科学

時々の甘いお菓子はむしろ健康的?7万人のデータ分析から判明したこと

科学

Frontiersにて発表された最新の研究では、糖分摂取が健康に与える影響はその摂取源によって大きく異なることが明らかになりました。

 

特に、甘い飲み物は心血管疾患リスクを大幅に高める一方で、適度にお菓子を楽しむことはむしろ健康にプラスになる可能性があるという驚くべき結果が示されています。

 

この研究は、スウェーデンの大規模なコホート研究を基に行われ、心血管疾患の予防において「糖分の摂取量」だけでなく「摂取源とその背景」を考慮する必要があることを強調しています。

 

今回のテーマとしてまとめていきます。

 

参考研究)

Added sugar intake and its associations with incidence of seven different cardiovascular diseases in 69,705 Swedish men and women(2024/12/09)

 

 

糖分摂取と心血管疾患リスクの関係

Added sugar intake and its associations with incidence of seven different cardiovascular diseases in 69,705 Swedish men and women より

 

研究チームは、糖分摂取が心血管疾患リスクに与える影響を調査するため、スウェーデン・マンモグラフィ・コホート(女性のデータ)とスウェーデンコホート(男性のデータ)という2つの大規模研究データを使用しました。

 

これらのコホート(集団)では、1997年と2009年に参加者が食生活に関するアンケートに回答しており、科学者たちはそのデータを活用して摂取する糖分の種類や量がどのように健康に影響を与えるかを追跡しました。

 

最終的に、69,705人の参加者データが分析対象となり、彼らは以下の3つの糖分摂取カテゴリーに分けられました。

 

1. トッピング(例:蜂蜜やジャム)

2. お菓子(例:ケーキやペストリー)

3. 甘い飲み物(例:炭酸飲料やジュース)

 

 

同時に、研究では7種類の心血管疾患が分析されました。

 

• 虚血性脳卒中

• 出血性脳卒中

• 心筋梗塞

• 心不全

• 腹部大動脈瘤

• 心房細動

• 大動脈弁狭窄

 

2019年までの追跡期間中、参加者のうち25,739人が何らかの心血管疾患を発症しました。

 

科学者たちは、このデータを用いて糖分摂取が心血管疾患リスクに与える影響を評価しました。

 

 

添加された糖の推定

 

参加者の総添加糖摂取量は、スクロースと単糖の総摂取量から果物、野菜、フルーツジュース、ジャムに含まれる天然糖の摂取量を差し引くことによって推定されました。

 

天然に存在する単糖とスクロースの量は、スウェーデンの食品組成データベースを使用して推定されました。(補足表S1より)

 

追加された糖の摂取量(g/日)は、その後、非アルコールエネルギー摂取量の割合に変換されました。

 

この添加糖密度変数は砂糖の摂取量が少ない順に、「≤5 E%、>5–7.5 E%、>7.5–10 E%、>10–15 E%、>15–20 E%、および>20 E%」に分類されました。

 

Janzi S, González-Padilla-Padilla E, Ramne S, Bergwall S, Borné Y and Sonestedt E (2024) Added sugar intake and its associations with incidence of seven different cardiovascular diseases in 69,705 Swedish men and women. Front. Public Health 12:1452085. doi: 10.3389/fpubh.2024.1452085

【研究資料から読み取れること】

研究に添付されている資料(シート3〜9)では、上記のデータをもとに各疾患のリスクについてまとめています。

  

ここでは、それらのシートから読み取れることをまとめていきます。

 

1. 糖摂取量が多い場合のリスク(虚血性脳卒中と腹部大動脈瘤)

– 虚血性脳卒中のリスクは、糖分摂取が15〜20 E%の場合9%増加

– 腹部大動脈瘤のリスクは、糖分摂取が20 E%以上の場合31%増加

   

2. 糖分摂取量が極端に少ない場合のリスク

– 多くの疾患では、糖分摂取が5 E%以下のグループで最も高いリスクが見られた

  

3. 低~中程度の糖分摂取量でのリスク低下(2と比較)

糖分摂取量が5~7.5 E%の場合、以下の疾患でリスク低下が確認された

– 虚血性脳卒中:8%減少

– 心筋梗塞:5%減少

– 心不全:9%減少

– 大動脈弁狭窄:9%減少

– 心房細動:7%減少

   

また、糖分摂取が7.5~15 E%の場合、心不全、心房細動、大動脈弁狭窄のリスクがさらに減少した

 

4. 出血性脳卒中との関連

– 糖分摂取量と出血性脳卒中のリスクには関連が見られなかった

 

   

甘い飲み物の危険性

また、研究さらに見ていくと、甘い飲み物の摂取は他の糖分摂取源と比べて健康に最も悪影響を与えることが明らかになりました。

  

特に、甘い飲み物を多く摂取する人々は以下の疾患のリスクが大幅に上昇しました。

  

• 虚血性脳卒中

• 心不全

• 心房細動

• 腹部大動脈瘤

 

この結果について、筆頭研究者であるルンド大学のSuzanne Janzi氏は以下のように述べています。  

   

甘い飲み物に含まれる液体の糖分は、固形の形状の糖分と比較して満腹感を与えにくいため、過剰摂取につながる可能性がある。また、飲み物は頻繁に消費される傾向があり、これが健康への悪影響をさらに助長していると考えられる。

 

 

お菓子を少し食べている人は健康的?

一方で、お菓子を時々楽しむことは、極端に糖分摂取を制限するよりも健康的であるともとれるデータが示されました。

 

つまり、糖分を極力摂取しない人々の心血管疾患リスクは、適度にお菓子を楽しむ人々よりも高い傾向にあったということです。

 

この理由として、Janzi氏は以下の点を挙げています。

 

• 糖分摂取を断つ、もしくはごく少量に抑えている人は、他の栄養素やカロリーの摂取不足を反映している可能性がある

•糖尿病をはじめとした何らかの健康問題のために糖分摂取を控えている場合がある

 

さらに、スウェーデン独特の「フィーカ(fika)」という文化的背景も結果に影響している可能性があると指摘されています。

  

 

フィーカとは、コーヒーとお菓子を楽しむ習慣であり、これは社会的なつながりを深める重要な機会とされています。

 

このような文化的背景が、適度な糖分摂取をより健康的なものとしている可能性があるのです。

 

 

今後の課題と注意点 

今回の研究は観察研究であるため、因果関係を特定することはできません

 

また、今回の研究対象であるスウェーデンの食文化が結果に影響を与えている可能性も高く、他国や他文化に直接適用できるわけではありません。

 

研究チームは、糖分摂取の種類や背景に応じたさらなる詳細なメカニズムの解明が必要であると述べています。

 

 

まとめ

必要以上の糖分の摂取は、虚血性脳卒中や心不全など、心血管疾患のリスクを顕著に高める(特に甘い飲み物)

・研究では時々お菓子を楽しむことは、極端な糖分制限よりも健康的である可能性が示された

・しかし、個別の疾患によって糖分を控えざるを得ない状況であることも考えられる点には注意が必要

コメント

タイトルとURLをコピーしました