この記事は、書籍「世界はラテン語でできている」を読んで興味深かった内容について抜粋して紹介する記事です。
この本は、古代ローマから用いられてきた言語が現代にどのように残っているのかについて書かれています。
政治、宗教、科学だけでなく、美術やゲームなど幅いジャンルに浸透している言葉について知ることで、世の中の解像度が上がって世界が少し楽しくなるかもしれません。
今回のテーマは、“vote「投票する」の語源”についてです。
vote「投票する」の語源は「お願い」
〜引用&要約〜
英語のvoteは、名詞としては「投票」、動詞としては「投票する」という意味で常用されている言葉です。
日本語でも、casting vote(キャスティングボート=賛否同数の場合の議長の決定権)として使われたりもしています。
voteの語源は、ラテン語の“votum(願い)”であり、このvotumは、“voveo(願う、神に誓約する)”という動詞から派生した単語です。
ではなぜ「願い」という言葉が「投票」に変わったのでしょう。
その答えは中世ラテン語にあります。
ラテン語は古代ローマで盛んに使われ、その後中世の歴史を経て近世ラテン語に至ります。
中でも中世ラテン語の特徴として、古代のラテン語には見られない語法や単語の意味がかなり生まれたことが挙げられています。
その逆に、近代以降のラテン語は古代人のようにラテン語を書こうという動きが強まりました。
その結果、独自の変化は弱まり、古代のラテン語を模範とするようになります。
もし古代ローマ人が中世の人が記したラテン語と、近代以降の人が記したラテン語を読んだ場合、近代以降の人の扱うラテン語の方が相当読みやすいと感じるでしょう。
この前提を知った上で“vote”の話に戻ります。
古代のラテン語では、votumという言葉に「祈願」「神への誓約」「奉納物」「結婚の誓い、結婚」などの意味がありました。
また、中世ラテン語の辞書を引いてみると、votumの3番目の意味に「選択や採択を示すこと。投票」とあります。
これが現在の英語のvoteの意味に影響を与えていると考えられています。
実はvoteという英単語も古代のラテン語のように、本来の意味は「願い」でした。
それが、スコットランド方言で「投票」という意味として使われるようになり、この用法が全国的に使われはじめたことで、現在では「願い」という意味が薄れていったのです。
ちなみに、ラテン語で「スコットランド」はCaledonia (カレドニア)と言います。
南太平洋にニューカレドニアという島がありますが、この意味は「新スコットランド」です。
ヨーロッパ人として初めてこの地に到達したイギリスの探検ジェームズ・クックがスコットランドの風景と似たものを 感じたことからこう名付けられたそうです。
〜引用&要約ここまで〜
美術様式においても、新古典主義(18〜19世紀ごろ、古代ギリシャ・ローマ時代の美術を復活させて取り入れた様式)があるように、ラテン語においても古き文化を復活させるような歴史があったのですね。
「古代ローマ人が中世のラテン語よりも、近世のラテン語の方が読みやすいだろう」という考察も面白く、もしタイムスリップしてきたなら言葉はそのままに、文化の発展に驚くのかなぁと想像してしまいます。
そんな言葉の移り変わりにロマンを感じる内容でした!
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