近年、睡眠と認知機能の関係が注目されています。
特に、短時間の昼寝が脳のパフォーマンスに与える影響について、多くの研究が行われており、仕事や勉強の途中に脳を休めることで、やるべきことの効率化が図れることが分かってきました。
そんな中、テキサス州立大学による研究から「昼寝が問題解決能力を向上させる」という興味深い結果が示されました。
この研究では、レム睡眠(REM: Rapid Eye Movement)が特に重要であることが強調されています。
レム睡眠とは、夢を見る睡眠段階であり、記憶の定着や感情の処理に関与すると考えられています。
研究結果によると、レム睡眠を含む昼寝を取ることで、脳が過去の経験をより効果的に活用し、問題解決能力が向上する可能性が示唆されています。
今回のテーマとして以下にまとめていきます。
参考記事)
・Afternoon Naps Boost Your Problem-Solving, Study Finds(2025/02/17)
参考研究)
・An afternoon nap facilitates analogical transfer in creative problem solving(2024/11/27)
研究の背景

冒頭でも述べた通り、睡眠が脳の働きに重要な役割を果たしていることはこれまでの研究でも明らかになっています。
特に、記憶の定着、学習能力の向上、感情の安定などにおいて、質の良い睡眠が不可欠であることが示されています。
過去の研究では、次のようなことが分かっています。
• ノンレム睡眠(NREM)は、情報の整理や長期記憶の形成に重要である
• レム睡眠(REM)は、創造的な思考や問題解決能力の向上に関与する
• 昼寝を取ることで、短期的な認知機能の改善が期待できる
しかし、昼寝が具体的にどのように問題解決能力に影響を与えるのかについては、これまで十分に解明されていませんでした。
今回の研究は、その点に焦点を当てた重要なものとなっています。
研究の方法
研究では、58人の参加者を対象に、昼寝と問題解決能力の関係が調査されました。
【実験の流れ】
1. まず、参加者に一連の問題を提示し、その解答を示しました。
2. 次に、類似した問題の新しいセットを提示しましたが、今度は解答が示されませんでした。
(ただし、最初のセットと同じ方法を使えば解けるように設計されていました。)
3. その後、2時間の休憩を設け、28人の参加者は110分間の昼寝を取り、残りの30人は起きたまま過ごしました。
4. 昼寝を取ったグループのレム睡眠時間は、EEG(脳波測定)ヘッドセットを用いて記録されました。
5. 休憩後、すべての参加者に、以前に解けなかった問題を再挑戦させました。
実験の結果
• 昼寝を取ったグループの方が、以前解けなかった問題を解決できる割合が高いことが明らかになった。
• レム睡眠の時間が長いほど、問題解決能力が向上する傾向が見られた。
• 昼寝を取ったグループは、1回目と2回目の問題セットの類似点をより正確に認識することができた。


特に、昼寝前と昼寝後で、問題解決能力の差が顕著に現れた点が重要です。
これは、レム睡眠が新しい記憶と過去の記憶を結びつける働きを持ち、問題解決に役立っている可能性を示しています。
研究者たちは、次のように述べています。
「この結果は、睡眠が一度は解けなかった問題の解決能力を向上させることを示している。特に、レム睡眠は、類推による解決方法を強化し、以前は気づかなかった共通点を浮かび上がらせる役割を果たしている可能性がある。」
実生活への応用
この研究結果は、日常生活や仕事においても応用できる可能性があります。
特に、短時間の昼寝を取ることで、認知機能や問題解決能力が向上することが示唆されています。
では、どのように昼寝を取り入れるのが理想的なのでしょうか?
【効果的な昼寝のポイント】
1. 時間は90~110分が理想
• 今回の研究では110分の昼寝が実施されましたが、一般的には90分程度の昼寝がレム睡眠を含む最適な長さとされています。
2. 環境を整える
• 静かで暗い場所で昼寝をすると、より質の高い睡眠を得られます。
3. 昼寝後は軽い運動を
• 昼寝後に軽くストレッチやウォーキングをすると、すっきりと目覚めることができます。
まとめ
・昼寝を取ると、特にレム睡眠を含む場合に、問題解決能力が向上することが明らかになった
・昼寝を取ったグループは、以前解けなかった問題を再挑戦した際に、より高い成功率を示した
・レム睡眠は、新しい記憶と古い記憶を結びつけることで、問題解決のヒントを引き出す役割を果たしている可能性がある
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