超加工食品への依存はかつてのタバコ産業と同じ

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2026年2月、米国の研究チームが、超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPFs)について新たな分析を発表しました。

 

それは単に「健康に悪い食品」という枠を超え、タバコ産業が長年用いてきた戦略と類似した工業的設計がなされている可能性があるというものです。

 

本研究は、超加工食品を単なる食べ物としてではなく、「依存性や過剰摂取を促す工業製品」として捉える視点を提示しました。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考研究)

From Tobacco to Ultraprocessed Food: How Industry Engineering Fuels the Epidemic of Preventable Disease(2026/02/02)

 

  

研究の背景

 

この研究は、ハーバード大学、ミシガン大学、デューク大学 に所属する研究者らによって実施されたものです。

研究チームは、超加工食品がタバコ産業の設計戦略と共通する要素を持っている可能性を検討しました。

 

具体的には、食品の製造工程や成分配合が「強迫的な消費」を誘導するように設計されているのではないか、という観点から分析が行われました。

   

 

UPFsと「依存性誘発設計」

研究者らは、超加工食品とタバコ製品が以下のような共通点を持つとして比較しました。

  

・砂糖、脂肪、塩分の「最適化された配合」

・摂取量を増やすよう調整された“用量設計”

・快楽性(hedonic value)を最大化する味覚設計

 

【hedonic value】

商品やサービスの利用・購入から得られる、楽しみ、喜び、興奮といった感情的・心理的な満足感や心地よさ

  

これらの特徴は、依存科学・栄養学・公衆衛生の歴史に基づき、両産業が消費者の意思決定や生物学的報酬系に働きかける点で類似していると指摘されています。

 

例えばタバコではニコチンの放出速度や吸収効率、味覚を調整する工夫が依存形成の中心となりましたが、超加工食品でも糖質・脂肪・添加物の配合・加工方法が報酬系に強く作用するように設計されている可能性が提示されています。

 

なお、ここでいう「依存性」は ニコチン依存と同じ薬理学的依存性と断定するものではなく、行動学的・生物心理学的要素を合わせた広義の依存性の議論である可能性があるため、この点は原論文を直接確認したうえで検証が必要です。

  

 

タバコ規制の教訓を食品政策に応用すべき

 

論文は、超加工食品の健康への影響を評価する際に単に栄養成分の有害性を見るだけでなく、その工業設計や消費者への影響を包括的に評価する必要があると主張しています。

 

そして、以下のような規制ツールをタバコ規制から応用することを提案しています。

• 子ども向けマーケティングの制限

• UPFsに対する課税制度の導入

• 製品ラベルの改善と警告表示の義務化

• 学校や病院での販売制限

• 訴訟を含む法的手段

 

これらは、タバコ規制で公共衛生に寄与してきた施策として知られていますが、超加工食品にも同様のアプローチが有効であるという見方です。

 

 

産業戦略の類似点と健康被害

スタンフォード タバコ産業の宣伝広告アーカイブ より

  

論文では、タバコとUPFの産業が用いる共通の戦略として、広範なマーケティング、包装デザイン、味覚強化技術などが挙げられています。

 

これらは消費者の認知や選好に働きかけ、工業的製品として広く普及する要因になっていると分析されています。

 

さらに、超加工食品の過剰摂取は心疾患、がん、代謝性疾患、糖尿病などのリスク増加と関連していると述べられており、これらの疾病は予防可能であるにもかかわらず現代社会で広く見られます。

 

これはタバコと同じく、「産業設計された製品が健康被害につながる」という構図と重なります。

 

 

規制が必要とされる理由

UPFsは世界中で食糧供給の中心的存在になっており、米国では一般の成人の 1日の総カロリー摂取量の半分以上が超加工食品由来 というデータもあります。

 

また、報告によれば超加工食品には「低脂肪」「高タンパク」などの健康指標風ラベルが付くことがあり、消費者が誤解して選びやすくなっている点があるとされています。

 

これは、タバコ業界がかつて「フィルター付きタバコ」を安全であるかのように宣伝した歴史と類似しています。

 

  

見解の分かれる点と今後の研究課題

この論文の主張は注目されていますが、すべての専門家が全面的に賛同しているわけではありません。

  

UPFsの「依存性」をタバコのニコチン依存と同等に扱うことについては議論があり、薬理学的依存なのか、行動条件付けや習慣性なのかを区別する必要があるという指摘もあります。

 

特に、UPFsのカテゴリーは極めて多様であり、全てを同じように規制すべきかどうかは慎重な検討が必要です。

 

本論文は、UPFsの健康リスクを単なる栄養的評価だけでなく、産業設計の視点からも捉え直す重要な提言を行いました。

 

タバコ規制をモデルにすることで、食品政策に新たな視点をもたらす可能性がありますが、UPFsの依存誘発メカニズムの解明や規制の社会的影響と健康改善効果の評価など、今後の研究と議論が求められます。

 

  

まとめ

・UPFsはタバコ産業の工業設計戦略と類似した要素を持ち、依存性や習慣化を促す可能性があると論文が指摘している

・研究者らは、子ども向け広告規制・課税・ラベル表示改善など、タバコ規制のツールをUPFsにも適用するべきだと主張している

・依存性の性質や規制の効果については議論があり、今後さらなる科学的検証が求められる

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