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健康的な食生活が慢性的な痛みを軽減する

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慢性的な痛みは日常生活の質を著しく低下させるだけでなく、精神的なストレスや健康リスクを高める要因にもなります。

 

しかし、近年の研究によると、健康的な食生活を取り入れることで、その痛みの強度を下げることができる可能性があることが分かってきました。

 

参考研究)

Better diet quality is associated with reduced body pain in adults regardless of adiposity: Findings from the Whyalla Intergenerational Study of Health(2024/08/30)

  

本研究は、慢性的な痛みに対する手軽な対策として食生活が役立つ可能性を示しています。

 

研究の筆頭著者である南オーストラリア大学の研究者のSue Ward氏は、「慢性的な痛みは、一般的でありながらも、身体的・精神的に深刻な問題である」と指摘しています。

 

実際、アメリカ国内では約5200万人、日本においてもおよそ7割の人が何らかの慢性的な痛みに悩んでいるとされています。

 

これは、関節痛や腰痛、神経痛など、多岐にわたる症状を含んでおり、長期間続くことで生活の質を著しく低下させます。

 

慢性的な痛みを持つ人々は、一般人口と比較して体重が高い傾向にある」とWard氏は述べており、これには“何を食べているか”が大きく関係していると考えられます。

 

では、どのような食生活が慢性的な痛みに影響を与えるのか……。

 

以下に研究の詳細をまとめます。

  

  

健康的な食生活を送る人ほど痛みが少ない

 

本研究では、654人のオーストラリア人を対象に、以下のデータを収集・分析しました。

 

• 体重、BMI(ボディマス指数)、ウエストサイズなどの身体データ

• 生活習慣(運動量、睡眠、ストレスレベルなど)

• 食生活(何をどれくらい食べているか)

• 痛みのレベル

 

また、参加者の平均年齢は50歳で、その96%が白人でした。

 

研究チームは、オーストラリアの公式食事ガイドラインを基準に、「健康的な食事」を以下のように定義しました。

 

• 野菜・果物の十分な摂取している

• 精製された穀物よりも全粒穀物を多く摂取している

• 乳製品またはそれに代わる食品を摂取している

• 赤身の肉や魚、豆類を摂取している

 

その結果、健康的な食生活を送っている人ほど、慢性的な痛みのレベルが低いことが分かりました。

 

これは、BMIやウエストサイズ、体脂肪率に関係なく見られました。

 

多くの参加者は体脂肪率が高く、食事の質が低かったが、オーストラリアの食事ガイドラインに従っていた人々ほど痛みのレベルが低いことが明らかになった」とWard氏は述べています。

 

 

男女で異なる食事と痛みの関係

さらに、この食事と痛みの関係は男女で異なる傾向を示しました。

 

女性は男性よりも痛みを感じやすいですが、健康的な食事をするとより大きな効果が得られる傾向があり、健康的な食事をする女性は痛みが少なく、身体機能も良好でした。

 

この理由についてはまだ完全には解明されていませんが、Larissa Strath氏(フロリダ大学医学部助教授)は、「女性の方が食物繊維の摂取量が多い可能性があり、それが腸内環境の改善につながる」と指摘しています。

 

また、Strath氏は、「腸内環境が整うと血糖値の急上昇を抑え、炎症や痛みを軽減することができる」と説明しており、男女で食物の代謝や腸内細菌の構成が異なることが、食事と痛みの関係性に影響している可能性があるとも述べています。

 

 

なぜ食事が痛みに影響を与えるのか? 

 

この研究が示すように、食事の質が痛みのレベルに直接関係している可能性があります。

 

その理由として、主に以下の3つが挙げられます。

 

1. 体重増加

• 不健康な食事は体重増加につながり、関節痛や筋肉痛を悪化させる可能性がある

• 体重増加が関節や筋肉に負担をかけ、痛みの原因になり得る

 

2. 炎症

• 低品質な食事は慢性的な炎症を引き起こす可能性がある

• 超加工食品や精製糖の過剰摂取が免疫システムを活性化し、炎症性の化学物質を体内に放出することが原因

 

3. 酸化ストレス

• 砂糖、飽和脂肪、動物性タンパク質の過剰摂取は酸化ストレスを引き起こす

• 酸化ストレス=「活性酸素が抗酸化物質を上回り、神経を損傷する現象」で、痛みの原因になる

 

この研究は、不健康な食事が直接的に慢性的な痛みを引き起こすとは断定できませんが、健康的な食事が痛みを和らげる一助となる可能性を示唆しています。

 

葉物野菜(ほうれん草、ケール)、ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー)、ナッツ類(アーモンド、くるみ)そして全粒穀物(玄米など)といった食品は抗炎症作用があり、酸化ストレスを抑える効果が期待されます。

 

一方、炎症を促進させる食品を摂取しないこともとても大切です。

  

炎症を促進させる食品には以下のようなものがあります。

 

・不健康な脂肪(赤身肉やホットドッグなど)

・精製された小麦粉(白パンやお菓子など)

・添加された砂糖

・人工的な成分や防腐剤

・過剰な塩分

 

これらは、腸の炎症から認知症、がんの発生まで多くの疾患に密接に関連していることが分かっているため、慢性的な痛みが気になる場合は真っ先に摂取を控えたい食品です。

 

関連記事にて食と炎症についての究もまとめているので、気になった方はご参照ください。

  

 

まとめ

・健康的な食事は、体重に関係なく慢性的な痛みの軽減に役立つ可能性がある

・炎症や酸化ストレスを抑えることが痛みの緩和につながる

・食事の改善は長期的な取り組みが必要であり、効果を最大化するためには炎症を誘発する食品を控えることが必要

 

 

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