スクラロースは、人工甘味料の一種であり、ダイエットソーダ、シュガーフリーキャンディー、低カロリーベイクド食品などに広く使用されています。
カロリーゼロで、ショ糖(一般的な砂糖)の約600倍の甘さを持つことが特徴です。
現在、スクラロースは世界で最も広く使用されている人工甘味料であり、アメリカ食品医薬品局(FDA)によって焼き菓子、飲料、キャンディー、アイスクリームなどへの使用が認可されています。
一方で、スクラロースの摂取が健康に与える影響については議論があり、心疾患を含むいくつかの健康リスクとの関連が指摘されています。
本記事では、そんなスクラロースと健康との関係についてまとめていきます。
参考研究)
・Sucralose and Cardiometabolic Health: Current Understanding from Receptors to Clinical Investigations(2023/01/21更新)
スクラロースの役割とは?
人工甘味料は、その起源、甘さ、カロリー含有量によって分類されます。
スクラロースは、高強度・ゼロカロリーの人工甘味料に分類され、ショ糖(砂糖)を化学的に修飾することで作られます。
冒頭で述べた通り、スクラロースは、カロリーがゼロでありながら非常に甘いため、ダイエットソーダやシュガーフリーキャンディー、ライトアイスクリームなどの製品に使用されます。
また、有名な甘味料「スプレンダ(Splenda)」にも含まれており、マルトデキストリンやブドウ糖と混合されて販売されています。

スクラロースは、カロリーを増やすことなく食品の甘さを強化し、糖尿病患者や体重管理を目的とする人々に適した甘味料として宣伝されています。
また、スクラロースは口の中の甘味受容体を刺激することで甘さを感じさせると同時に、いくつかの苦味受容体も活性化します。
しかし、サッカリンやアセスルファムKなどの他の人工甘味料と比較して苦味の後味が少ないため、砂糖に最も近い味を持つ人工甘味料として世界中で使用されています。
スクラロースの製造過程

スクラロースは、ショ糖(砂糖)の分子構造を化学的に変化させることによって作られます。
具体的には、ショ糖の3つの水酸基(OH基)が塩素(Cl)に置き換えられることで、体内で分解されにくい構造となります。
このため、スクラロースは吸収されにくく、体内でエネルギーとして利用されることはないとされています。
この化学的改変により、スクラロースは極めて安定した性質を持つため、高温調理(焼き菓子など)にも耐えることができるのが特徴です。
そのため、スクラロースは飲料だけでなく、ベーキングパウダーなどの焼成食品にも使用されることがあります。
スクラロースは砂糖より健康的?

スクラロースはカロリーゼロであるため、カロリーを含む甘味料(砂糖やコーンシロップなど)よりも好まれることが多いです。
グラニュー糖(砂糖)2ティースプーンには約32.6キロカロリーが含まれています。
コーンシロップ1テーブルスプーンには約53.4キロカロリーが含まれています。
アメリカ人の平均的な食生活では、1日あたり約17ティースプーンもの追加糖分を摂取しており、その結果、カロリー摂取量が急増しやすくなります。
さらに、糖分の過剰摂取は肥満、2型糖尿病、心疾患のリスクを高めるとされています。(Perceived Associations between Excessive Sugar Intake and Health Conditionsより)
そのため、スクラロースは健康的な代替甘味料として推奨されることが多く、医療従事者もカロリー制限や血糖値管理を求める人々に推奨することがあります。
しかし、人工甘味料の摂取が実際には体重増加や二型糖尿病のリスクを高める可能性があるという研究結果も存在します。
405,907人を対象とした研究によるメタ分析では、人工甘味料を10年間摂取した人はBMI(体格指数)、体重、ウエスト周囲径が増加していたことが報告されています。(Nonnutritive sweeteners and cardiometabolic health: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials and prospective cohort studiesより)
この結果から、人工甘味料の摂取が肥満、高血糖、メタボリックシンドローム、二型糖尿病、心疾患のリスクを高める可能性があることも示されています。
スクラロースの副作用とリスク
一部の研究では、スクラロースが腸内細菌叢に悪影響を与える可能性が示唆されています。(Food Additives Associated with Gut Microbiota Alterations in Inflammatory Bowel Disease: Friends or Enemies?より)
特に、善玉菌の減少や腸内の炎症を促進する可能性が指摘されており、長期間の摂取が腸内環境に及ぼす影響についての研究が進められています。
Food Additives Associated with Gut Microbiota Alterations in Inflammatory Bowel Disease: Friends or Enemies?より (※マウスとラットによる実験) 【表のまとめ】
・アセスルファムK=炎症性サイトカインの発現を誘発
増加した細菌→Desulfovibrio属
・スクラロース(1)=大腸炎の悪化、炎症性サイトカインの増加
増加した細菌 → Proteobacteria and Bacteroidetes
減少した細菌 → Firmicutes and Actinomycetes
・スクラロース(2)=結腸直腸腫瘍の悪化、炎症性サイトカインの増加
増加した細菌 → F. Actinomycetes, P. stomatis, C. symbiosum, P. anaerobius
減少した細菌 → Proteobacteria
・スプレンダ=ミエロペルオキシダーゼを起因とする活動の増加
増加した細菌 → Proteobacteria and E. coli,その他細菌浸潤の増加
・サッカリン=腸の炎症の改善
増加した細菌 → Bacteroidetes and Proteobacteria phylum
減少した細菌 → S. aureus, K. pneumoniaand P. aeruginosa
(などさらに続く)
また、スクラロースの摂取がインスリン抵抗性を引き起こし、血糖値の上昇を招く可能性があるとする研究もあり、糖尿病患者にとっても安全とは言い切れません。(Ten-Week Sucralose Consumption Induces Gut Dysbiosis and Altered Glucose and Insulin Levels in Healthy Young Adultsより)
マウスの研究が中心となっていますが、心疾患、腸内環境の悪化、血糖値への影響などのリスクが指摘されていることからも、長期的な摂取にはそれ相応の責任が伴うものと考えた方が良いでしょう。
まとめ
・スクラロースはカロリーゼロの人工甘味料で、糖分の代替として広く使用されている
・一部の研究では、スクラロースの摂取が心疾患、がん、腸内環境の悪化と関連する可能性が指摘されている
・FDAは安全と認定しているが、長期的な影響についてはさらなる研究が必要とされている
・スクラロースの摂取が血糖値やインスリン分泌に影響を与える可能性があるため、糖尿病患者は注意が必要
・腸内細菌への影響が懸念されており、消化器系への影響についても研究が求められている
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