亜鉛は銀白色の反磁性を示す金属です。
酸と塩基の両方に反応し、乾燥した空気中ではほとんど酸化しません。
鉄や鋼に比べてイオン化傾向が大きいので、それらの金属に触れていることで腐食を妨げることができます。
その用途は幅広く、錆止や絵の具、化粧品などの塗料をはじめ、真鍮や洋銀などの合金、乾電池の負極材、人間の体に存在する栄養素など挙げるとキリがありません。
亜鉛の歴史
亜鉛の歴史は古く、紀元前4000年以上前から人類と共にありました。
加工しやすく銅よりも強い金属である青銅やそれに並ぶ重要な金属である真鍮など、武器や装飾品、貨幣など歴史に大きな影響を与えていました。
古くはダキア人やインドの一部地域など、限られた地域でのみ亜鉛の精錬技術が発達していた場所がありました。
しかし、ヨーロッパで金属として亜鉛を精錬するようになったのは、化学的性質が明らかになる産業革命以降になってからでした。
亜鉛は融点が約420℃、沸点が約907℃と鉄などに比べると低温です。
そのため鉄と混ざった亜鉛を精製しようとすると、熱によって鉄が溶けるよりも前に沸騰して蒸気になってしまいます。
そのことから亜鉛蒸気が金属であることを認識されていなかったという悲しい側面もあります。
人体にとっての亜鉛
亜鉛は人体にとっても重要な役割を持つ栄養素です。
皮膚のたんぱくを合成するために必要だったり、血糖値をコントロールするインシュリンの構成成分でもあります。
一日の推奨摂取量は成人男性で10mg、成人女性で8mgが目安となっています。
適切な量を摂取していると、
・ビタミンAに作用することによる免疫力の向上
・ビタミンAによる抗酸化作用の活性化
・たんぱく質の代謝促進による肌や髪の毛の健康維持
・神経伝達物質の生成による鬱症状の緩和
…
など健康上のメリットが多くあります。
不足すると味覚障害や皮膚炎、糖尿病や脱毛症、生殖機能の低下など体における様々な異常のきっかけになってしまいます。
逆に過剰に摂取すると、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢などが起こるとされています。
亜鉛は体内では自力で作り出すことができないため、食事やサプリメントからの摂取が必要になります。
食べものにおいては、
・牡蠣(100gで14.5mg)
・豚のレバー(100gで6.9mg)
・煎りごま(100gで5.9mg)
・きな粉(100gで4.1mg)
・うなぎの蒲焼一串(一串=100gで2.7mg)
と少し意識しないと食べないものが多かったりします。
ちなみに牡蠣の可食部はだいたい15g程度なので、6~7個の身を食べるともう充分なようですね。
豆知識
亜鉛でメッキを施した鋼板をトタンと言いますが、このトタンとはポルトガル語のツタンナガ(tutanaga)を語源としています。
ちなみに鋼板にズズをメッキしたものがブリキで、これはオランダ語で板金を意味するブリク(Blik)からきています。
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