科学

【研究】睡眠時無呼吸症候群によって認知機能が低下する可能性【要約】

科学

  

肥満、下顎の大きさ、扁桃腺のサイズなどによって、寝ている間に息の通り道が塞がれてしまう閉塞性無呼吸症候群。

  

国内の推定患者数は900万人を超えるとされていますが、実際医療機関で治療を受けているのは50万とされています。(兵庫医科大学病院 病気ガイドより)

  

睡眠中に発生するため自覚症状に乏しいこの症状ですが、どうやら認知機能の低下にまで影響しているようです。

  

2023年4月13日付けでScience Newsに掲載された記事からまとめていきます。

  

  

参考記事)

For The First Time, Sleep Apnea Is Shown to Cause Cognitive Decline(2023.4.13)

Obstructive sleep apnea may directly cause early cognitive decline(2023.4.6)

  

参考研究)

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frsle.2023.1097946/full(2023.4.6)

  

 

OSAとCSA

睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である“上気道”が狭くなることで無呼吸状態になる(10秒以上呼吸が止まる)ことと、大きないびきを繰り返す病気です。

  

睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)中枢性無呼吸症候群(CSA)があります。

  

OSAは、肥満などによって首周りの脂肪がついた状態で横になった際、気道が圧迫されて起こる症状です。

  

生まれつき舌やアデノイド(鼻の一番奥、喉との間の上咽頭にあるリンパ組織の固まり)、扁桃腺が大きいかったりする場合にも起こります。

 

CSAは、脳や神経において、呼吸をコントロールする延髄の“呼吸中枢”の異常によって起こる症状です。

 

脳梗塞や脳出血の後遺症、心不全などの発症後の後遺症などで発症しやすいとされています。

  

今回はOSAによる呼吸障害についてがテーマとなります。

  

  

OSAと認知機能の低下

  

キングス・カレッジ・ロンドンの神経精神科医のIvana Rosenzweig氏らによる研究では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の症状を持つ男性は、持続的な注意力の低下や、精神的な衝動の制御の欠陥が見られることが明らかになりました。

  

OSAは長い間、認知機能の障害やうつ病、アルツハイマー病などの神経変性疾患と関連していることが分かっています。

 

しかし、これまで明確でなかったのは、これらがOSAに関連する別の疾患によって引き起こされるのか、OSA単体で引き起こされるのかという点です。

 

今回の研究では、軽度から重度のOSAの症状がある、35歳から70歳までの27人の男性を対象に調査を実施しました。

  

認知テストの結果は、OSAの症状を持つ男性は、持続的な注意能力、実行機能、短期的な知覚認識、記憶力、社会的感情認識のスコアが、そうでない対照群と比べて低かったことが示唆されました。

  

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frsle.2023.1097946/full  Figure 1より

  

また、OSAが重篤であればあるほどスコアが低くなり、認知機能の低下や衝動的な感情のコントロールができなくなることも明らかになりました。

  

OSA以外の健康上の問題がなかったことから、認知機能の低下は睡眠時無呼吸症候群と関連づける根拠となりました。

  

また続く調査結果から、若いうちから睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合早ければ中年頃には認知機能に影響があるかもしれないと警鐘を鳴らしています。

 

認知機能が低下する原因は正確にわかっていません。

  

研究チームは、無呼吸状態になることで、血液中の酸素と二酸化炭素のレベルに関係があるとされています。

  

それ以外にも、脳への血流の変化、脳の炎症、睡眠が妨げられることによる、睡眠の量と質の低下が長い間続くことで、認知障害を発症するリスクが高くなるだろうと分析しています。

  

今後、研究者はOSAをもっと大規模に調査することに加え、脳の回路にどのような影響があるのか、併存疾患が認知機能低下の発症にどのように影響するかをより詳しく研究する必要があると述べています。

  

最後にIvana Rosenzweig氏は、「この複雑な相互作用はまだ十分に理解されていないが、これらは、脳の範囲的な、神経解剖学的及び構造的変化と関連する機能的認知的および感情的な結果につながる可能性が高い」と残しています。

  

  

まとめ

・睡眠時間無呼吸症候群は認知機能の低下と関連性があるデータが示された

・血中の酸素の量や、脳の炎症のコントロール不全、睡眠の質の低下などが原因と考えられている

・若い頃から無呼吸状態がある場合、中年頃に認知機能に変化が現れる可能性がある

  

以上、睡眠時無呼吸症候群と、認知症についての研究まとめでした。

   

自分の終わりにも、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある人がいたりします。

   

大きないびきをかいているかと思いきや、いきなり「フガッ!」っと呼吸が止まる様を見るのは結構驚きます。

  

そのくせ本人はそんなに気づいていないという……。

  

自覚しにくいというのがこの症状の怖いところで、知らぬ間に認知機能に影響があるなんてことがあるかもしれません。

  

自分もそうならないよう、運動や睡眠には気をつけながら生活していきたいです。

  

なんて言っている自分がもしかしたらそうだったりして……。

  

コメント

  1. 岩倉聡央 より:

    そういえば30年近く前、帝京大学付属病院の口腔外科の先生から「舌が短いですね、活舌が悪いといわれませんか?」と聞かれて『そんなことはありまてん!』と言った恥ずかしい記憶がよみがえりました(^▽^;)。

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