スタチン製剤をめぐる誤解と現実

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ろスタチンは血中コレステロール値を低下させる薬剤群であり、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクを減らすことが確立されています。

 

にもかかわらず、服用を避ける人が一定数存在します。その背景には、「副作用が多い薬」というイメージがあります。

 

この点について新たな知見を示したのが、オックスフォード大学准教授Christina Reith氏らによる研究チームです。

 

チームは長年にわたり、スタチンの副作用について体系的な検証を重ねてきました。

 

その目的は、「報告されている副作用が、本当に薬剤そのものによるものなのか」を明らかにすることでした。

参考記事)

Do Statins Really Have That Many Side Effects? New Research Challenges Common Fears(2026/02/06)

参考研究)

Effect of statin therapy on muscle symptoms: an individual participant data meta-analysis of large-scale, randomised, double-blind trials(2022/09/10)

・他、必要に応じてリンクを記載

 

  

筋肉痛や糖尿病とスタチン製剤の関係

  

2022年、研究チームは最も一般的に報告されている症状である筋肉痛に注目しました。

   

スタチン服用者の約4人に1人が筋肉症状を訴えるとされてきましたが、無作為化比較試験を精査した結果、プラセボ群でもほぼ同じ頻度で症状が生じていることが明らかになりました。

 

スタチンによる筋肉症状のリスクは約1%程度であり、その多くは治療開始1年以内に生じていることもわかりました。

  

一方で、重篤な筋疾患であるミオパチーは確かにスタチンと関連があります。

 

しかしその発生頻度は1万人に1人程度と極めて稀です。

 

2024年の研究では、スタチンと糖尿病発症との関連が検討されました。

  

その結果、スタチンは血糖値をわずかに上昇させる可能性があるものの、新たに糖尿病と診断されるケースは、もともと血糖値が高めだった人にほぼ限られていたことが分かりました。

 

つまり、リスクは存在するものの、それは限定的であり、特定の背景を持つ人に集中していると考えられます。

  

2026年2月5日付で医学誌『The Lancet』に掲載された最新研究では、さらに踏み込んだ検証が行われました。

 

研究チームは、スタチン製品ラベルに記載されている66種類の副作用を対象に、23件の大規模無作為化試験データを解析しました。

 

対象者は約12万4,000人に及び、そのうち19試験ではスタチンとプラセボが比較され、4試験では強力療法と低用量療法が比較されました。

 

その結果、ほとんどの副作用において、スタチン群とプラセボ群の発生率に差は認められませんでした

 

うつ症状、認知機能障害、睡眠障害、勃起不全など、多くの懸念事項について、統計的な有意差は示されませんでした。

  

 

わずかに増加したリスク

ただし、すべてが完全に否定されたわけではありません。

 

以下の4項目では、わずかなリスク増加が認められました。

• 肝機能検査値の異常

• 肝炎症マーカーの上昇

• 尿組成の変化

• 浮腫(体液貯留による腫れ)

 

しかし重要なのは、重篤な肝疾患(肝炎や肝不全)の増加は認められなかった点です。

 

また、腎機能異常を示唆する可能性のある所見についても、Reith氏は「臨床的意義は不確実」と述べています。

  

 

高齢者や特定の集団について

ロバスタチンの構造式

 

既存の肝疾患を持つ人や糖尿病リスクの高い人は、やや副作用リスクが高い可能性があります。

 

また、75歳以上の高齢者は感受性が高い可能性があり、低用量投与が推奨される場合があります。

 

ただし、いずれの群においても絶対リスクは小さいとされています。

  

本記事は提供された報道内容を基に再構成していますが、原著論文の詳細な統計解析データやサブグループ解析結果までは確認できていません。

 

そのため、各副作用の具体的なリスク比や信頼区間などの数値的精度については、ここでは明示できていません。

 

また、「臨床的意義が不確実」とされた腎関連指標についても、長期的影響がどの程度であるかは現時点では明確ではありません。

 

したがって、副作用が完全に存在しないと断定することはできませんが、少なくとも過度に恐れる必要はない可能性が高いといえます。

 

  

この研究の重要性

スタチンは世界で最も多く処方されている薬剤の一つです。

 

それにもかかわらず、副作用への恐怖によって服用を中断したり、そもそも開始しなかったりする人が一定数存在します。

 

今回の研究は、「副作用の多くは薬剤そのものではなく、期待や思い込みによる可能性がある」という重要な示唆を与えています。

 

これは公衆衛生上、大きな意味を持ちます。心筋梗塞や脳卒中の予防効果は確立しており、その恩恵を受けられないことの方が、むしろ健康上の損失になり得るからです。

 

 

まとめ

・スタチンの大半の副作用は、プラセボ群と差がなく、薬剤が直接の原因ではない可能性が示唆された

・確認されているリスクは限定的であり、心血管疾患予防の利益がそれを大きく上回るとされている

・副作用が心配な場合は自己判断で中止せず、医師とリスクと効果を相談することが重要

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