【前回記事】
この記事では著書“図鑑心理学”を参考に、歴史に影響を与えた心理学についてまとめていきます。
心理学が生まれる以前、心や精神とはどのようなものだったのかに始まり、近代の心理学までをテーマとして、本書から勉強になった内容を取り上げていきます。
今回のテーマは「パヴロフの犬と条件づけ」です。
パヴロフの犬と条件づけ
「パヴロフの犬」といえば、ある特定の条件が起こった際、無条件で体が反射してしまう場合によく使用される心理学に関する用語です。
心理学の初学者の段階で多くの人が学ぶことになる、行動主義心理学の基礎的な存在でもあります。
これを発見したのはロシアの生理学者だったパヴロフですが、行動主義者として研究を始めたわけではありませんでした。
当初、彼の研究テーマは、“なぜ動物は動物らしくふるまうのか”というもので、彼は動物の唾液分泌を専門として研究に取り組んでいました。
研究は動物の神経のメカニズムにまで及び、1904年に彼は、“迷走神経”に関する研究でノーベル生理学・医学賞が授与されました。
迷走神経(vagus nerve)は、脳の延髄から始まり、胃・小腸・大腸などの消化管や心臓、血管などの内臓に広く分布し、体内の環境をコントロールする役割があります。
また、脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経です。
その神経が長く多岐に渡る経路をたどることから、ラテン語で“放浪・さまよう”を意味する「vagus」と名付けられ、日本語では迷走神経と呼んでいます。
胃に送る唾液の分泌やその他の生命維持の機能も迷走神経が媒介となっており、パヴロフはそのような生理学的な分野において大きな研究成果を残しました。
さて、そんな研究の日々を送る中で、彼はあるとき、犬がエサを与えられる前に(餌を与えてくれる研究員を見ただけで)唾液を出すことに気づきました。
パブロフは、犬がエサを見て唾液を分泌するのは、 脳に直結した本能によるものであろうと推測し、これを“無条件性反射”と呼びました。
一方、犬が彼の助手を見ただけで唾液が分泌されるのは、 一種の学習行動であり、彼はこれを“条件性反射”と呼びました。
犬はその助手を見かけただけでまもなくエサが与えられることを学習したのです。
パブロフは、その後の20年間、こうした犬の反 応について研究しました。
彼の古典的条件づけの実験では、中性刺激(最初は何の反応も伴わない刺激) にベルの音を用いました。
ベルは、エサが与えられる合図の役割を担い、犬はその音で唾液を出すことを学習しました。
学習によって反応を成立させるには、ベルの音の後にすばやくエサが与えられなけれ ばなりません。
しかし、条件性反射が学習されないこともあります。
もはやベルの音がエサの合図では なくなったことを犬が学習すると、ベルの音を聞かされても犬の唾液は分泌されませんでした。
パヴロフは犬を条件づける際、ブザーやメトロノームを使用しましたが、いずれも条件付けには成功しています。
また、以下の記事でも「パヴロフの犬」についてまとめているので、気になる方は覗いてみてください。
効果の法則
パブロフが犬の実験を行っていたのとほぼ同時期、アメリカの研究者エドワード・ソーンダイクは、ネコを箱に閉じ込め、行動を観察する研究を行っていました。
箱には、ボタン、レバー、輪、ひもなど様々な仕掛けが施され、正解のアクションをとると箱が開き餌にありつけることができます。
ネコは最初のうちはでたらめに仕掛けの間を移動していましたが、そのうちにたまたまドアを開くことができました。
再び同じ仕掛けの中に入れられて成功と脱出を繰り返しますが、回を重ねるごとにすばやく出られるになりました。
ネコが正しい仕掛けを学習し、無関係な仕掛けを無視するようになったのです。
別の仕掛けが新たに設定された箱の場合も同様の結果が得られました。
ソーンダイクは、こうした実験結果を総合して、“効果の法則”という概念を提唱しました。
これは、満足や快い状態をもたらす効果のある行動をよりやすくなり、嫌なものや不快なものをもたらすような行動の場合を起こしにくくなるという法則です。
こうした刺激と反応の間の単純な関係は、今 でもすべての行動療法の基礎になっています。
ソーンダイクの問題箱についても以下にまとめているので、良ければ是非!
まとめ
・ベルが鳴った直後にエサを与えることが習慣化された犬は、そのうちベルの音だけでよだれを垂らすようになる
・パヴロフが行ったこの実験は古典的条件づけと呼ばれている
・ソーンダイクは、猫を箱に入れて学習させ、満足のいく行動は行いやすく、不快な行動は起こしにくくなることを実験で示した
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