科学

【研究】辛い食べ物は長期的には健康に寄与するかもしれない【要約】

科学

  

2023年9月、唐辛子の170倍の辛さのチップスを食べた米国の10代少年が死亡したことを受け、販売メーカーが同商品を販売停止にしたニュースがありました。

  

ミネソタ州のある学校で7人の生徒がこの激辛のチップスを一枚丸ごと食べるチャレンジをした後、合併症にかかって救急隊が出動しています。

  

辛さも度を超えれば命に関わる危険なスパイスに変わります。

  

一方、過去の研究によると、ある程度の辛さは、長期的にみると健康的に寄与しているのではないかという発表がされています。

 

今回はそんな辛さが健康にどう影響するのかについてまとめた記事についてです。

  

参考記事)

Spicy food might burn in the moment, but it likely won’t harm your health in the long term(2023/10/10)

Spicy Foods Linked To Longer Life, Study Finds(2015/08/05)

  
参考研究)

Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study(2015)

  

  

辛い食べ物と健康

  

辛いものに対する耐性は人それぞれで、火傷が大好きな人もいれば、辛さに耐えられない人もいます。

  

しかし、辛い食べ物が健康にプラスに働くかマイナスに働くかについての科学的な意見は様々です。

  

この研究を記事としてまとめた著者は、疫学的に辛い食べ物が人々の健康にどのような影響を与え、辛いものを含む食事が人の寿命をどのように伸ばしたり縮めたりするのかについて視点を向けています。

  

  

辛い食べ物の魅力

  

スパイシーな食べ物の代表例として、アジアのカレーやテックスメックス料理、ハンガリーのパプリカッシュなど、スパイスの風味をふんだんに使った料理を挙げています。

  

また、唐辛子に含まれるカプサイシンなどの辛さを持つ食品を指すこともあります。

  

カプサイシンが辛い味を感じるのは、哺乳類の特定の生物学的経路を活性化させるためとされています。

  

辛い食べ物によって生じる痛みは、エンドルフィンやドーパミンを分泌させ、この脳内物質の放出は、安堵感や多幸感を促すことさえあります。

  

米国や英国などでは、極端な唐辛子を含むスパイシーな食品を口にする人がかつてないほど増えているのもこういった、脳内の作用が関係していると考えられます。

  

 

短期的な健康への影響

極端に辛い食品を摂取した場合、その辛さから、

唇、舌、口全体に広がる不快な灼熱感など様々です。

  

ひどい場合だと、消化管の不快感、頭痛、嘔吐など、さまざまな症状を引き起こすこともあります。

 

辛い食べ物によって不快感を得たり、偏頭痛、腹痛、下痢などの症状を引き起こしたりする場合は、そのような食べ物は避けるべきです。

  

炎症性腸疾患のある人などは、辛い食べ物がこうした症状を悪化させる可能性もあります。

  

こういった側面はさておき、世界中の多くの人々にとって辛い食べ物は、地理や文化の影響を受けた長期的なライフスタイルの一部です。

  

例えば、トウガラシは暑い気候の地域で育つため、そのような気候の地域の多くの文化が料理に辛いものを使うのはそういった要因が考えられます。

  

中には辛い食べ物が食中毒の抑制に役立つことを示唆する研究もあり、これも辛い食べ物に対する文化的嗜好を説明するかもしれません。

  

  

コンセンサスの欠如

栄養疫学者は長年、長期的な辛いもの摂取の潜在的利益やリスクを研究してきました。

  

辛味食品の摂取に関連して調査された結果には、肥満、心血管疾患、がん、アルツハイマー病、胸焼けや潰瘍、心理的健康、痛覚過敏、あらゆる原因による死亡などがあります。

  

これらの研究で見られた胸焼けのような結果は、より過激でスパイシーな食べ物を摂取したこととの関連性が強いなど、様々な結果が報告されています。

 

例えば、辛い食べ物は胃潰瘍の原因にはならないと断言する専門家もいるが、胃がんとの関連はそれほど明確ではありません。

  

心臓病、ガン、その他すべての研究集団の死因を考慮した場合、辛いものを食べることで早死にするリスクは増加するのでしょうか、それとも逆に減少するのでしょうか?

 

現在、大規模な集団ベースの研究から得られたエビデンスによれば、辛い食べ物は集団の全死因死亡リスクを増加させることはなく、むしろリスクを減少させる可能性があることが分かっています。

  

しかし、これらの研究結果を考慮する際には、辛い食べ物の他に何を食べているか、身体活動、相対的な体重、タバコやアルコールの消費など、様々なライフスタイルも健康に影響を及ぼすということを念頭に置く必要があります。

  

研究者が集団ベースの研究で食事や生活習慣の要因を正確に測定するのは容易ではありません。

  

ある食事要因が健康のある側面にどのような影響を及ぼすかについて、確固とした結論を得るには、何年にもわたって実施される数多くの研究が必要となります。

  

医学的、生物学的、心理学的な要因だけでなく、進化的、文化的、地理的な要因についても多くの憶測がありますが、科学者たちは、なぜ多くの人が辛いものを好み、中には好まない人もいるのか、まだ完全には分かっていません。

 

しかし、専門家が知っていることのひとつは、人間は快楽のために、苦痛を与えるほど辛いものを意図的に食べる唯一の動物のひとつだということです。

  

辛すぎる食べ物は身を滅ぼすことになるかもしれませんが、ほどほどの辛さを適度に摂取する分には長生きする秘訣になるかもしれません。

  

個人的には辛いものは積極的に食べないようにしていますが、少し見方を変えてみる機会かもしれません。

  

研究の詳細はTHE BMJにて確認することができます。

  

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