世界的な高齢化や食の質の低下に伴い、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患は、世界中のあらゆる人々と関連するようになってきました。
脳卒中や偏頭痛も含めると、神経障害による死亡率の第2位に位置するまでになっています。
それだけでなく、世界経済に対するアルツハイマー病(ADRD)の経済的負担は1.3兆米ドルを超え、年間約1000万件の新規症例が発生しています
そんな人間の機能を蝕む病気ですが、皖南医学大学による新たな研究で、コーヒーを定期的に飲む高齢者は、認知症やパーキンソン病といった神経変性疾患のリスクが低下する可能性があることが明らかになりました。
ただし、この効果は砂糖や人工甘味料を加えない「無糖」のコーヒー、かつ「カフェイン入り」のコーヒーに限られるという条件も確認されました。
今回のテーマとしてまとめていきます。
参考記事)
・Study Finds Coffee Linked to Lower Risk of Dementia, But There’s a Catch(2025/01/21)
参考研究)
研究の背景と目的
研究は、コーヒーの摂取が神経変性疾患にどのような影響を与えるのかを検証することを目的として行われました。
以前の研究でも、コーヒーが脳に対して何らかの保護作用を持つ可能性が示唆されていましたが、今回の研究では「無糖でカフェイン入りのコーヒー」に焦点が当てられています。
研究チームは、コーヒー摂取がどのようにアルツハイマー病、パーキンソン病、さらにはこれらの疾患による死亡リスクに影響するのかを詳しく調べるため、英国在住の204,847人の健康データを分析しました。
このデータには、被験者のコーヒー摂取習慣や健康状態、認知症の診断結果が含まれており、これらを基にコーヒー摂取量と神経変性疾患の発症リスクの関連性が調査されました。
対象者は以下の5つのグループに分類され、9年間にわたり追跡調査が行われました。
1. コーヒーを全く飲まない人
2. 1日0~1杯飲む人
3. 1~2杯飲む人
4. 2~3杯飲む人
5. 1日3杯以上飲む人
最も顕著な効果が見られたのは「1日3杯以上飲む人」でしたが、どの量のグループでもコーヒーを飲む人は飲まない人に比べて以下のようなリスクの低下が見られました。
(縦軸)ハザード比=1より低ければ病気の発症率が低い
(横軸)1日に何カップコーヒーを飲むか
• アルツハイマー病および関連疾患のリスクが34%減少
• パーキンソン病の発症リスクが37%減少
• 神経変性疾患による死亡リスクが47%減少
無糖・カフェイン入りコーヒーの重要性
この研究で最も注目すべき点は、効果が確認されたのは無糖でカフェイン入りのコーヒーのみであるという点です。
砂糖や人工甘味料を加えたコーヒーには、このような健康効果は確認されませんでした。
研究チームによれば、カフェインが脳を保護する特定の役割を果たしている可能性がある一方で、砂糖や人工甘味料はその効果を阻害しているのかもしれません。
この点についてはさらなる研究が必要であるとしています。
研究論文には次のように記載されています。
「甘味料を加えないカフェイン入りコーヒーと神経変性疾患の間には、複数のメカニズムによる関連性が示唆されている。」
科学的な限界と今後の課題
今回の研究では、因果関係を直接証明することはできません。
つまり、コーヒー摂取が認知症を防いでいるのか、それとも初期の認知症が人々のコーヒー飲用習慣を変えているのか、あるいは第三の未知の要因が存在するのかは不明です。
また、被験者が自ら報告したデータに基づいているため、正確性に限界がある可能性もあります。
さらに、脳や神経変性疾患は非常に複雑で、遺伝や環境要因、生活習慣など、さまざまな要素が絡み合っています。
そのため、今回の研究結果だけで結論を出すことは難しいものの、コーヒーの健康効果に関するこれまでの研究と一致する点が多いことが注目されます。
過去の研究との関連性
過去の研究でも、コーヒーには認知症の進行を遅らせたり、寿命を延ばす可能性があることが示されています。
特に、カフェインが認知機能の低下を遅らせる可能性があるという証拠が示唆されています。
研究チームは「コーヒーに砂糖や人工甘味料を加えることは有害な影響を及ぼす可能性があるため注意が必要である。」と述べ、コーヒーに対する飲み方次第で健康効果が左右されると結論付けています。
まとめ
・無糖でカフェイン入りのコーヒーが、アルツハイマー病やパーキンソン病のリスクを低下させる可能性がある
・砂糖や人工甘味料を加えたコーヒーでは同じ効果が確認されていない
・さらなる研究が必要であるものの、コーヒー摂取が脳の健康に良い影響を与える可能性が示唆されている
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