科学

自転車通勤の人に病欠が少ない理由とは?

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仕事のストレスや体調不良による病欠は、多くの職場で問題となっています。

 

しかし、通勤方法を変えるだけで病欠のリスクを減らせるかもしれません

  

今回紹介する新たな研究によると、自転車で通勤する人は病欠日数が少なく、長期間の病欠リスクも低いことが明らかになりました。 

 

以下に研究の内容をまとめます。

   

参考記事)

People Who Cycle to Work Take Fewer Sick Days. But Why?(2025/02/09)

 

参考研究)

Associations Between Active Commuting and Sickness Absence in Finnish Public Sector Cohort of 28 485 Employees(2024/12/14)

 

 

研究の内容

 

本研究はフィンランド労働衛生研究所(Finnish Institute of Occupational Health)のチームによって実施され、地元自治体の労働者28,485人を対象に自己申告データを分析しました。

 

調査期間は1年間で、大半の参加者は2年目も追跡調査を受けました。

 

その結果、週61キロ(38マイル)以上の自転車通勤をしている人は、車や公共交通機関を利用する人よりも病欠のリスクが8~12%低く、10日以上の長期病欠を取る確率も18%低いことが判明しました。

 

さらに、最も活動的な通勤者は、受動的な通勤者よりも年間4.5日病欠が少なく、10年間で1回少ない長期病欠を経験することがわかりました。

Associations Between Active Commuting and Sickness Absence in Finnish Public Sector Cohort of 28 485 Employeesより

 

こうした結果から、自転車通勤が健康維持に良い影響を与える可能性が示唆されています。

 

 

自転車通勤が健康に良い理由 

この研究を主導したフィンランド労働衛生研究所の公衆衛生学者であるEssi Kalliolahtiは、「アクティブな通勤が健康や環境に良い影響を与えることはすでに知られているが、長期間の病欠リスクとの関連については、これまでほとんど研究されていなかった」と述べています。

 

確かに、自転車通勤は以下のような健康効果をもたらす可能性があります。

 

  

1. 有酸素運動による免疫力向上 

自転車通勤は、心肺機能を高める有酸素運動の一種です。

適度な運動は免疫力を向上させ、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクを低減することが知られています。

特に、定期的な運動は炎症を抑え、免疫細胞の働きを活性化させるため、病気にかかりにくくなると考えられます。

 

 

2. ストレス軽減とメンタルヘルスの向上 

自転車通勤は、ストレス軽減にも効果的です。

• 屋外での運動はエンドルフィン(幸福ホルモン)の分泌を促し、気分を向上させる

• 自然に触れることでリラックス効果があり、仕事のストレスを軽減できる

• 通勤中に適度な運動を行うことで、睡眠の質が向上し、疲労回復が促される

 

このように、精神的な健康が向上することで、ストレスによる体調不良やメンタルヘルスの問題による病欠が減少する可能性があります

 

  

3. 生活習慣病の予防

長時間の座りっぱなしの生活は、肥満、糖尿病、高血圧、心血管疾患などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。

特に、車通勤や公共交通機関の利用では、身体活動量が少なくなりがちです。

 

一方で、自転車通勤を習慣化することで、日常的に運動する機会が増え、生活習慣病の予防につながると考えられます。

 

 

因果関係と関連性

研究では、性別、年齢、アルコール摂取量、社会経済的地位などの要因を考慮しましたが、自転車通勤と病欠の間に直接的な因果関係があるとは証明されていません

 

つまり、自転車通勤が直接病欠を減らすのか、それとも健康な人が自転車通勤を選ぶのかは明確ではないということです。

  

それでも、過去の自転車通勤に関する研究結果と一致しており、強い関連性があることは確かです。

 

その理由について、以下のような仮説が立てられています。

• 運動習慣がある人は、一般的に病気になりにくい

• 健康上の問題を抱えている人は、自転車通勤がそもそも難しいため、受動的な通勤者として分類される傾向がある

 

 

徒歩通勤か自転車通勤か

研究では、徒歩通勤よりも自転車通勤の方が病欠が少ないことも明らかになりました。

 

ただし、この違いが顕著に見られたのは、長距離を自転車通勤している人々のみでした。

  

研究者たちは、徒歩通勤では運動の強度が十分でない可能性があると指摘し、「歩くペースを速くすることが重要かもしれない」と述べています。

 

徒歩と自転車通勤の違いを考えると、以下のような点が挙げられます。

• 自転車は徒歩よりも運動の強度が高く、心肺機能や筋力の向上につながりやすい

• 徒歩通勤は距離が短くなりがちで、運動時間が十分でないことが多い

• 長距離の徒歩通勤は現実的でないため、身体活動量を確保しにくい

 

そのため、同じ距離を移動する場合、自転車通勤の方が運動効果が高いと考えられます。

 

  

自転車通勤の利点がある 

もちろん、すべての人にとって自転車通勤が現実的な選択肢とは限りません

 

特に、都市部では交通量が多く、ストレスを感じることもあります

 

また、天候や道路状況によっては危険が伴う場合もあります

 

それでも、出勤率の向上や、他の通勤手段による排出ガスの削減など、多くのメリットがあることは確かです。

  

成人の半数しか推奨される運動量を確保できていないことを考えると、徒歩や自転車による通勤は、健康促進のための有効な手段になり得る」と、フィンランド労働衛生研究所の疫学者であるJenni Ervastiは述べています。

  

 

まとめ

・自転車通勤者は病欠が8~12%少なく、長期的な病欠のリスクも18%低い

・徒歩通勤よりも自転車通勤の方が健康効果が高い可能性がある

・自転車通勤は万人向けではないが、健康促進や環境負荷軽減に寄与する

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