近年、世界中で糖尿病、心疾患、がんといった深刻な慢性疾患の増加が問題視されています。
これらの背景には食生活の乱れがあるとされ、特に「加工肉」「加糖飲料」「トランス脂肪酸」を含む食品の摂取が強く関連しているとする研究が相次いでいます。(Ultra-processed food intake and risk of cardiovascular disease: prospective cohort studyより)
今回、ワシントン大学から発表された分析研究によって、ホットドッグ1本や缶入りソーダ1本でも、病気のリスクが有意に高まる可能性があることが明らかになりました。
こうした食品を「ごく少量」摂取するだけでも、重篤な疾患のリスクが高まることが示され、食事と病気の関連性への新たな知見となることだ期待されます。
今回は、医学誌nature medicineに掲載された内容を元に、研究をまとめます。
参考記事)
・These 3 Foods May Spike Your Risk of Life-Threatening Diseases—Even in Small Amounts(2025/07/18)
参考研究)
ごく少量の摂取でも慢性疾患リスクが増加

この研究では、加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸がいかに病気と関連するかを評価するため、これまでに発表された60以上の疫学研究が解析されました。
調査対象となった疾患は、二型糖尿病、大腸がん、虚血性心疾患の3つです。
研究で明らかになったのは、1日の摂取量が非常に少量であっても病気のリスクが顕著に増加するという点です。
主に以下の食品や飲料がリスク増加に大きな影響を与えるとしています。
【加工肉(ホットドッグ、ベーコンなど)】
• 0.6〜57g(ベーコン5枚程度)/日で、二型糖尿病のリスクが11%、大腸がんのリスクが7%増加
• 50g(ホットドッグ1本)/日では、糖尿病リスクが30%、大腸がんリスクが26%増加
【加糖飲料(ソーダ、フルーツジュースなど)】
• 1.5〜390g(350ml缶1本程度)/日で、糖尿病リスクが8%、心疾患リスクも上昇
【トランス脂肪酸(ケーキ、菓子パン、スナック菓子など)】
• 1日の摂取エネルギーの0.25〜2.56%に含まれる量で、虚血性心疾患のリスクが3%増加
巷に溢れるこれらの食品はいつどこでも手に入れることができ、「たまに」「少しだけ」といった油断が健康を大きく損なう可能性があるのです。
なぜこれらの食品が危険なのか?
【加工肉がもたらす影響】
ホットドッグやソーセージ、ハムなどの加工肉には、脂質、飽和脂肪酸、ナトリウムが多く含まれており、これが血中脂質の異常、コレステロールの上昇、高血圧を引き起こします。(Processed Meat and Colorectal Cancer: A Review of Epidemiologic and Experimental Evidenceより)
さらに、加工工程で使われる「燻製」「塩蔵」「高温調理」などが、発がん性物質を発生させる要因となります。
特に、亜硝酸塩・硝酸塩といった添加物は大腸がんのリスクと関連があるとする研究も多く存在します。 (Nitrites and nitrates from food additives and natural sources and cancer risk: results from the NutriNet-Santé cohortより)
また、赤身肉に含まれる「ヘム鉄」は腸の内壁を傷つける可能性があり、サプリなども含めた過剰や長期摂取は大腸がんのリスクを高めると考えられています。(Iron metabolism in colorectal cancerより)
【加糖飲料のリスク】
さらに、加糖飲料の常習的な摂取は腸内環境を悪化させ、腸内細菌の多様性を減少させるという研究もあります。(High Intake of Sugar and the Balance between Pro- and Anti-Inflammatory Gut Bacteriaより)
これにより栄養吸収力が低下し、慢性炎症や代謝の乱れを引き起こすといった悪循環を招く可能性があると、カリフォルニア大学の栄養氏であるAshley Koff氏は述べています。
【トランス脂肪酸の影響】
トランス脂肪酸は、クッキーやケーキ、冷凍ピザ、スナック菓子などの加工食品に含まれており、LDLコレステロールの増加とHDLコレステロールの減少を同時に引き起こす点が特徴です。
• LDLコレステロール:細胞やホルモンに必要だが、「高ければ高いほど血管障害リスク」なので140 mg/dL以上が問題となる(厚生労働省 脂質異常症 より)
• HDLコレステロール:血管清掃役として重要だが、低すぎても高すぎてもリスクあり(目安は40–70 mg/dL)
厚生労働省 脂質異常症 より
研究者らは、「これら2つの作用は、個別でも心疾患リスクを高めるが、併せて発生するとリスクはさらに大きくなる」と警告しています。
どれくらいなら摂取しても大丈夫?

明確な「安全な摂取量」は現在も研究が進められている段階ですが、世界保健機関(WHO)も加工肉の摂取はできるだけ控えるべきと勧告しています。
研究者は、「本当に食べたいのであれば、月に1〜2回程度に留めるのが現実的なライン」と語っています。
砂糖入り飲料についても同様に、「たまに楽しむ程度であれば許容範囲です」としています。
なお、トランス脂肪酸は2018年にアメリカ国内で全面禁止されており、現在ではほとんどの食品から排除されています。
ただし、一部の加工食品にはごく微量含まれている可能性もあり、成分表示を確認することが推奨されます。
米国心臓協会(AHA)は、これらのリスクを軽減するために、以下のような食品を推奨しています。
• 野菜、果物、全粒穀物、鶏肉、魚、ナッツ類
• 加工食品やスナックよりも自然食品を優先
• 飲料は水や炭酸水、レモン水に置き換える
参考記事内では「砂糖への欲求は、摂取頻度が下がると自然と減少する」と語られており、日々の習慣を見直すことが長期的な健康の鍵になるとアドバイスしています。
まとめ
・加工肉、加糖飲料、トランス脂肪酸はごく少量でも健康リスクを高める
・特に糖尿病、大腸がん、虚血性心疾患との関連が明確に
・食生活を見直し、できるだけ自然で栄養価の高い食品を選ぶことが推奨される
コメント