2025年1月17日、アメリカ食品医薬品局(FDA)が、赤色3号(Red Dye No.3)の食品および経口薬での使用を正式に禁止すると発表しました。
この決定は、赤色3号の発がん性が科学的に指摘されてから数十年後にようやく実現しました。
アメリカでは約3,000種類の食品製品や薬品に使用されている赤色3号は、すでに欧州連合(EU)や日本、中国など多くの国々で禁止されており、今回の措置により、アメリカも追随する形となります。
参考記事)
・FDA to Revoke Authorization for the Use of Red No. 3 in Food and Ingested Drugs(2025/01/15)
赤色3号とは?
赤色3号(化学名:エリスロシン)は、食品や薬品に使用される合成着色料の一つで、主に以下の製品に使用されてきました。
• キャンディー
• スナック菓子
• フルーツ加工品
• マラスキーノチェリー(シロップ漬けチェリー)
• 一部の医薬品
この着色料は、製品の見た目を鮮やかにするために使用されてきましたが、発がん性や神経行動への悪影響が指摘されており、特に子どもへの影響が懸念されています。
なぜFDAは今になって禁止したのか
FDAの今回の決定は、2022年11月に科学公共利益センター(CSPI)などの市民団体が提出した請願をきっかけに進められました。
請願では、「Delaney Clause(デラニー条項)」が重要な根拠として引用されました。
この条項は、動物や人間で発がん性が確認された色素添加物を禁止する規定です。
FDAは、これを踏まえて次のような内容を発表しました。
「赤色3号の食品および経口薬への使用を禁止する」
「食品製造業者は2027年1月15日までに、医薬品製造業者は2028年1月18日までに製品の再配合を行う必要がある。」
長年の議論と遅れ
赤色3号が発がん性を持つ可能性は、1990年にFDAがすでに認識していました。
当時の研究では、雄ラットにおける甲状腺がんとの関連性が確認され、FDAは化粧品での使用を禁止するべきだと結論づけました。
しかし、食品業界からの強い反発により、食品での使用は継続されました。
特にマラスキーノチェリーを製造する企業や、キャンディーやスナック業界が赤色3号に依存しており、見た目の良さを優先するため禁止が見送られてきました。
赤色3号に関する科学的な懸念は、発がん性にとどまりません。
近年の研究では、合成着色料が注意欠陥・多動性障害(ADHD)や記憶力への悪影響を引き起こす可能性が指摘されています。
他国との比較:アメリカの遅れ
アメリカが今回ようやく禁止措置を取った一方で、他国は数十年前に同様の規制を実施していました。
• 欧州連合(EU):1994年に赤色3号を禁止
• 日本:食品での使用を一部禁止済み(厚労省 添加物使用基準 1046項 より)
• 中国、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド:赤色3号の使用を禁止
元FDA法務顧問で現在はリッチモンド大学教授のカール・トバイアス氏は、「アメリカの健康保護というFDAの使命に照らし、この決定の遅れは矛盾している」と述べました。
さらに、業界のロビー活動が長年にわたって影響を与えたことを指摘し、今回の禁止措置を「一歩前進」と評価しました。
子どもへの影響:神経行動への懸念
赤色3号の禁止のきっかけとなったのは発がん性ですが、他にも神経行動への悪影響が注目されています。
特に、合成着色料がADHDを持つ子どもに与える影響に関する研究が増えています。
2021年にカリフォルニア州が発表した報告書では、以下の点が指摘されました。
1. 合成着色料は神経伝達物質を変化させる可能性がある
2. 脳構造に微細な変化を引き起こし、記憶力や学習能力を低下させる
3. 子どもによって感受性が異なるため、一部の子どもは特に影響を受けやすい
動物実験でも、着色料が脳の活動に影響を与えることが確認されています。
今後の展望
CSPIは今回の決定を歓迎すると同時に、さらなる行動を求めています。
「合成着色料は食品に栄養価を与えるわけでもなく、保存性を高めるわけでもない。ただ食品を見た目だけで魅力的にしているだけである」とCSPIの科学者トーマス・ギャリガン氏は述べました。
CSPIは新政権に対し、以下のような追加の措置を求めています。
1. 鉛やヒ素、カドミウムなどの重金属に対するより厳しい規制
2. その他の有害な化学物質を食品から排除する取り組み
3. 合成着色料全体の使用削減
まとめ
・赤色3号が食品および経口薬から禁止され、業界は再配合を求められる
・アメリカは他国に比べ規制が遅れたが、ようやく追随する形となった。
・赤色3号は発がん性だけでなく、子どもの神経行動への悪影響も懸念されている
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