現代の食生活において、加工食品は欠かせない存在となっています。
便利で美味しく、保存性にも優れていることから、日常的に口にする方も多いのではないでしょうか。
しかし、その裏側には見過ごされがちな問題が潜んでいる可能性があります。
フランスのソルボンヌ・パリ・ノール大学を中心とした研究チームが発表した新たな研究によると、超加工食品に含まれる複数の添加物が特定の組み合わせで摂取されることで、二型糖尿病の発症リスクを高める可能性があることが分かりました。
今回のテーマとして研究をまとめていきます。
参考記事)
・Common Additive Combos in Food And Drinks May Raise Risk of Type 2 Diabetes(2025/04/10)
参考研究)
・Food additive mixtures and type 2 diabetes incidence: Results from the NutriNet-Santé prospective cohort(2025/04/08)
添加物の「組み合わせ」による健康リスク

清涼飲料水、スープ、ソース類、デザートなどに含まれる食品添加物は、食品の保存性を高めたり、味や見た目を良くしたりするために広く使用されています。
今回の研究で注目されたのは、個々の添加物の影響ではなく、それらの「組み合わせ」による健康リスクです。
これまでの研究では、添加物の安全性については基本的に「1種類ずつ」評価されることがほとんどでした。
しかし、実際には多くの人が日常的に複数の添加物を同時に摂取しているという現実があります。
研究チームは論文の中で、「世界中の数十億人が日常的に様々な食品添加物を摂取しているにもかかわらず、それらの安全性は個別にしか確認されてこなかった」と述べています。
研究の概要:10万人以上を対象とした大規模追跡調査
本研究では、フランス国内の成人108,643人を対象に、平均8年間にわたる前向きコホート研究が実施されました。
参加者には食事内容を詳細に記録してもらい、それと同時に二型糖尿病の発症状況を追跡しました。
さらに、AIを用いた解析によって、参加者が実際にどのような添加物の組み合わせを摂取していたかを高精度で算出しました。
研究対象となった添加物の組み合わせは5種類あり、そのうち2つの組み合わせが、二型糖尿病の発症リスクの有意な上昇と関連していることが明らかになりました。
リスク上昇と関連した添加物の組み合わせ

まず1つ目に注目すべき組み合わせは、加工でんぷん(modified starches)、グアーガム(guar gum)、カラギーナン(carrageenan)といった比較的一般的な添加物です。(表中Mixture2)
これらは、とろみ付けや安定化のために、スープ類、乳製品のデザート、ソースなどに広く使用されているものです。
この組み合わせを多く摂取していたグループでは、二型糖尿病のリスクが8%上昇していることが確認されました。
2つ目に注目すべき組み合わせは、クエン酸(citric acid)、クエン酸ナトリウム(sodium citrates)、および人工甘味料(artificial sweeteners)です。
これらは、主に清涼飲料水や加糖飲料などに含まれており、爽やかな酸味や甘さを演出するために使われています。
この組み合わせでは、二型糖尿病のリスクが13%上昇しているという結果が出ました。

因果関係の証明はされていない
この研究はあくまで観察研究であるため、これらの添加物が直接的に二型糖尿病を引き起こしているという因果関係までは証明できていません。
つまり、相関関係は認められるものの、それが実際に原因かどうかは、さらなる検証が必要です。
しかし、研究者たちは「これまで見過ごされてきた、添加物同士の相互作用に注目すべきである」と指摘しており、今後の食品安全基準の見直しに繋がる可能性も示唆されています。
論文では、「産業的に加工された食品に共通して含まれる添加物が、同時に摂取されることによって健康に悪影響を与える可能性があるという、これまでにない視点を提供するものである」と強調されています。
専門家による意見
シドニー大学のAlan Barclay氏(本研究には関係していない)は、「今回の関連性はいずれも20%未満であり、他の生活習慣や遺伝的要因などの交絡因子(confounding factors)も影響している可能性がある」と慎重な姿勢を示しています。
また、研究対象の大半がフランス人女性であったことから、他国における食習慣や規制環境とどの程度一致するかは不明であり、さらなる国際的な研究が求められます。
とはいえ、本研究は複数の添加物が同時に摂取される現代の食生活において、これまでほとんど検討されてこなかった分野に一石を投じるものです。
研究チームは「非必須な添加物の摂取を制限するという公衆衛生上の推奨を支持する結果でもある」と結論づけています。
まとめ
・加工食品に含まれる複数の添加物の「組み合わせ」が、二型糖尿病のリスクを最大13%高める可能性があることが判明しました。
・これまで安全性は個別に評価されてきましたが、実際の食生活では複合的に摂取されるため、今後の評価指針の見直しが必要です。
・因果関係は明らかになっていないものの、公衆衛生上の観点からは「非必須な添加物」の摂取をなるべく避けることが推奨されます。
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