の続き…。
紀元前1570~前1069年ごろ、エジプトに新王国時代が訪れます。
テーベを本拠地に移したファラオたちは、武力を持ってエジプトを統一するために、セト神のような軍神を信仰するようになりました。
今回はそんなテーベの神を中心に紹介していきます。
モントゥ(Montu)
またハヤブサ頭です!
ハヤブサは太陽に近いものの象徴であり、エジプトを統べるものの象徴でもあります。
モントゥはウアス(力と支配を表す杖)とアンクを持ち、頭にはウラエウス(コブラの飾り)と太陽が描かれています。
ここまでは太陽神ラーとだだ被りしていますが、2本の羽飾りを戴いていることで見分けることができます。
第11王朝で天下をとったモントゥでしたがその栄光は長くは続きませんでした。
第12王朝は系統が違う王族が統治したため、また一神々に逆戻りしました。
しかモントゥの信仰は薄くなりませんでした。
後に自身をモントゥとなぞらえるファラオも出てくるようになります。
アメン(Amen)
アメンはエジプト神話に欠かせない神の一人です。
元はヌン(原初の海)から自然発生した神でしたが、男にも女にもなれることと、“隠す”“見えないもの”を意味する言葉が語源であること以外、ほぼ謎に包まれた神でした。
そのため信仰する人も少なく一言でいうと地味な神とされていました。(かなり昔からいるのに…。)
しかしこの曖昧さが、彼を大出世させることになります。
第12王朝のファラオは、前王朝で信仰が厚かったモントゥから主神を変更しようと考えました。
しかし権威ある太古の神々は、かつての王朝で既に信仰されています。
ただアメンは太古の神の中でも未だ触れられていない神だったため、一時的に主神の地位につくことができました。
アメンは“見えないもの”という特性を利用し、大気の神シューを取り込み習合します。
大気(空気)という生命を司る力を手に入れたアメンは、生命繋がりで生殖の神ミンを取り込んでいきます。
その後もアメンの出世は止まりません、ついでに軍神モントゥとも習合し、遂には創造神アトゥムまでも取り込みます。
しかもこのときのアトゥムは太陽神ラーと習合していたため、アメンは創造神であり太陽神もあるという究極に近い神になったのです。
この最終形態を至高神アメン=ラーです。
ムト(Mut)
頭にハゲワシと二重王冠を載せた神がアメンの妻ムトです。
ムトは起源不明の謎多き神です。
夫のアメンは、自身を女性化させたアマウネト(一説によると妻)の姿でもありましたが、いつの間にかムトが妻の座についていました。
その経緯は明らかになっていません。
彼女も色んな神と習合を果たします。
豊穣の女神イシスや愛と美の神ハトホル、さらにはあの殺戮兵器セクメトとも習合を果たすという欲張り母さんです。
コンス(Khons)
アメン=ラーとその妻ムトとの間に生まれた神がコンスです。
コンスは月を司る神であり、頭には満月と三日月の飾りを載せています。
自慢の三日月の刃で罪人を断罪します。
月は神秘の象徴であると同時に、精神の健康や不安を表しているため、コンスは病をもたらすと同時に癒す神でした。
以上、テーベで篤く信仰された“アメン・ムト・コンス”の三柱をまとめてテーベ三神と呼びます。
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