哲学

【韓非子⑫】部下は自分の身を守るために謀(はかりごと)をする

哲学

【前回記事】

 

この記事では、中華戦国時代末期(紀元前403~紀元前222年頃)の法家である“韓非”の著書韓非子についてまとめていきます。

      

韓非自身も彼の書も、法家思想を大成させたとして評価され、現代においても上に立つ者の教訓として学ぶことが多くあります。

      

そんな韓非子から本文を抜粋し、ためになるであろう考え方を解釈とともに記していきます。

   

【本文】と【解釈】に分けていますが、基本的に解釈を読めば内容を把握できるようにしています。

    

今回のテーマは“此れ必ず君上の法を顧みざらん”です。

   

    

   

此れ必ず君上の法を顧みざらん

【本文】

故に左右は、貞信の以て安利を得(う)可(べ)からざるを知るや、必ず曰わん、我、忠信を以て上に事(つか)え、功労を積みて安からんことを求るは、是(こ)れ猶(な)お盲にして黒白の情を知らんと欲するがごとし、必ず幾(き)せられず、若(も)し化に道(よ)り正理を行い、富貴には趨(橋)らざるを以て、上に事えて安からんことを求むるは、是れ猶お聾(ろう)にして清濁の声を審(つまび)らかにせんと欲するがごとし、愈々(いよいよ)幾せられずと。

   

二者以て安きを得可からずば、我(われ)安(いずく)んぞ能(よ)く相比周して主上に蔽(おお)い、姦私を為して以て思人に適すこと無からんや。

  

此れ必ず人主の義を顧(かえり)みざらん。

  

其の百官の吏も、亦方正の以て安きを得可からざるを知るや、必ず曰わん、我、清廉を以て上に事えて安からんことを求むるは、規矩(きょく)無くして方円を為さらんと欲するが若し、必ず幾せられず、若(も)し法を守り朋党(ほうとう)せざるを以て、官を治めて安からんことを求むるは、是れ猶お足を以て頂き搔くがごとし、愈々(いよいよ)幾せられざらん、と。

  

二者以て得可からずは、安くんぞ能く法を廃し私を行い、以て思人に敵すること無からんや。

  

此れ必ず君上の法を顧みざらん。

 

故に私を以て重人の為にする者衆(おお)くして、法を以て君に事うる者少なし。

 

是(ここ)を以て主は上に孤にして、臣は党を下に成す、此れ田成(でんせい)の簡公(かんこう)を弑(しい)せし所以の者なり。

 

【解釈】

そこで(前回の続き)、君主の侍臣たちは、忠実と信義を守ったのでは安全と利得を守り切れないと悟り、必ずこう言うだろう。

 

「私が忠実を持って君主に仕え、功徳を積んで安楽の身になろうと考えるのは、まるで盲目になって白黒を見分けようとしているようなものだ。

 

ましてや、学問を身につけ理性によって、富貴の誘いにのらなずに君に仕えて安楽の身になろうと考えるのは、聾唖者(耳が聞こえない人)になって声の清濁を聞き分けようとしているようなものだ。

 

どちらにしても私にできるところではない。

 

安楽が得られないのなら、私は同じ企みを持つ物同士ぐるになって、君主の目を塞ぎ塞ぎ耳を覆い、私欲のために姦悪をやって重人に取り入る。

  

これをやらないわけにはいかない。」

 

と。

 

こういう者たちは、君主の考える善悪など気にもかけない。

 

また官吏はみな、廉直さと正義を持って安楽を得ることができないことを悟り、こう言うだろう。

 

「私が清廉さをもって君主に支え、それで安楽の身を得ようとするのは、まるで器具なしに幾何学模様を描こうとするようなものだ。

 

ましてや、法規を守って職責を果たし、徒党などを作ろうとはせずに君主に仕えて安楽の身を得ようとするのは、まるで足を使って頭のてっぺんを搔こうとするようなものだ。

 

とてもできることではない。

 

どちらにしても安楽を得ることができないのならば、私は法規を曲げて、私利を計り、重人に取り入る。

 

これをやらないわけにはいかないのである。」

 

こういう人たちはもはや決して朝廷の制定した法律など気にもかけない。

 

こうして、私利を計って重人のために働く者が増え、法規を守って忠実に君主に従う者は減る。

 

そのために君主は上に置いて孤独となり、臣下は下において徒党を組む。

 

こうした事情によって、斉国の田成子は、君主である簡公を殺したのである。

 

 

自分の身を守るために謀をする

前回に続いて、君主が実績や行動ではなく好き嫌いで部下を評価してしまうことによる弊害を述べています。

 

部下は身を守る為に、君主に迎合する重人たちの言いなりになると言っています。

 

その結果君主は孤立し、よく考えられた姦臣の言うことを間に受けてしまう。

 

良い例として、斉の君主を殺した田成子(田常)の例を出しています。

 

賞罰を例外無く与え、約束したことをしっかりやったかに応じて評価する……。

 

君主としての資質に関する節でした。

 

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