糖尿病に精神病……、現代では糖分や脂質の多い食事や他人との関係によって心も身体もボロボロになってしまうきっかけが多くあります。
また、いざとなれば病院で治すことができるということによる心の油断もそういった病気を招く原因と言えます。
病気になることは仕方がないと言えますが、その病気にかかる順番で余命が変わってしまうとしたら……。
今回はそんな病気にかかる順番と余命に関係する研究の紹介です。
参考記事)
・The Order You Get Diseases Can Shape Your Life Expectancy(2023/08/22)
参考研究)
病気にかかる順番と余命
イギリス南ウェールズのスウォンジー大学は、精神病、糖尿病、うっ血性心不全が年齢とともにどのように進行し、それが平均余命にどのような影響を及ぼすかを研究、評価しました。
研究では、過去25年以上の人口データを提供するSAILデータバンクから、25歳以上の160万人以上の成人について疾患の発症を分析しました。
統計モデルを用いて、同じ年齢、性別、地域の患者における精神病、糖尿病、うっ血性心不全の発症の順番と時期、そしてそれに関連する平均余命への影響を調査しました。
その結果、①糖尿病、②精神病、③うっ血性心不全の順番に発症した人の平均余命の損失が最も大きかったことが分かりました。
対して、同じ症状を違う順番で発症した人は、それほど影響を受けませんでした。
例えば、平均的な貧困地域に住む50歳の男性は、3つの病気を発症する順番によって、平均余命に10年以上の差が生じる可能性があります。
研究では、最初に糖尿病を発症し、次に精神病を発症し、最後にうっ血性心不全を発症した人は、最後の診断から5年以内に死亡するリスクが高いことも明らかになりました。
また興味深いことに、精神病と糖尿病と診断された人は、どのような順番であっても、精神病のみと診断された人よりも平均余命が長いことが分かりました。
これは、糖尿病患者が精神病を患っていたとしても、糖尿病クリニックなどを通じて、定期的に医療専門家と接触することで、全体的な健康状態が改善されるからではないかと推測されています。
これは、複数の長期疾患を発症する順番が人の平均余命にどのような影響を与えるかを調べた初めての研究です。
この研究は、患者、医療提供者、意思決定者に、疾患の適切な特定と患者のケア管理について情報を提供するために利用ができます。
また、病気の発症リスクを高める可能性のある要因を調べたり、病気のスクリーニングや早期介入の潜在的な機会を特定したりすることで、医療提供の支援にも役立っています。
今後の研究では、長期疾患の発症を遅らせたり、寿命(余命)を延ばしたりする上で、スクリーニングプログラムや介入が与える影響を評価することができる。
しかしこの研究は、ルーチンに収集された健康記録からの情報を使用したことから、診断名が必ずしも正確に記載されているとは限らない点などに注意が必要です。
本研究は、長期にわたる複数の病態の1つのグループの発症を調べたものですが、COVID-19感染後の長期にわたる健康状態の発症や、これがQOLに与える影響など、他の病態の組み合わせに対しても再現可能です。
スウォンジー大学統計学教授リアノン・オーウェン氏は、「長期疾患の組み合わせと発症の順番は、いずれも平均余命に大きな影響を与える可能性がある。しかし、この関係は複雑であり、疾患の発症が必ずしも寿命を縮めるとは限らない」と述べています。
病気そのものではなく、病気にかかる順番が余命に影響すると言う興味深い研究ですね。
また、躁うつ病などの精神疾患のみの場合だと余命が短い傾向にあることからも、精神衛生の大切さを伺えます。
これまでの健康系の研究記事をまとめた視点から、心も身体も健康でいるためには、やはり運動がてっとり早い解決方法だと感じます。
この研究はTHE LANCETにて確認することができます。
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