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空腹時にコーヒーを飲むのは体に悪いのか?——専門家による意見

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朝の目覚めとともに、最初に手に取るのがコーヒーカップという方は少なくないでしょう。

 

カフェインの香りと温かさが一日の始まりを告げ、眠気を吹き飛ばしてくれるあの感覚は、多くの人にとって欠かせないものです。

   

しかし、「空腹時にコーヒーを飲むと健康に悪い」という声もあります。

 

某有名動画サイトやSNSでも同様の主張は多く、「朝食の前にコーヒーを飲んでも大丈夫なのか?」と疑問に思う人も多いと思います。

では、実際のところ、空腹でコーヒーを飲むことは本当に体に悪影響を与えるのでしょうか?

  

この疑問に対し、複数の医師や栄養の専門家は「ほとんどの人にとって、空腹時にコーヒーを飲むことは健康上の問題を引き起こさない」という見解を示しています。

 

今回のテーマは、そんな空腹時にコーヒーを飲むことに対する専門家の意見についてです。

 
参考記事)

Is It Bad to Drink Coffee on an Empty Stomach? Here’s What Experts Want You to Know(2024/01/10)

 

  

空腹時のコーヒーが「危険」という主張は本当か?

 

コロラド大学Anschutz Medical Campusの栄養科学者Bonnie Jortberg氏は、「空腹時にコーヒーを飲むことが危険だというのは、ほとんどの場合において誤解だ」と話します。

  

「一部の人には胃酸の増加といった軽い影響があるかもしれないが、それが深刻な健康リスクにつながるわけではない。健康な人であれば、空腹でコーヒーを飲んでも特に問題はないはずである」と、Jortberg氏は述べています。

  

また、Tufts Medical Centerの胃腸病専門医であるHarmony Allison医師も同様の見解を示しており、「体質によっては不快感を覚える方もいるが、それは危険というより“合わない”というレベルの話だ」と説明しています。

  

では、コーヒーが体に与える具体的な影響について見ていきます。

 

  

コーヒーが体に与える影響

 

コーヒーにはカフェインが多く含まれており、これが覚醒作用を生み出す要因です。

  

しかし、このカフェインこそが、一部の人にとっては胃腸への刺激物となる可能性があります

  

Allison医師は、「カフェインには下部食道括約筋(食道と胃の境界部分)を一時的に緩める働きがある」と指摘します。

  

これにより、胃酸が食道へと逆流しやすくなり、いわゆる胸やけや胃もたれといった症状が出ることがあるのです。

  

また、Jortberg博士は、「コーヒー自体にも胃酸分泌を促進する作用があるため、これが不快感の原因となることもあります」と説明しています。

 

さらに、コーヒーは約pH5とやや酸性であり、空腹時の胃(通常はpH4前後)にさらに酸性度を加えることになります。

 

Allison医師によると、「胃がからっぽの状態で酸性の飲み物を摂取すると、胃酸濃度が高まり、胃や食道の粘膜に刺激を与えることがある」とのことです。

  

  

それでも大多数の人にとっては「安全」 

このように、体質によっては一時的な不快感が出る場合があるとはいえ、「空腹時のコーヒーが深刻な健康リスクになる」という明確な科学的根拠は存在していません

  

事実、2014年に発表された大規模なメタ分析においても、コーヒーの摂取と胃食道逆流症(GERD)の関連性は見つかっていませんでした。(Association between coffee intake and gastroesophageal reflux disease: a meta-analysisより

  

また、かつて囁かれていた「コーヒーが胃潰瘍の原因になる」という説についても、Jortberg博士をはじめとする複数の専門家が否定しています。

  

コーヒーが胃を傷つけるというのは、ほとんどの場合“都市伝説”にすぎない。おそらく99%の人にとっては、空腹であろうとなかろうと、朝の一杯は全く問題ないだろう」と、Jortberg博士は強調します。

  

  

不快感がある人はどうすればいい? 

 

それでも、コーヒーを飲むと毎回不快感がある、あるいは体調が崩れるという方には、いくつかの実用的な対策があります。

  

まず第一に、軽くでも何か食べてからコーヒーを飲むことで、胃の刺激を抑えることができます。 

  

ミルクやクリームを加えると、コーヒーの酸性度が下がり、胃への刺激が和らぐことがありますが、日本人は乳糖不耐症であることが多いため、逆に胃の調子が悪くなる可能性があるためオススメしません。

  

もう一つ注目すべき点は、コーヒーの焙煎度によって胃への影響が異なる可能性があることです。

 

Jortberg博士は、「ダークローストの方がライトローストよりも胃酸の刺激が少ない」という研究結果の例を出して説明しています。(A dark brown roast coffee blend is less effective at stimulating gastric acid secretion in healthy volunteers compared to a medium roast market blendより

  

加えて、カフェインによる「手の震え」や「焦燥感」などの副作用が強く出る人は、摂取量を減らすか、カフェインレスのコーヒーに切り替えることで症状が軽減することがあります

 

  

安全なカフェイン摂取量とは? 

どれだけ体に合っていても、摂りすぎには注意が必要です。

  

米国食品医薬品局(FDA)によれば、1日あたりのカフェイン摂取量は400mgまでが推奨されています。これは、コーヒーカップならおよそ3〜4杯程度に相当します。

  

Effects of Coffee and Its Components on the Gastrointestinal Tract and the Brain–Gut Axisを参考に作成

   

Allison医師は、「カフェインは集中力を高める効果がある一方で、過剰摂取は不安感や睡眠障害、動悸などの副作用を引き起こすことがある」と飲み過ぎることに対して警告しています。

   

こうした専門家の意見や研究結果を総合すると、空腹時にコーヒーを飲むことは、健康な人にとっては特に心配する必要のない習慣であると言えます。

  

とはいえ、人によって感受性は異なるため、「自分の体と相談しながら」コーヒーとの付き合い方を考えるのが大切です。

  

   

まとめ

・空腹時のコーヒー摂取は、ほとんどの人にとって健康上の問題を引き起こさないと考えられている

・胃の不快感や酸逆流がある場合は、食事のタイミングに合わせて飲む、焙煎度を見直すなどの対策が有効

・カフェインの摂取は1日400mg以下に抑えることが推奨されており、自分の体質に応じて調整することが重要  

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