超高齢社会の日本では、75~79歳では10.9%、80~84歳では24.4%、85歳以上では55%以上の人が認知症であるとされています。(介護の教科書より)
良い考え方か分かりませんが、“生きすぎ”たことに伴う病気とも言えます。
その大きな原因の一つがアルツハイマーであり、現段階では進行を遅らせることはできても治療は不可能と考えられています。
そんなアルツハイマー型認知症ですが、南カリフォルニア大学の研究では、古代ギリシャで長寿だとされる者の中でアルツハイマーと考えられる人は稀だったそうです。
今回の紹介するテーマとして以下にまとめていきます。
参考文献)
・Alzheimer’s Was ‘Exceptionally’ Rare in Ancient Greeks And Romans, Study Suggests(2024/02/28)
参考研究)
・Dementia in the Ancient Greco-Roman World Was Minimally Mentioned(2023/12/16)
古代ギリシャ・ローマ人とアルツハイマー病
南カリフォルニア大学、カリフォルニア州立大学による研究から、古代ギリシャ・ローマの時代に生きた高齢者は、現代の高齢者に見られるような深刻な記憶障害を経験していない可能性が示唆されました。
老化のメカニズムを研究しているケイレブ・フィンチ氏と歴史家スタンリー・バースタイン氏らは、紀元前8世紀から3世紀の間に書かれた人間の健康に関する多くの古典的なテキストを精査しました。
その結果、重度の記憶喪失を持つ高齢者や、高齢者の認知障害への言及は驚くほど少ないことが分かりました。
これは古代ローマ人やギリシャ人の平均寿命が短かったからではありません。
一般的に現在のように医療が発達する以前の平均寿命は現在の半分程度とされていますが、古代ギリシャの死亡年齢の中央値は70歳付近でした。
紀元前4世紀と3世紀のギリシャ語のテキストから、老齢からくる症状としては、難聴、めまい、不眠症、失明、消化器障害など、現代でも問題とされる身体的衰退を表す症状が述べられていました。
しかし、調べた限りの文献において、記憶の障害についてはさほど深刻な問題ではないようでした。
医学の父と呼ばれるヒポクラテス自身は、80代または90代で亡くなったと考えられていますが、彼の文献や後に続くアリストテレスの医学的な文献などを調べても、“記憶喪失”に関する言及を発見することはできませんでした。
フィンチ氏とバースタイン氏も、「現代で言うところのアルツハイマー病およびそれに関連する認知症症例報告に相当するものは見つかりませんでした」と述べています。
これらの歴史的レビューの調査結果は、認知症という病気が現代生活の産物である可能性があることを示唆しています。
事実、最近の研究では認知症やアルツハイマー病の原因として、心血管、大気汚染、食事などが考えられており、これらはすべて現代の生活や文化の発展において付随してきた問題でもあります。
一方、記憶の障害について詳しく言及していないだけで、初期または中期のアルツハイマー病を示している可能性のある症状に言及しているテキストがいくつかあると研究者らは言います。
フィンチ氏とバースタイン氏が西暦1世紀の文書を精査するまで、加齢に伴う重度の記憶喪失の言及を見つけませんでした。
しかし、西暦79年に亡くなった長老プリニウスは、年齢とともに自分の名前を忘れたローマの上院議員や雄弁家について記述しています。
2世紀になると、ローマ皇帝のお付きの医師ガレンによって、自分自身や友人を認識できなかった2つの疫病の生存者について書きました。
その頃のローマでは大気汚染が蔓延し、街に整備された配管からの鉛曝露が横行していました。
このような要因から、人口の増加や都市の発展がアルツハイマー病のリスクを高めるきっかけになった可能性があると考えられると研究者らは言います。
なぜ認知症の重篤な症状が古代ギリシャのものよりも帝国ローマの記録に頻繁に登場するのかについては、さらに多くの歴史的な材料が必要です。
フィンチ氏らは現在、アルツハイマー型認知症のような重篤な記憶喪失がいつ、なぜ高齢者に最初に現れ始めたのかを把握するために、古代および前近世の認知症の歴史について広く研究を進めるとしています。
この研究の詳細はアルツハイマージャーナルにて確認することができます。
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