【前回記事】
この記事は、書籍「世界はラテン語でできている」を読んで興味深かった内容について抜粋して紹介する記事です。
この本は、古代ローマから用いられてきた言語が現代にどのように残っているのかについて書かれています。
政治、宗教、科学だけでなく、美術やゲームなど幅いジャンルに浸透している言葉について知ることで、世の中の解像度が上がって世界が少し楽しくなるかもしれません。
今回のテーマは、“ロウソク(candle)の語源”についてです。
古代ローマの正装トガ
〜引用・要約〜
candleの語源に入る前に、古代ローマ人が着ていた服について触れておきたいと思います。
古代ローマ市民の男性が正装する際に着る服(布)をトガと言います。
一枚の大きな布を体に巻き付けて着用した衣服でしたが、中でも選挙の候補者は白いトガ(ラテン語で“toga candida”) を着ていました。
トガ自体は白い布で作られているのですが、toga candidaはそれをさらに漂白して仕上げています。
このまばゆいばかりの白は、人目を引くだけでなく、候補者が「自らが誠実である」ことを有権者に示すためでした。
ここからラテン語で公職志願者のことを“candidatus”と言い、英語では選挙の候補者を“candidate”と言いますが、これらの語源は古代ローマ人が着ていた衣服に関係しています。
日本においても、“潔白”という言葉が誠実さや罪が無いことを表すように、色が示す意味合いは古代ローマからも変わっていないようですね。
ロウソク(candle)の語源
さて、ここからロウソクの語源についてまとめていきます。
先ほど説明したToga candida(白いトガ)ですが、ここで言う白いトガの「白」は並みの白ではなく、まぶしいほどの白です。
Toga candidaに入っている形容詞candidus「白い、誠実な」はラテン語のcandeo「輝く」という動詞から派生したもので、このcandeoが同じくラテン語のcandela(ロウソク)の元になっています。
もうお分かりかもしれませんが、このcandelaが英語のcandle(ロウソク)の語源となっています。
ラテン語の「candela(カンデラ)」は車のライトや電球を照らした際の光度の単位などにも使われているため、聞き馴染みのある方もいるかと思います。
FCL ルーメン・ケルビン・カンデラってわかる? より
ちなみに上図の「ケルビン」は、イギリスの物理学者ウィリアム・トムソンの爵位であるケルヴィン卿に由来するものであり、「ルーメン」は、ラテン語の“limen(昼光)”からきています。
またcandelaは、フランス語のchandelier(シャンデリア)」の語源にもなっています。
〜引用・要約ここまで〜
古代ローマの服からロウソクまで、意外な繋がりがあったのですね。
「政(まつりごと)を治める者は誠実でなければならない」という本来の意味についても今の世の中を見ると色々考えさせられるところがあります。
せめて自分には誠実に生きたいものです。
ちょっと暗い話で終わるのも嫌なので、もう一つ言葉の語源についても紹介!
「輝く白(candida)」ではなく「単なる白」ラテン語でを言う時は“albus”と言いますです。
これは、皮膚の色素が欠乏した動物に使われる“albino(アルビノ)”や卵白や胚乳を意味する“albumen”の語源にもなっています。
また、album(アルバム)の語源もalbusであり、これはラテン語のalbum(白色掲示板)が由来です。
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