古代ギリシャの植民都市シュラクサイにアルキメデス(?~紀元前212年)という人物がいました。
数学、物理学をはじめ天文学などにも精通した研究者であり、武器などを開発する発明家でもあります。
何より現在では“浮力”として知られるアルキメデスの原理を発見した人物です。
アルキメデスについては、彼の発明や発見以外の痕跡が多くありません。
彼の死後長い月日を経て、後世の歴史家たちがまとめたものが多く、断片的な内容の繋ぎ合わせて語られています。
今回は、彼の功績のひとつであるアルキメデスの原理の発見について紹介しようと思います。
アルキメデスと王冠
当時シラクサは、ヒエロンという名の王が統治していました。
ヒエロン王は金細工師に王冠を作らせます。
ある日ヒエロン王は、
「金細工師が王冠の金をごまかし、一部に銀を使って王冠を作っている」
との密告を受けました。
混ぜ物をされたとしても、その量も分からなければ色も見た目も金と変わりない…。
ヒエロン王は、王冠を壊したり溶かしたりせずに混ぜものを見極めるようアルキメデスに命令します。
アルキメデス自身もこの命令には困り果てました。
王冠を壊さずに混ぜ物を見極める方法が未だかつてなかったからです。
アルキメデスの原理
どれだけ考えても解決の糸口が見つかりません。
このままでは今まで受けていた研究の援助が打ち切られるどころか、最悪処罰され首を切られることも考えられます。
王が示した期日を目前にアルキメデスは観念し、溢れるほどお湯を張った風呂に入ろうと準備しました。
最後に身を清めようと思ったのです。
しかしお湯に浸かり水が溢れたその瞬間、彼はひらめきます。
アルキメデスの原理を思いついたのです。
(アルキメデスの原理=流体の中で静止している物体は、それが押しのけた流体の重さだけ上向きの力、すなわち浮力を受けるという原理。)
アルキメデスの原理
さて、王冠の混ぜものを調べるその日。
アルキメデスは用意したのは天秤と桶と水でした。
天秤を使って王冠と金の重さ量り、水を張った桶の中に入れ、溢れた水の量を比べるというもの。
金の1cm^3センチメートルの重さは19.3g。
銀の1cm^3センチメートルの重さは10.5g。
もう少し噛み砕くと…。
金500gの王冠を作るのに必要な体積は約26cm^3
銀500gの王冠を作るのに必要な体積は約48cm^3
つまり銀を使うと体積が大きくなってしまうのです。
このことから、桶から溢れた水の量は、銀が混ざって体積が大きくなった王冠の方が多いのです。
しかしこれには疑問が残ります。
銀が多少混ざっていたからと言って、そこまで王冠の体積に影響するのでしょうか…?
溢れた水の量も、誤差の範囲内程度でしかないことも十分考えられます。
何より浮力を発見したアルキメデス的ではありません。
では以下のような浮力を使った比較方法ではどうでしょう。
重さを釣り合わせた王冠と金を水の中に沈めるのです。
水中であれば、流体(水)を押しのける体積の大きさによって浮力(↑向きの力)の影響を受けます。
これこそがアルキメデスの原理です。
これにより銀が混ざり体積の大きくなった王冠は、浮力によって上に押し上げられます。
この方法なら少しの体積の違いでも結果は明らかですし、溢れた水の量を比べるよりもはっきりと分かります。
そして何よりアルキメデス的な比較の仕方だと思います。
こうしてアルキメデスは王冠の混ぜものを見破り、金細工師は処罰され一見落着となりました。
アルキメデスの話の多くは、王冠の水の溢れ方に注目されたストーリーが多いですが。
きっと分かりやすいように簡略化されたのかもしれませんね。
このことは知られている限り人類で初めて、科学知識を応用した出来事として現在まで伝わっています。
ちなみに物体の体積が流体を押しのけた分だけ上向きの力が働くと説明しました。
水や液体ではなく流体と表記したのは、水中以外でもこの法則が当てはまるからです。
空気も流体のひとつであり、空気中でも空気を押しのけた体積分、上向きの力を受るということが現在は分かっています。
以上!アルキメデスの原理の発見についてでした。
彼はこの他にも様々な発見や発明をしていますが、それについてはまた次回の記事にてお話ししようと思います。
コメント