科学

カフェイン摂取がアルツハイマーの予防に(リール大学)

科学

 

朝のエスプレッソや眠気覚ましのコーヒー、あるいは仕事の合間のお茶など、1日の中で適量のカフェインを摂取することは、認知症の悪化リスクを軽減と関係があるとされています。

 

今回取り上げる新たな研究によると、カフェインの摂取とアルツハイマー病に関連する脊髄液マーカーの間に関連性があることが確認されました。

 

以下に研究の内容についてまとめていきます。

 

参考記事)

Drinking Caffeine May Reduce Alzheimer’s Clumps in The Brain, Study Finds(2024/10/14)

 

参考研究)

Association between coffee and tea consumption and the risk of dementia in individuals with hypertension: a prospective cohort study(2024/09/10)

Association of caffeine consumption with cerebrospinal fluid biomarkers in mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease: A BALTAZAR cohort study(2024/08/04)

 

 

カフェイン摂取とアルツハイマーのリスク低減

 

これまでの研究の多くは、お茶やコーヒーの消費に関する観察研究やメタアナリシス(複数の研究を俯瞰的に分析したもの)に焦点を当てており、カフェインがもたらす生物学的変化についての情報は多くありません。

 

しかし、フランス・リール大学をはじめとした研究チームは、2010年から2015年の間に軽度認知障害やアルツハイマー病の患者に関する研究データを分析し、生体内の反応について評価しました。

 

研究では、70歳以上の263人が対象となっており、基礎的な臨床評価と、コーヒー、チョコレート、紅茶、ソーダなどの飲食物の摂取量に関する詳細な調査が行われました。

 

これにより、各参加者が1日に体内に取り込むカフェインの量が評価し、MRIスキャン結果と血液および脳脊髄液(CSF)のサンプルが分析されました。

 

カフェインの摂取ボーダーは1日あたり約200gとし、200g以下のカフェインを摂取している参加者を“低カフェイン群”とし、それ超える量を摂取している人々を“高カフェイン群”と分類しました。

 

この基準は、エナジードリンク1缶やコーヒー1~2杯に相当し、それ以上飲むかどうかが認知症にどう影響を与えるかを観察する目的があります。

 

この結果、研究チームはカフェインの摂取量が少ないと、記憶に障害のある軽度認知障害のリスクが高くなることを発見しました。

 

実際、低カフェイン摂取群は、記憶に障害のある軽度認知障害やアルツハイマー病の診断を受ける可能性が約2.5倍高いことが示されました。

 

また、参加者の脳脊髄液中のタンパク質を詳しく調べたところ、特定のβアミロイドタンパク質の比率や濃度に有意な違いが見られました。

 

カフェイン摂取量が少ない人は、可溶性のAβ42と呼ばれる形態の濃度が低く、Aβ42と別の形態であるAβ40の比率も低い傾向がありました。

 

さらに、Aβ42とタウタンパク質の一種であるptau-181との比率も、カフェインを多く摂取している人より低いことがわかりました。

 

これらの結果から、カフェインの摂取量が少ない人の脳内では、アルツハイマー症状の原因となる神経変性の生物学的指標であるβアミロイドタンパク質の凝集が増加していることが示唆されます。

 

興味深いことに、カフェイン摂取量タウタンパク質のレベルに影響を与えることは確認されていません。

 

タウタンパク質もアルツハイマー病の症状が進行するにつれて脳組織に蓄積することが知られていますが、カフェインがこれにどう影響するかについては、研究がまだ限られています。

 

ただし、過去の研究では、カフェインがタウタンパク質が有害な塊になる化学的活動を抑制する可能性があることが示されていますが、アルツハイマー病の実際のケースでこれが起こるかどうかは不明です。

 

カフェイン(その他コーヒーによる化合物)は、タウタンパク質の凝集を防ぐ可能性がある(Espresso Coffee Mitigates the Aggregation and Condensation of Alzheimer′s Associated Tau Proteinより)

 

今回の調査は、数百人の高齢者におけるカフェイン習慣のスナップショットに基づいているため、若年期や中年期に朝のコーヒーを飲むことが認知症の発症にどのような影響を与えるかについては明らかになっていない部分も多いです。

  

これに加え、カフェインの摂取タイミングや方法についても考慮する必要があります。

 

たとえば、夜遅くにカフェインを摂取すると睡眠に影響を与える可能性があり、それが長期的な神経機能に影響を及ぼす可能性もあります。

 

また、チョコレートやエナジードリンクに頼ると糖分や植物油脂などの想定しない化学物質の摂取量も増え、認知機能にリスクが生じる可能性があります。

 

しかしながら、カフェインと健康との関係に関する研究が増え続けていることを考慮すると、朝のアールグレイ、昼のコーヒーが長年にわたって体の機能を維持するのに役立つ可能性があると考えられます。

 

 

まとめ

・1日200ミリグラム以上のカフェインを摂取することが、記憶障害を伴う軽度認知障害やアルツハイマー病のリスクを低減する可能性がある

・カフェインの摂取量が少ない人は、脳脊髄液中でアルツハイマーに関連するβアミロイドタンパク質(Aβ42)の濃度が低く、疾患のリスクが約2.5倍高い

・この研究は少数の高齢者のデータに基づいており、長期間にわたるカフェイン摂取の影響については明確ではないことに注意が必要

コメント

タイトルとURLをコピーしました