近年、アルコールが健康に与える影響についての認識が改めて問われつつあります。
かつては「適度な飲酒は健康に良い」と言われていましたが、ヴィクトリア大学のメタ分析によると、「少量であっても健康を害する」ことが示されています。
最近では、特にがんとの関係についてはより明確になってきており、アメリカ癌研究協会(AACR)が発表した報告では、アルコール消費が頭頸部がん、食道がん、肝臓がん、乳がん、大腸がん、胃がんの6種類のがんに関連していることが示されました。
この報告は、アルコールが単なる「無害な嗜好品」ではない可能性を指摘し、社会全体でアルコール消費に対する認識を改める必要性を提言しています。
以下にまとめていきます。
参考記事)
・New Report Links Alcohol to Six Major Cancer Types(2024/10/03)
・AACR Cancer Progress Report Highlights Innovative Research, Novel Treatments, and Powerful Patient Stories(2024/09/18)
参考研究)
・AACR Cancer Progress Report 2024: Congressional Briefing(動画:癌進捗レポート2024より)
アルコールと6種類の主要な癌の関連性
AACRのレポートによると、飲酒は以下の6種類の癌と関連していることが示されました。
• 頭頸部癌
• 食道癌
• 肝臓癌
• 乳癌
• 大腸癌
• 胃癌
2019年、西洋諸国では癌の診断のうち20人に1人以上が飲酒に起因していました。
この数字は時間と共に増加し、アルコールの消費との関連性が指摘されています。
また、若年層における特定の癌の発生率が上昇しているという懸念すべき傾向も指摘されています。
特に注目すべきは、50歳未満の成人における大腸癌の早期発症率が増加していることです。
大腸癌については、加工食品に含まれる化学物質や普段摂取している食べ物などが複雑に関係し合っているため一概には言えませんが、飲酒も大腸癌の危険性を高める生活習慣の一つと考えられます。
アルコールがDNAに与える影響
アルコールを摂取すると、体内でアセトアルデヒドに分解されます。
これは細胞のDNAに損傷を与え、変異を引き起こす可能性があり、これが癌の原因となります。
また、アルコールは栄養やビタミンの吸収を妨げ、ホルモンのレベルを変化させるなど、さまざまな方法で体に影響を与えます。
喫煙や遺伝的要因も、アルコールによる癌のリスクを高める要因となります。
運動不足や肥満は、アルコールを過剰に摂取する場合、それぞれ独自に癌のリスクを増大させる要因です。
アルコール飲料の種類にかかわらず、癌リスクを引き起こすのはエタノール(アルコールの化学名)そのものです。
一部の研究では、“赤ワインが特定の病気に対して保護(予防)効果がある”とされていますが、癌予防に効果があるという明確な証拠はありません。
適度な摂取
アルコールが癌のリスクを高めるからといって、必ずしも全ての飲酒者が癌になるわけではありません。
多くの要因が癌の発生に関与しています。重要なのは、リスクを理解し、自分の健康目標に沿った選択をすることです。
最近の研究によると、アルコール消費量が多いほど、全ての原因による死亡リスクが高まることも示されています。
このような結果は、アルコール消費に関連する潜在的なリスクについての公衆の意識と教育の重要性を強調しています。
アルコールと癌の関係についての理解が深まるにつれ、アルコールが健康に与える影響はこれまで考えられていた以上に重大であることが明らかになってきています。
アメリカでは、アルコールが癌リスクを高めることを知っている人は約半数しかいないという現状もあります。
この認識不足を解消するために、まだまだ多くの取り組みが必要です。
まとめ
・アルコールの消費は頭頸部癌、食道癌、肝臓癌、乳癌、大腸癌、胃癌の6種類の癌と関連しているとされている
・アルコールは体内で分解されるとDNAに損傷を与え、変異を引き起こす可能性があり、これが癌の原因になることがあるため、摂取量が多いほどリスクが高まる
・多くの人がアルコールの癌リスクを認識しておらず、リスクを減らすためには適度な飲酒などの認識向上が重要
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