究は、イギリスのボーンマス大学の研究者らが中心となり、国際的な複数の先行研究を統合的に評価するシステマティックレビューおよびメタアナリシス(統合解析)として行われました。
研究チームは、2000年から2025年までに発表された関連研究を電子データベース(Medline、Scopus、Web of Scienceなど)から収集し、飲料の糖分摂取と不安症状との関連性を統合的に分析しました。
この手法は、既存データを評価するものであり、同大学による意図的な臨床試験や介入は行っていません。
対象と評価された研究の種類
研究に含まれた論文は合計9件で、うち、7件が横断的研究(ある時点での関連性を評価)、2件が縦断的研究(時間経過を追って関連を評価)という構成でした。
調査対象は主に10〜19歳の思春期・青年期の若者であり、いずれの研究もアンケート形式で
1. 糖分入り飲料の摂取頻度・量
2. 不安症状の有無・程度
の2点が報告されています。
対象となる飲料には以下が含まれていました。
• 炭酸飲料(ソーダ)
• エナジードリンク
• 加糖ジュース
• 甘味付きティー・コーヒー
• フレーバーミルク
共通点は「糖分が多く、栄養価が低い」ことであり、日常的に若者に摂取されやすいものです。
一貫して見られた関連性:具体的な統計
統合解析の結果、糖分入り飲料の摂取量が多い若者は、不安障害を報告する割合が高い傾向にあることが確認されました。
中でもメタアナリシスのから、糖分飲料摂取量が多い集団は、不安障害を報告する可能性が約34%高いという観察結果が出ています(オッズ比(OR)=1.34、95%信頼区間1.14–1.59)。
この統計は、いくつかの研究で「不安症の有無」を二値化して評価したデータに基づくものであり、純粋な因果関係を示すものではありませんが、複数の研究で同様の関連性が一貫して見られたことは重要です。
観察された関連性の幅と限界
多くの研究が一貫した傾向を示した一方で、以下のような点も指摘されています。
• すべての研究がアンケートに依存しているため、自己申告の誤差や報告バイアスの可能性がある
• 調査に含まれる項目や評価尺度が研究ごとに異なるため、統一した評価指標で比較が難しい場合がある
• 糖分入り飲料の定義に幅があり、調査方法が統一されていないケースがある
• 研究対象の地域的偏り(例:中国の研究が多いなど)によって、地域差が反映されにくい可能性がある
因果関係は証明されていない

この研究は観察研究の統合であり、因果関係の証明には至っていません。
したがって、「糖分入り飲料が不安を引き起こす」と断定することはできません。
逆に次のような可能性も指摘されています。
• 不安を抱える若者がストレス対処として糖分入り飲料を多く摂取している可能性
• 家庭環境、睡眠障害、経済的背景など、共通した交絡因子が両者に影響している可能性
つまり、観察された関連性は確かに存在しますが、原因と結果の方向性は明確ではなく、双方向のシナリオが考えられるという点は重要です。
公衆衛生的な意義と今後の展望
思春期は身体的・心理的な発達が著しい時期であり、不安障害の増加は長期的な影響を及ぼす可能性があります。
今回の研究は、従来の身体的健康リスクに加えて、食習慣と精神的健康の関連性を示唆した点で公衆衛生的な意味があります。
ただし、メタアナリシスは観察研究に基づくため、臨床的な介入研究や因果関係を明らかにする長期的な追跡研究が今後の課題として残されています。
まとめ
・糖分入り飲料の摂取が多い思春期の若者ほど、不安症状を報告する割合が高い傾向が観察された
・しかし因果関係は証明されておらず、不安が糖分摂取を増やす可能性や他の交絡因子の存在も考慮する必要がある
・食習慣と精神的健康の関連性を示す重要な証拠として、今後は介入研究などによる因果関係解明が求められる

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