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科学が示す「コーヒーメーカーよりもドリップコーヒーが良い」理由

科学

コーヒーは多くの人にとって日常的な飲み物ですが、その抽出方法によって、血中のコレステロール値に影響を与える可能性があることが分かってきました。

 

特にコーヒーマシンを使用する場合が、悪玉コレステロール(LDL)を増加させる成分を多く含むことが、ウプサラ大学らによる新たな研究で明らかになってきました。

 

今回のテーマはコーヒーの淹れ方とコレステロールによる健康リスクの違いについてです。

 

参考研究)

Cafestol and kahweol concentrations in workplace machine coffee compared with conventional brewing methods(2025/02/20)

  

 

コーヒー・ジテルペンとコレステロール上昇との関係

 

スウェーデンのウプサラ大学とチャルマース工科大学の研究チームは、14種類のコーヒーマシンやさまざまな抽出方法で淹れたコーヒーの成分を分析しました。

 

その結果、全自動コーヒーマシンや液体濃縮コーヒーを使用したコーヒーは、ドリップコーヒーよりもコレステロールを上昇させる成分(ジテルペン類)を多く含むことが判明しました。

 

コーヒーに含まれるカフェストール(Cafestol)とカーウェオール(Kahweol)という成分は、ジテルペン類と呼ばれる植物由来の化合物です、コーヒー・ジテルペンとも呼ばれています。

 

カーウェオールの成分がOCL(骨芽細胞様細胞)の分化を抑制に繋がることで、骨の形成に有益な効果があることで研究で示唆されています。(The Coffee Diterpene Kahweol Prevents Osteoclastogenesis via Impairment of NFATc1 Expression and Blocking of Erk Phosphorylationより

  

一方、これらの成分は肝臓のコレステロール代謝に影響を与え、LDL(悪玉)コレステロールを増加させることが知られています。

  

LDLコレステロールが高いと、動脈硬化のリスクが上昇し、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)を引き起こす可能性があります。

  

そのため、コーヒーの抽出方法を見直すことで、長期的な健康リスクを軽減できる可能性があるのです。

  

  

研究の概要と分析方法

研究チームは、以下の方法で淹れたコーヒーを比較し、それぞれのカフェストールとカーウェオールの含有量を測定しました。

  

1. コーヒーマシンの種類

• 全自動コーヒーマシン(オフィスで一般的)

 挽いたコーヒー粉にお湯を通し、金属フィルターで抽出

• 液体濃縮コーヒーを使用するマシン

• 事前に抽出された液体コーヒーを、お湯で薄める方式

  

2. 手動の抽出方法

• ペーパーフィルターを使ったドリップコーヒー(一般的な家庭やカフェ)

• フレンチプレス(フィルターなしの浸漬式)

• エスプレッソ(高圧抽出)

• パーコレーター(循環抽出)

• 煮沸コーヒー(スウェーデンなどで一般的な伝統的な方法)

  

研究では、これらのコーヒーサンプルを採取し、冷凍保存した後に分析を実施しました。

  

分析の結果は以下の表の通りです。

  

この結果から、ペーパーフィルターを使用したドリップコーヒーが最も安全で、煮沸コーヒーやエスプレッソが最も危険であることがわかります。

  

  

ドリップコーヒーがオススメ

  

研究チームは、日常的にコーヒーを飲む人が、全自動コーヒーマシンからドリップコーヒーに切り替えることで、LDLコレステロールを低下させ、心血管疾患のリスクを軽減できる可能性を示しました。

  

これに加え、過去の研究では、1日3杯、週5日ペーパーフィルターのコーヒーを飲むと、5年間で動脈硬化性心血管疾患の相対リスクを13%減少40年間で36%減少すると示唆されています。

Habitual Coffee, Tea, and Caffeine Consumption, Circulating Metabolites, and the Risk of Cardiometabolic Multimorbidityより

  

毎日コーヒーマシンを使う場合でも、布やペーパーフィルターを追加すれば成分を減らせることも示されており、コーヒー・ジテルペンの多い煮沸コーヒーを布でろ過することでも、カフェストール含有量が940 mg/Lから28 mg/Lに激減したことが確認されています。

   

  

結論と今後の課題 

この研究は、コーヒーの抽出方法が健康に及ぼす影響を明らかにする重要な知見を提供しました。

   

しかし、サンプル数が少ないことや、豆の焙煎方法や水温、フィルターの目の細かさなどの影響が考慮されていないなどの限界もあります。

  

それでも、「職場のコーヒーはペーパーフィルターを使ったものにすることで、健康リスクを軽減できる」という結論は、コーヒーを日常的に飲む人々にとって重要な情報でしょう。

 

もし全自動のコーヒーに頼りきっている方の場合、たまには自分でドリップしたコーヒーを楽しんでみるのも良いかと思います。

  

 

まとめ

・コーヒーの抽出方法によって、コレステロールに影響を与えるジテルペン類の含有量が大きく異なる

・全自動コーヒーマシンのコーヒーは、ペーパーフィルターを使用しないため、カフェストールとカーウェオールが多く含まれる

・ペーパーフィルターを使うことで、LDLコレステロール上昇を抑え、心血管疾患リスクを軽減できる可能性がある。

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