絶滅した生物が実は生きていた……。
人間にとってこれは、一つのロマンでもあります。
今回は、絶滅したと考えられていた日本固有の植物種が、実は細々と生き延びていたという話題です。
神戸大学大学院医学研究科の研究グループが、1992年に絶滅したと考えられていたシスミア・コーベンシス(和名:コウベタヌキノショクダイ)を再発見しました。
参考記事)
Otherworldly ‘fairy lantern’ plant, presumed extinct, emerges from forest floor in Japan
参考研究)
シスミア・コーベンシス
シスミア・コーベンシスは、土の中の菌類から栄養を奪って生活する珍しい植物です。
光合成を必要とせず、開花時期のわずかな期間にのみドライフルーツのような半透明の花を咲かせます。
その生態や幻想的な花の様子から、海外では“fairy lantern(妖精のランタン)”と呼ばれています。
1992年に日本の神戸でひとつの個体が記録されたこの植物は、1999年の産業団地建設までの調査では発見することができませんでした。
その後の調査でも発見には至らず、2010年には兵庫県より絶滅が宣言されました。
そこからおよそ13年が経った今、科学者たちは、神戸から約30km離れた森の小道で、この植物の花びらを偶然発見しました。
1992年に採集されたコウベタヌキノショクダイの標本は、話の一部が欠損した状態で発見されたため、調査には限界がありました。
今回、新たに発見されたことによって他の種との違いを細かく比較できるようになりました。
その結果、近縁種は台湾に生息する“Thismia huangii”だと判明。
見た目はほぼ同じですが、花筒の上のリングの幅や、柱頭に生えている毛の様子などからそれぞれで独立した種であるとされています。
コウベタヌキノショクダイの発見によって、アジアで最も北に知られる、タヌキノショクダイ属となりました。
また、北米は唯一のタヌキノショクダイであるThismia americanaとも密接関係していることも発見され、おそらく東アジアと北米間のベーリング地峡から分布を広げていったと考えられています。
ちなみにThismia americanaもとても稀な種で、1912年にシカゴで発見され、その後1916年以来、その種の姿を見せていません。
タヌキノショクダイ属の植物は、菌類から栄養を得るという特殊な生態から、周りの環境に大きく影響されてしまいます。
そのためほぼ全ての種類が絶滅に瀕し、極めてせ狭い範囲に少数存在するのみと考えられています。
今回の再発見によって、タヌキノショクダイの理解が深まり、個体の保護につながることが期待されています。
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