健康的な老後を迎えるためには、どのような食事が理想的なのでしょうか?
ハーバード大学を中心とする研究チームが、30年間にわたる大規模な追跡調査を行い、老後の健康を大きく左右する食事パターンを明らかにしました。
この研究では、「健康的な老化」を70歳時点で慢性疾患がないことや身体能力が良好な状態を維持していることを基準に調査がされました。
対象となった10万人以上の食生活を詳細に分析した結果、最も効果的な食事法として「代替健康食指数(AHEI: Alternative Healthy Eating Index)」が挙げられました。
この発見は、老後の生活の質を向上させるための重要な指針となる可能性があります。
以下に、研究の内容をまとめていきます。
参考研究)
・Optimal dietary patterns for healthy aging(2025/03/24)
10万人超を対象にした大規模研究

今回の研究では、10万5,015人の食習慣を30年にわたり追跡調査されました。
研究チームは、参加者の食生活がどのような食事指針に該当するのかを分析し、70歳時点での健康状態を評価しました。
「健康的な老化」と認められる条件は以下の3つです。
1. 慢性疾患がないこと(心臓病、糖尿病、がんなど)
2. 認知機能が正常であること(認知症や記憶障害がない)
3. 身体的な自立が保たれていること(歩行や日常生活動作に支障がない)
最終的に、調査対象のうち9,771人がこの基準を満たしていました。
この研究の特筆すべき点は、特定の病気に焦点を当てるのではなく、「老後の総合的な健康状態」を評価したことです。
これにより、単に寿命を延ばすのではなく、人生の質を高めるための食事の重要性が明らかになりました。
最も効果的だった食事「AHEI」とは?
研究では、8つの健康的な食事パターンが分析されました。その中で、最も健康的な老化を促進する効果が高かったのが、**「代替健康食指数(AHEI)」**です。
【AHEIの特徴】
AHEIは、ハーバード大学が開発した食事指標で、以下の特徴があります。
積極的に摂取すべき食品
• 野菜(特に緑黄色野菜)
• 果物(ベリー類など抗酸化作用の高いもの)
• 全粒穀物(玄米、オートミール、全粒パンなど)
• ナッツ・種子類(アーモンド、くるみ、チアシードなど)
• 豆類(大豆、レンズ豆、ひよこ豆など)
• 健康的な脂肪(オリーブオイル、アボカド、魚由来のオメガ3脂肪酸)
控えるべき食品
• 赤身肉・加工肉(牛肉、豚肉、ベーコン、ハム、ソーセージなど)
• 砂糖入り飲料(清涼飲料水、ジュースなど)
• 塩分の多い食品(加工食品、スナック菓子、ファストフードなど)
AHEIを守ると老後の健康リスクが大幅に低下
研究の結果、AHEIに最も忠実に従った上位20%の人々は、最下位20%の人々と比較して86%も健康的に老いる確率が高いことが判明しました。

これは、単に長生きするだけでなく、70歳になっても慢性疾患がなく、心身ともに健康でいられる可能性が高いということを意味します。
「万能な食事法は存在しない」

この研究に参加したモントリオール大学のAnne-Julie Tessier氏は、次のように述べています。
「この研究結果は、どんな人にも適用できる万能な食事法は存在しないことを示している。健康的な食事は、個人のニーズや好みに合わせて調整できる。」
例えば、同じ健康的な食事でも、地中海式ダイエットや日本食のように地域や文化によって異なるスタイルが考えられます。
重要なのは、植物性食品を中心にバランスの取れた食事を意識することです。
また、コペンハーゲン大学のMarta Guasch-Ferré氏は、食事の選択が個人の健康だけでなく、公衆衛生にも影響を与えると指摘します。
「健康的な老化の研究は、公衆衛生と個人の両方にとって重要です。今回の研究は、植物性食品を中心にした食事が健康的な老化を促進する可能性があることを示唆しています。将来の食事ガイドラインを考える上で有益な知見となるでしょう。」
食事を見直すことで、将来の健康を大きく左右する可能性があると考えられます。
健康的な老後を迎えるために、今日からできる小さな改善を始めることは、決して損なことではないでしょう。
まとめ
・「代替健康食指数(AHEI)」が最も健康的な老化を促進する食事法であることが判明
・AHEIに忠実な人は、健康的に老いる確率が86%高い。
・植物性食品を中心としたバランスの取れた食事が、老後の生活の質を向上させる可能性が高い。
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