中年期において体格指数(BMI;ボディマスインデックス)が高いことは、認知症の重要なリスク要因とされています。
しかし、BMIのように全体的な体脂肪量を測定する方法が、認知機能低下の最良の予測因子であるとは限りません。
ワシントン大学セントルイス校の研究者が主導する新たな研究では、体脂肪と脳の健康の関連性はより複雑であることが示唆されています。
この研究結果はまだ正式に公開されていませんが、内臓脂肪がアルツハイマー病のマーカーと関連している可能性があることが明らかになっています。
今回のテーマは、そんな内蔵脂肪とアルツハイマーの関係性に言及した内容です。
参考記事)
・Hidden Fat Predicts Alzheimer’s 20 Years Ahead of Symptoms(2024/12/05)
参考研究)
・Alzheimer Disease Pathology and Neurodegeneration in Midlife Obesity: A Pilot Study
内臓脂肪が脳に与える影響
発表された研究では、皮下脂肪ではBMIと認知症のマーカーとの関連を十分に説明できないことを背景に、内臓脂肪と脳のアミロイドタンパク質の蓄積に着目しました。
アミロイド斑は脳内に蓄積する異常なタンパク質で、アルツハイマー病の特徴的なマーカーとされています。
本研究では、40代から50代の中年期において、内臓脂肪が多い人ほど脳内にアミロイド斑が多い傾向があることが示されました。
研究では、MRI(磁気共鳴画像法)を使用して内臓脂肪と皮下脂肪を区別しました。
この方法により、内臓脂肪が脳に及ぼす具体的な影響をより正確に評価することができました。
研究結果の詳細
本研究の初期段階では、40代から60代の健康な認知機能を持つ32人を対象に調査を実施。
内臓脂肪が多い人は、脳の右皮質でアミロイド病変が多く確認され、脳の一部で皮質が薄くなる傾向が見られました。
その後、研究対象者を80人に拡大した新たな分析にて以下の結果が得られました。
・内臓脂肪と皮下脂肪の比率が高い人は、脳内アミロイド蓄積が増加
・高BMIがアミロイド蓄積に与える影響の77%が内臓脂肪の割合によって説明可能
研究の主導者であるMahsa Dolatshahi氏は、「中年期の時点でこれらの結果を示した研究は他に例がない」と述べています。
コレステロールとインスリンの関連性
研究では、高密度リポタンパク質(HDLコレステロール)の低下とアミロイドレベルの増加との関連も示唆されました。
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」として知られていますが、過剰な量は認知症リスクを増加させる可能性があることが過去の研究で明らかになっています。
また、内臓脂肪が多い人はインスリンレベルが低下していることも確認されました。
インスリン抵抗性は脳の萎縮を加速させ、認知機能低下のリスクを高める可能性があります。
また、内臓脂肪は、単に体に蓄積するだけでなく、次のような影響を及ぼす可能性があります。
・コレステロールとインスリンの生成に影響を与える
・代謝異常や炎症を誘発する
これにより、内臓脂肪は単なるエネルギー貯蔵ではなく、全身の健康に悪影響を及ぼす「活性組織」として作用することがわかっています。
健康的な脳を維持するための方法
アルツハイマー病や認知症のリスクを減らすために、内臓脂肪を減らすことが重要であり、次のような生活スタイルの改善が推奨されます。
1. 定期的な運動
有酸素運動や筋力トレーニングを取り入れることで、内臓脂肪を減らし、心血管や脳の健康の維持、増進に努める
2. 健康的な食生活
加工食品や糖分の多い食品を避け、野菜、全粒穀物を積極的に摂取する
食べる際にはしっかり咀嚼し、栄養の吸収を良くする
3. ストレス管理
ストレスはホルモンバランスを崩し、内臓脂肪の蓄積を助長する可能性がある
職場環境や人間関係などストレスが与えられる状況を見直す
まとめ
・内臓脂肪の多い中年期の人が脳内にアミロイド斑を蓄積しやすいことが示された
・運動や健康的な食生活が内臓脂肪を減らし、認知症リスクを抑える鍵となる。
・アルツハイマー病と内臓脂肪の関連性をより深く理解するためには、今後の研究が不可欠
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