夜、スマートフォンを手にベッドに入り、SNSをチェックしたり、動画を観たりすることは、多くの人々にとって日常的な習慣となっています。
特に若年層や大学生の間では、就寝前やベッドの中でのスクリーン使用が生活の一部になっており、それが睡眠に与える影響については長らく懸念されてきました。
このたび、ノルウェー公衆衛生研究所(Norwegian Institute of Public Health)に所属する臨床心理士Gunnhild Johnsen Hjetland氏を中心とする研究チームが、ノルウェー国内の大学生45,202人を対象とした調査データを用いて、スクリーン使用と不眠との関連性を詳細に分析しました。
研究の内容を以下にまとめます。
参考記事)
・Screen Time In Bed May Increase Insomnia Odds, Study Suggests(2025/04/13)
参考研究)
・How and when screens are used: comparing different screen activities and sleep in Norwegian university students(2025/03/31)
「就寝中のスクリーン使用」により、59%も不眠のリスクが上昇

この研究では、ベッドでのスクリーン使用が、そうでない場合と比べて不眠症状を経験するリスクを59%高めることが明らかになりました。
また、スクリーンを使用する学生は、平均して1晩あたり24分間も睡眠時間が短いという結果も示唆されています。
この調査は、「Students’ Health and Well-being Study 2022」という全国規模の健康と生活習慣に関する研究の一環として実施されたもので、18歳から28歳の大学生を対象とし、睡眠習慣やスクリーンの使用時間、使用内容などを詳細に記録・分析したものです。
これまでの研究では、特にティーンエイジャーに焦点が当てられてきましたが、本研究は大学生や若年成人層を対象としている点が特徴的です。
彼らのライフスタイルは多忙であり、勉強やアルバイト、交友関係などに追われる中で、就寝前のスクリーン使用が日常化している実態が浮かび上がっています。
SNS、動画、ゲーム…「何を見ているか」より「どれだけ見ているか」が鍵
注目すべきは、使用しているスクリーンの内容よりも使用時間の長さが、より大きく不眠に関与しているという点です。
研究では、被験者がベッドでどのような電子メディアを使用しているかを自己申告する形で収集しました。
以下のようなメディア利用が調査対象とされました。
How and when screens are used: comparing different screen activities and sleep in Norwegian university studentsより • 映画やテレビ番組の視聴
• SNSの利用(Instagram、TikTok、Facebook など)
• インターネット検索やウェブブラウジング
• 音楽やポッドキャストなど音声コンテンツの聴取
• ゲームプレイ
• 勉強や学術的な読書
これらの活動はさらに、「SNSのみ」「SNS以外」「SNS+その他の活動」の3つのカテゴリに分類され、分析が行われました。
その結果、SNS利用は特に強く不眠と結びつくわけではなく、他の活動と有意な差は見られなかったことが判明しました。
つまり、何をしているかよりも、どれだけ長くスクリーンを見ているかが不眠を引き起こす主な要因だというのです。
Hjetland氏はこの点について、「私たちのデータからは、SNSやその他のスクリーン活動の種類によって睡眠への影響が大きく異なるという結果は得られなかった。むしろ、ベッドでの総合的なスクリーン時間が睡眠障害に最も関連しているようだ」と述べています。

「眠れないからスクリーンを見る」のか、「スクリーンを見るから眠れない」のか?
研究の中では、被験者が入眠までにかかる時間、中途覚醒の頻度、日中の眠気、睡眠障害の継続期間など、多岐にわたる項目が分析されました。
その中で、ベッドの中でスクリーンを見る時間が長いほど、睡眠に関する悩みを抱える傾向が強いことが分かりました。
ただし、本研究は相関関係の分析であり、因果関係を直接的に示すものではありません。
そのため、以下のような逆の解釈も可能です。
• すでに不眠傾向にある学生が、眠れない時間を埋めるためにスマホを使っている
• SNSよりも、映画や音楽などのリラックスできるコンテンツを選ぶ人は、比較的睡眠の質が良い
• SNSを好まない学生ほど、睡眠に悩みを抱えている可能性もある
研究チームも、「不眠に悩む学生は、感情的刺激の強いSNSよりも、リラックスしやすい映画視聴や音楽鑑賞を選ぶ傾向があるかもしれない」と指摘しており、今後はより詳細な質的調査が必要とされています。
通知オフ・使用制限が睡眠改善のカギに
では、実際にスクリーン使用と不眠の関係が疑われる場合、どのような対策が有効なのでしょうか。
Hjetland氏は、「もしもスクリーン使用が睡眠に影響していると感じているなら、就寝の30分から1時間前には使用を控えることをお勧めします」と述べています。
また、「夜間の通知はオフにして、睡眠中にスマホが干渉しないようにすることも非常に効果的です」とアドバイスしています。
さらに、ブルーライトカットの設定や、リラックス系のコンテンツへの切り替え、ベッドを“眠る場所”として限定的に使うことなども、生活習慣の改善につながると考えられています。
まとめ
・ベッドでのスクリーン使用は、不眠のリスクを59%も高め、睡眠時間を24分短縮させる傾向が確認された
・SNS、動画、ゲームなど使用コンテンツの違いよりも、使用時間の長さが睡眠への影響を左右していることが明らかになった
・睡眠に悩んでいる場合は、就寝30〜60分前にスクリーンを手放し、通知をオフにするなどの対策が有効とされる
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