タバコが健康を害するということは、現在となっては広く知られていますね。
副流煙などによって、喫煙者本人だけでなく周りの人にまで害が及ぶとし、平成の後期からは公共の場での喫煙が禁止されるほどになってきました。
その代わりとして、電子タバコなどの煙や香りを抑制した代替品が生まれてきました。
タバコに比べて健康的と考えられている電子タバコ類ですが、健康を害するリスクが排除されたわけではありません。
今回のテーマはそんな電子タバコの害についての研究です。
以下にまとめていきます。
参考記事)
・Massive Study Links Vaping to a Much Higher Risk of Heart Failure(2024/04/16)
参考研究)
・ELECTRONIC NICOTINE PRODUCT USE IS ASSOCIATED WITH INCIDENT HEART FAILURE – THE ALL OF US RESEARCH PROGRAM(2024/04/02)
電子タバコによる肺への影響
2019年の夏、アメリカで感染症(EVALIアウトブレイク)が大流行しました。
EVALIは、電子タバコやベイプ製品の使用による肺損傷(e-cigarette, or vaping, product use-associated lung injury)の略です。
米国保健当局の報告によると、 2,800人以上が入院し、うち68人が死亡したことが公表されています。
この感染症の原因は、電子タバコに含まれる化学物質が肺組織を損傷させることです。
EVALIアウトブレイク後から5年間、いくつかの研究期間が調査をしたところ、電子タバコの使用が呼吸器疾患、心臓発作、脳卒中のリスクの増加と関連しているという実態が現れてきました。
今回紹介する米国心臓病学会の年次学術会議で発表された研究は、こういった電子タバコと健康についての知見に追加されるものです。
研究では、人生のどこかの時点で電子タバコを使用したことがある18歳以上の人は、電子タバコを使用したことがない人に比べて心不全を発症する可能性が19%高いことが発見されました。
突然の心臓発作とは異なり、心不全は心臓がゆっくりと弱ったり硬くなったりすることで、体中に血液を送り出すのに苦労します。
メッドスター・ヘルス社の医師兼研究員であるヤクブ・ベネ・アルハサン氏は、「電子タバコと健康被害を関連付ける研究が増えており、これまで考えられていたほど安全ではない可能性があることが判明している」と述べています。
この研究は、電子タバコと心不全との関連性を調査する研究としては最大規模ですが、査読はこれから行われるそうです。
研究について
研究は、米国国立衛生研究所のAll of Us研究プログラムに参加している米国成人175,667人の健康記録を分析しました。
この対象者のうち、約28,660 人が電子タバコの使用経験があると報告し、収集された4年間の追跡データのうち3,242人(中央値)が心不全を経験したことを報告しました。
研究開始時にすでに1回以上心不全を経験していた人は分析から除外され、研究者らは年齢、性別、心不全に関連する糖尿病、高血圧、高コレステロール、喫煙などのその他の要因についても調整されました。
これまでの大規模調査では心臓発作や脳卒中の発生率が比較的低い若年者に焦点を当てていましたが、今回の参加者の約60パーセントは女性で、ほとんどが白人52歳(平均年齢)でした。
その結果、電子タバコを一度も吸ったことがない人に比べて、以前および現在まで電子タバコを使用している人は心不全(特に心筋が硬くなり血液が適切に循環しにくくなるタイプの心不全)のリスクが19%増加したことが分かりました。
また研究者は、電子タバコを使用する頻度や、使用した電子タバコにニコチンや香料などの成分が含まれているかについては限定せず、一般的に吸われているタイプの電子タバコを使用した前提となりました。
カリフォルニアのメモリアルケア心臓血管研究所の心臓専門医ユーミン・ニー氏は、「ニコチン摂取に関連し、電子タバコ自体に何らかの害があるのではないかと懸念している」と述べています。
ニコチンには非常に依存性があり、この物質を含む電子タバコを吸う若者は喫煙を週間とする可能性が3倍高いことがわかっています。
また、別の研究報告によると、ニコチンを含まない電子タバコでさえ、肺組織や血管にも損傷を与える可能性があることが報告されています。
肺から化学物質を取り込んだ血液の目的地は心臓です。
この血液によって運ばれる化学物質や化合物がどのような害を及ぼしているかを特定するにはさらなる研究が必要です。
アルハサン氏は「さらなる研究が進めば、健康への影響についてさらに多くのことが明らかになり、世間により良い情報が公開されるだろう」と述べています。
この研究結果は、Journal of the American College of Cardiologyにて確認することができます。
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