科学

【研究】ほぼ全ての胎盤でマイクロプラスチックが発見される

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以前、マイクロプラスチックによってヒト脳由来ミクログリア細胞株(HMC-3)が炎症反応を起こすという旨の研究記事をまとめました。

 

直径5ミリメートル以下の小さなプラスチックいわゆるマイクロプラスチックは、自然界で分解されにくい上、空気や水の流れによって広範囲に広がってしまうという厄介な特徴があります。

 

つまりマイクプラスチックが体内に入ると、予測できない害を引き起こす可能性が高いということです。

 

多くの人が行いがちな“プラスチック容器のまま電子レンジで加熱したりする”と数十億個の微粒子が放出されることになり、取り扱いにも注意しなければならない物質です。

 

そんな様々な害をもたらしかねないマイクロプラスチックは、母親の胎盤からも見つかっています。

 

今回はそういった体内に残留したマイクロプラスチックの研究に関連した、生物への影響についての研究です。

 

参考記事)

Microplastics Found in Every Human Placenta Tested, Study Finds(2024/02/26)

 

参考研究)

Quantitation and identification of microplastics accumulation in human placental specimens using pyrolysis gas chromatography mass spectrometry(2024/02/17)

 

 

胎盤に残留するマイクロプラスチック

 

2023年の初め、北京大学の研究者は17以上の異なる胎盤でプラスチック廃棄物の微視的な粒子を発見したと発表しました。

 

同年末までの研究によって、2006年から2021年の間に提供された30の胎盤が分析されましたが、サンプルに含まれたマイクロプラスチックの数は時間の経過とともに大幅に増加したことが分かりました。

 

今回のメインテーマとなる研究では、胎盤の組織を用いて1ミクロン未満のプラスチックの小さな粒子と繊維を特定しました。

 

調査によると、62の組織サンプル1つ1つにさまざまな濃度のマイクロプラスチックが発見されました。

 

これらの濃度は、組織1グラムあたり6.5〜685マイクログラムの範囲で、人間の血流に見られるマイクロプラスチックよりもはるかに高い値です。

 

しかし、体内に残留しているこの物質が胎児や母親の健康どのように影響しているのかは明らかになっていません。

  

ニューメキシコ大学の生物学者マシュー・カンペン氏は、「胎盤への影響が見られる場合、この惑星のすべての哺乳類の生命が影響を受ける可能性がある」と述べ、どれくらい残留する量が増えると影響が出るのかについて懸念しています。

 

人間の組織にどれだけのマイクロプラスチックが蓄積しているかを判断することは、非常に困難です。

 

今回の研究では、新しい高解像度技術を使用して、人間の血液や組織中のプラスチックのスキャンを試みました。

 

研究者は、化学物質と超高速超遠心機を使用して分子を分離し、生物学的素材の大部分をプラスチック固体から分離しました。

 

その後、彼らはポリマーを分解して特定の化合物を決定しました。

 

62の胎盤サンプルで同様の操作を行ったところ、胎盤に含まれるプラスチックの半分以上がポリエチレンであることを明らかになりました。

 

 

これは、地球上で最も一般的に生産されたプラスチックであり、使い捨てのポリ袋やペットボトルの素材としてつかわれています。

 

その他胎盤で同定された他のプラスチック粒子には、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリプロピレンがあり、これらは全て数十年前に製造された製品が風化したものと推定されています。

 

研究の著者は、「臨床のデータと組み合わせると、生まれてくる子に異常な点が見つかるなど、妊娠結果に対する影響を評価する上で極めて重要になるだろう」と述べています。

 

以前の研究では、プラスチック汚染物質が小さいほど、細胞に侵入しやすくなる可能性があることが示唆されていますが、身体にどのような影響があるのかを判断することはやはり困難です。

 

人間の腸をモデル化した研究では、マイクロプラスチックは免疫の働きに対して危険な効果を示すことが明らかになっていたり、マウスで実験では、マイクロプラスチック(やナノプラスチック)が、マウスの胎児の脳の発達を混乱させる可能性があることが示唆されています。

 

現段階ではこういった物質の濃度が、胎児の成長や発達、妊産婦に対する健康にどう悪影響なのかは明らかではない」と研究者は付け加えており、今後の研究によって明らかになることが期待されています。

 

この研究はToxicological Sciencesにて確認することができます。

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