砂糖の過剰摂取が肥満やニ型糖尿病の原因となることはよく知られています。
カリフォルニア大学による最近の研究によると、それ以上に私たちの健康に深刻な影響を与えているかもしれません。
JAMA Network Openに発表された新たな研究は、砂糖の摂取量が細胞の老化を加速させる可能性があることを示しています。
特に、砂糖は体内で炎症や酸化ストレスを引き起こし、これが生物学的年齢(細胞の年齢)を高める原因となることが明らかになりました。
専門家は、健康的な老化を促進するためには、1日の砂糖摂取量を25〜35グラムに抑えることが重要だと指摘しています。
以下の記事にて研究の内容をまとめていきます。
参考記事)
・This Popular Ingredient Might Make You Age Faster, Study Shows(2024/09/24)
参考研究)
・Essential Nutrients, Added Sugar Intake, and Epigenetic Age in Midlife Black and White Women(2024/07/29)
砂糖が老化を早める可能性
カリフォルニア大学による研究では、生物学的年齢(出生からの経過年数ではなく、細胞の年齢)を調査しました。
調査から、砂糖が多く含まれる食事は、細胞の老化を早める可能性があることが明らかになりました。
WHOは砂糖の摂取量を1日に25g(角砂糖およそ8個分)までにすることを推奨しており、これはアメリカの成人の半数以上が推奨されている1日あたりの砂糖摂取量(一日に一人当たり67.5g)を超えているとされています。
2020年時点での日本の砂糖類平均摂取量は一日当たり47.4gとされ、これも推奨摂取基準を上回っています。(e-Statより食料需給表 / 確報 / 令和より)
砂糖25gと言っても分かりにくいので、比較対象として身近な食べ物や飲み物に含まれる量を見てみます。
商品や地域(国)によっても多少の変化はありますが、日本においては一般的にこのような砂糖(糖質・糖類)の含有量となっています。
WHOの砂糖摂取基準(〜25g)で考えると、清涼飲料水やジュースなどは一本でアウトですが、クッキーやアイスクリームを少し食べる程度ならまだ許容の範囲内なのですね。
とはいえ、植物油脂やショートニングに含まれるトランス脂肪酸など、表記していない成分も含まれるため、気軽に食すには適していないと感じます。
ちなみに日本で一番砂糖の消費量が多かった年は1973年度(昭和48年)で、この頃は一人当たり年間28.1kg(一日当たりおよそ76.9g)の消費だった記録が残っています。
その後、異性果糖や人工甘味料の出現、砂糖による生活習慣病や攻撃性が問題となっていくに連れて“砂糖”自体の消費量は減少傾向になっていきます。
カリフォルニア大学Osher Center for Integrative Healthの研究員であるDorothy T. Chiu氏は「砂糖はそれ自体が炎症を引き起こし、体内で酸化ストレスを引き起こす物質である」と述べています。
酸化ストレスは、フリーラジカルが体内の抗酸化物質を上回り、細胞に損傷を与える状態を指します。
酸化ストレスと炎症の両方が、生物学的老化を加速させる原因となることに注意が必要です。
細胞に対するストレスの加速
研究者たちは2015年から2019年にかけて、カリフォルニア北部に住む約350人の参加者を追跡調査しました。
女性たちは食生活について報告し、研究チームは唾液サンプルを用いて生物学的年齢を分析しました。
この分析には、疾患リスクや死亡率に関する情報を提供する「GrimAge」というマーカーが使用されました。
研究者たちはまず、参加者の全体的な食生活を調査し、地中海式の食事スタイルや慢性疾患リスクの低下と関連する食習慣と比較しました。
また、抗炎症やDNA修復に関連する栄養素を含む食品をスコア化し、摂取量や頻度を調べました。
その結果、これらの健康的な食事を守っていた参加者は、一般的に生物学的年齢が低いことがわかりました。
次に研究者たちは、参加者の砂糖摂取量を調査しました。
平均して、参加者たちは1日に60g以上の砂糖を普段の食事に追加して摂取していました。
その量は約3g〜316gと、個人によって差がありました。
アメリカの食事ガイドラインでは、1日2,000キロカロリーを摂取する人は、追加の糖分を1日50g以下に抑えるよう推奨しています。
研究者たちは、健康的な食事を摂っていた人々でさえ、追加糖分を摂取すると、その細胞が生物学的に実際の年齢よりも早く老化することを発見しました。
これは、活動レベルやストレスレベルなどの要因に加え、砂糖がエピジェネティクス(行動や環境が遺伝子の機能に影響を与える変化)に重要な影響を与えていることを示唆しています。
クリーブランドクリニックの栄養士Julia Zumpano氏はこの結果を受け、「大量の砂糖は代謝に影響を与える。そして、代謝に影響を与えるものは細胞の成長にも影響を与える」と述べています。
過剰な砂糖は、血流中の砂糖がタンパク質に結合し、有害な物質である終末糖化産物(AGEs)を生成する「糖化」を加速させます。
これらのAGEsは炎症や酸化ストレスを引き起こし、細胞の老化を加速させます。
砂糖摂取量の削減
彼女は、「砂糖と天然の糖分には大きな違いがある。天然の糖分は果物やでんぷん質の野菜に含まれ、過剰に摂取しない限り、ほとんど問題を引き起こさない。」と述べ、人々が砂糖の種類の違いを理解することが重要だと伝えています。
砂糖はチップスやデザート、ソーダなどによく含まれていますが、Zumpano氏によると、サラダドレッシングや冷凍食品、サプリメントなど、意外な食品にも砂糖が含まれている場合があります。
先程も伝えた通り、アメリカの食事ガイドラインでは、1日あたり50gまで糖分の追加を制限することを推奨していますが、Zumpano氏はそれでも多すぎると考えています。
彼女は、1日25~35グラムの糖分を摂取することを推奨しています。
砂糖は食事の中で最も健康に悪影響を及ぼす要因の1つであり、健康や長寿にも悪影響を与えています。
砂糖は短期的な快楽を得るためには極めて有効です。
しかし、長期的には老化を早めるだけでなく、その他の生活習慣病などの原因にもなることは心に留めておいた方が良いでしょう。
まとめ
・カリフォルニア大学の研究によって、砂糖の摂取が細胞の老化を加速させる可能性があることが示された
・砂糖は炎症や酸化ストレスを引き起こし、細胞の老化を加速させる一因となる
・砂糖の過剰摂取は代謝やエピジェネティクス(遺伝子の領域)に影響を与え、細胞の機能にも悪影響を与える
・砂糖の摂取量を1日25~35グラムに抑えることを推奨しており、これにより生物学的老化を遅らせ、健康を改善する可能性があるとしている
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