科学

野菜ジュースだけの食事が腸と口内環境に及ぼす影響とは

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ジュースクレンズ」とは、果物や野菜をジュースにして数日間摂取し、固形物を控える食事スタイルです。

 

減量や消化器官を休める果が期待され、セレブやインフルエンサーの影響もあり人気を集めています。

 

しかし、最新の研究によると、このジュースクレンズが腸内環境や口腔内の細菌バランスに悪影響を及ぼす可能性があることが明らかになりました。

 

炎症を引き起こす細菌の増加や、腸内の有益な細菌の減少が確認され、従来の健康効果への期待に疑問が投げかけられています。

 

果たして、ジュースクレンズは本当に健康に良いのでしょうか。

 

最新の研究結果をもとに解説します。

 

参考記事)

New Research Shows How Juice Cleanses Could Actually Affect Your Gut and Mouth—And the News Isn’t Great(2025/02/04)

 

参考研究)

Effects of Vegetable and Fruit Juicing on Gut and Oral Microbiome Composition(2025/02/04) 

 

ジュースが腸内細菌に及ぼす影響 

 

果物や野菜をジュースにして摂取することは、健康に良いと考えられがちです。

 

しかし、最新の研究はその考えに疑問を投げかけています。

 

2025年1月に『Nutrients』誌に発表された研究では、3日間のジュースクレンズを行った人々は、植物ベースの食事を摂取した人々よりも口腔内および腸内の炎症マーカーが高かったことが示されました。

 

この研究以前から、多くの専門家は「ジュースがデトックスや減量に役立つ」という期待が、実際の健康効果を超えてしまっていると警鐘を鳴らしていました。

 

また、ジュースの人気は科学的根拠よりも、社会的影響に依存していると指摘する専門家もおり、ベイラー医科大学のLisa Froechtenigt博士 は、「アメリカではダイエット文化がジュースの人気を大きく後押ししており、有名人やソーシャルメディア、さらには家族や友人の影響を受けやすい」と述べています。

 

 

ジュースの摂取が腸内環境に及ぼす影響とは? 

口腔内および腸内の細菌群は、健康にさまざまな影響を与えることが知られています。

 

• 口腔内の細菌群

アルツハイマー病、肥満、自己免疫疾患などと関連があるとされている

How the Oral Microbiome is Connected to Overall Human Healthより

 

• 腸内細菌

上記の病気や疾患に加えて精神的健康、がん、糖尿病、神経疾患などにも関連があるとされている

Microbiota in health and diseasesより) 

 

このため、ジュースが腸内環境に及ぼす影響を研究することは非常に重要です。

 

2022年の研究では、3日間のジュースのみの断食を行ったグループは腸内細菌の多様性が低下したものの、ジュースに食物繊維を加えたグループで細菌の多様性が増加したことが分かりました。(サンプル数が少ないので参考として)

 

Assessment of the Gut Microbiota during Juice Fasting with and without Inulin Supplementation: A Feasibility Study in Healthy Volunteersより

 

過去の結果を踏まえ、2025年の研究(本研究)ではより詳細な実験が行われました。

 

• 18歳から35歳の成人14人を以下の3つのグループに分けました。

1. ジュースのみを摂取

2. ジュース+食事を自由に摂取

3. ジュースと同じカロリーの植物ベースの食事

 

それぞれの食事の3日にわたり、食事前・食事中・食事後に唾液、頬の粘膜、便のサンプルを採取し、細菌のDNA解析を行いました。

 

その結果、ジュースのみのグループでは、炎症や腸内トラブルに関連する細菌が最も多く増加したことが判明しました。

 

  

頬の粘膜の粘膜からの得られた細菌の比較 Effects of Vegetable and Fruit Juicing on Gut and Oral Microbiome Compositionより

(その他唾液や便を採取した結果は論文にて)

 

一方で、植物ベースの食事を摂取したグループでは、腸の健康を改善し、炎症を抑える細菌が増加したことが分かりました。

 

 

ジュースが腸内環境に悪影響を与える理由

野菜や果物を摂取する際、食物繊維があるかどうかは大きな問題となります。

 

ジュースにすると食物繊維の約90%が失われる一方、糖分はそのまま残るため、ジュースの糖質比率が高くなることになります。

 

Lisa Froechtenigt博士は、「食物繊維は抗炎症物質(ブチレートなど)を生成する有益な細菌のエサとなる」としており、低繊維&高糖質の組み合わせが、腸内細菌に悪影響を及ぼしている可能性があることを指摘しています。

 

また、食物繊維が不足すると、炎症を引き起こす糖質を好む細菌が増殖しやすくなることもわかっています。

 

さらに、ジュースのみのグループを観察した限りにおいては、急激な食生活の変化が腸内環境を乱す原因となる可能性も指摘されているため、炭水化物、タンパク質、脂質(食物繊維を含む)をバランスよく摂取する必要があることが示唆れる結果となりました。

 

 

ジュースは飲むべき?避けるべき?

 

果物や野菜を健康的に摂取したいと考えているなら、ジュースは良い選択肢ではありません。

 

栄養素を無駄にしないためにスムージーにする場合もありますが、フルーツの甘さの主成分である果糖は血糖値を上げにくく、満腹感を得にくいことによる果糖の過剰摂取にも繋がります。

 

近年の甘さを求める消費者の増加にともない、果物に関しては甘さに特化した品種改良がなされています。

 

本来果物が持つ食物繊維の効果や抗酸化作用よりも、果糖の摂取による害(脂肪肝など)が懸念されるという問題点もあります。

 

そのため、果物や野菜は食事の代替ではなく、補助的なものとして取り入れるのがベストとしています。

 

 

まとめ 

・ジュースクレンズは腸内・口腔内の炎症性細菌を増やす可能性がある

・ジュースにすると食物繊維が失われ、糖質が高くなることで腸内環境が乱れやすくなる

・ジュースはバランスの取れた食事の代わりにはならず、食事と組み合わせて摂取するのが理想的

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