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「良い老化」に必要な睡眠時間とは?

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忙しなく過ごす日々の中で、睡眠を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。

 

同時に、睡眠が不足することで、頭がぼーっとしたり日中に眠気が襲ってきたりと、日々のパフォーマンスに悪い影響を与えることを身をもって感じている方もいるでしょう。

 

睡眠をしっかり重ねることは、明日、明後日の健康だけでなく、老後への生活についても影響があると言われています。

 

今回はそんな、睡眠と老化に関係した研究についてのまとめです。

 

どうやら、夜に7時間以上の睡眠を確保することが、長く健康的に歳を重ねるためにとても重要な要素だそうです。

 

参考記事)

Scientists Reveal How Much Sleep You Need For ‘Successful Aging’(2024/11/08)

 

参考研究)

The brain structure and genetic mechanisms underlying the nonlinear association between sleep duration, cognition and mental health(2022/04/28)

 

 

「良い老化」の定義と睡眠

 

中国の温州医科大学のチームは、45歳以上の3,306人を対象に、彼らの睡眠習慣と健康状態の関係を詳しく調査しました。

 

参加者たちの睡眠習慣は、2011年、2013年、2015年の3回にわたって記録され、その後、5年後の2020年に健康状態が評価されました。

 

研究の結果、毎晩7時間以上の睡眠を確保することが、老後の健康を保つ上で大きな効果があることが示唆されました。

 

 

「良い老化」の定義

この研究では、以下の5つの条件が揃っている場合に「良い老化」と定義されました

 

1. 主要な慢性疾患がないこと – 高血圧や糖尿病、心臓病などの重篤な病気がないこと

2. 身体的な障害がないこと – 日常生活を独立して送ることができ、移動や活動に支障がないこと

3. 高い認知機能を持っていること – 記憶力や集中力、判断力などの認知機能がしっかりしていること

4. 良好な精神的健康を保っていること – 不安やうつ病などの精神的な問題がなく、心の健康が保たれていること

5. 積極的な社会的活動に参加していること – 友人や家族と交流し、社会的に活発であること

 

これらの条件をすべて満たしている場合、研究チームはその人が「成功した老化」を遂げていると見なしました。

 

 

5つの睡眠パターンに基づくグループ分け

縦軸=睡眠時間(時間)、横軸=睡眠の状態の変化(年)

 

研究対象者たちは、睡眠時間のパターンに基づいて5つのグループに分けられました。

 

1. 長時間安定グループ – 一貫して8〜9時間の睡眠をとっている(黒)

2. 標準安定グループ – 一貫して7〜8時間の睡眠をとっている(緑)

3. 減少グループ – 睡眠時間が平均8時間以上から6時間未満に減少した(青)

4. 増加グループ – 睡眠時間が平均6時間未満から8時間以上に増加した(橙)

5. 短時間安定グループ – 一貫して5〜6時間の睡眠をとっている(赤)

 

研究の最終段階である2020年には、対象者のうち455人(13.8%)が「良い老化」のすべての基準を満たしていました。

 

そのうち307人、つまり約3分の2は、一貫して毎晩7時間以上の睡眠を確保していたグループに属していました。

 
  

睡眠時間と成功した老化の関係 

 

興味深いことに、「良い老化」を達成する確率は、睡眠時間が安定している人々においてより高くなることが確認されました。

 

具体的には、長時間安定グループ(17.1%)と標準安定グループ(18.1%)が、他のグループよりも「良い老化」の割合が高く、減少グループ(9.9%)、増加グループ(10.6%)、短時間安定グループ(8.8%)よりも顕著な違いが見られました。

 

さらに、研究チームは「標準安定」グループと比較した場合、短時間安定グループ増加グループに属する人々は、それぞれ「良い老化」を達成する確率が36%および52%低いことを示しました。

 

なお、減少グループも成功率が低下していましたが、サンプルサイズが限られていたため、統計的には有意な結果とは言えませんでした。

 

 

睡眠がもたらす老後の健康への影響 

この研究の結果から、安定した十分な睡眠が健康的な老化に大きな役割を果たすことが示唆されていますが、今回の研究だけで因果関係が明確に証明されたわけではありません。

 

チームは、体重、アルコール摂取、性別などの変数も考慮に入れて解析を行いましたが、関連性が確認された程度に留まります。

 

とはいえ、この結果は安定した長時間の睡眠の重要性を示す新たな証拠として位置づけられています。

 

過去の研究でも、7時間の睡眠が健康的な老化に理想的な時間であるとされており、睡眠が心身の健康を保護する役割を果たすことが広く認識されています。

 

今回の研究が実施された中国は、世界でも最も高齢化が進む国の一つであり、高齢化に伴う健康問題の対策が急務となっています。

 

この研究の結果は中国だけでなく、世界中で重要な課題となっている健康的な高齢化に対する示唆となるものです。

 

安定して7時間以上の睡眠をとることは、健康的で長寿を目指す上で重要なポイントであり、睡眠時間が短かったり増減が激しかったりすることが老化に悪影響を与える可能性があることが示唆されました。

 

これらの結果を受け研究チームは、「慢性的な睡眠不足や睡眠時間の変動が単なる年齢による変化ではなく、健康的な老化を妨げる重要な要素であることを強調している」と述べています。

  

  

まとめ 

・7時間以上の安定した睡眠が「良い老化」に寄与し、老後の健康維持に大きな効果が期待される

・安定した睡眠パターンを保つことが、老後の健康を左右する要因の一つとして示唆されている

・睡眠時間の増減や短縮は、健康的な老化を妨げる可能性があると考えられている

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