心理学歴史

【歴史を変えた心理学⑮】スキナーの徹底的行動主義

心理学

【前回記事】

 

この記事では、著書“図鑑心理学”と自分が学んできた内容を参考に、歴史に影響を与えた心理学についてまとめていきます。

 

心理学が生まれる以前、心や精神とはどのようなものだったのかに始まり、近代の心理学までをテーマとして、本書から興味深かった内容を取り上げていきます。

  

今回のテーマは、「スキナーの徹底的行動主義」についてです。

 

 

スキナーの徹底行動主義

バラス・フレデリック・スキナー(1904~1990年)

 

前回記事にて紹介したバラス・スキナー

 

彼が行った研究は、それまで心理学において重要とされていた、“心や人格”などを排除しており、過去数十年における心理学の理論的研究を揺るがすものでした。

 

1940年代が終わりに近づいた頃、哲学者、心理学者、神経科学者らは、一つの合意を得ようとしました。

 

彼らはいずれも、人間の心や心に起因する身体への反応に関心を持っていました。

 

それぞれ別のやり方で研究していたにもかかわらず、彼ら共通の認識として、「能力や心をもつ人間においては、個人の脳が思考と感情を支配している」という考え方がありました。

 

この考え方に反論していた研究者の代表が、B. F. スキナーやギルバート・ライルです。

 

ギルバー ト・ライル(1900~1976年)

 

イギリスの哲学者ギルバー ト・ライルは、1949年に「心の概念(The Concept of Mind)」を発表した後、17、18世紀頃のデカルト時代の哲学者の考えに批判的な主張を行っています。

 

二元論者のデカルトは、心と身体は別物と考えており、心は身体を支配する(移動や会話などを行わせる)特別なものだと考えました。

 

ライルは、こうした二元論者の心のとらえ方を “機械の中の幽霊”と呼びました。

 

自然が複雑な機械であり、人間の本性が小さな機械だとすると、人間に知能や自発性があることが説明がつかない。この小さな機械の中に幽霊がいると考えなければならない」と述べました。

 

彼は、心と身体(機械)は同じくくりで議論することはできないとし、心について誤った理解がされてきたとしています。

 

B. F. スキナーの研究は、こうした哲学的な心の問題に対して科学的な証拠を示そうとしました。

 

その一つが、オペラント実験箱(スキナー箱)です。

 

スキナー箱(レバーを押すと給餌装置から餌が出てくる仕掛けになっている)

 

一匹の動物(ハトがよく用いられました)が箱の中に入れられ、決められた行動をとると報酬のエサが与えられたり、電気ショックによる罰を受けたりして訓練を受ける仕掛けになっています。

 

スキナーは、パヴロフの条件づけが、実際は“強化”によってもたらされることを示しました。

 

スキナーが唱えたこの“強化理論”は、「自由意志は幻想であり、人間の行動は過去の行動結果に依存する」というものです。

 

簡単に言うと、“過去の行動結果が悪いものだったなら、その行動は繰り返されない確率が高く、良い結果だったなら、繰り返し行われるだろう”といった考が根底にあります。

 

オペラント実験箱においても、刺激に対する反応がエサのような肯定的な何かである場合、動物は同じ報酬を得ようと何度も反応を繰り返すようになります。

 

この正の強化は、条件づけ以前の原動力であり、学習された行動の獲得と言えます。

 

これとは対照的に、実験箱の中で何らかの罰が与えられると、動物の反復行動が抑制され。

 

こういった負の強化は、動物に“二度とその行動をしてはいけない”ということを教えたことを示しています。

 

 厳密には、負の強化と罰は異なります。

 

負の強化は、何らかの嫌悪刺激や不快刺激が取り除かれることによって、特定の反応が増えることをいう。

 

それに対して罰は、嫌悪刺激などが与えられることによって特定の反応が減ることを指します。

 

スキナーは、強化された条件づけ(オペラント条件づけ)は、サルに与えた同じ課題をハトに教えるためにも使えることを示しました。

 

では、ハトはサルと同じくらいの知能をもっていると言えるのでしょうか。

 

スキナーはそうではないと考えました。

 

彼は、「あらゆる行動は、それ以前に経験した一連の行為によって決定される」と述べました。

 

人間の意識は見かけだけのもので、私たちの心は行為を制御しているという印象を与えているにすぎないことを示唆しました。

 

こういった考えからスキナーは、 認知や思考は脳がどのように行動を制御するかに関与しておらず、自由意思は幻想であるという考えを提唱しました。

 

私たちが行うあらゆる行為は、単にその結果であり、実験箱のハトと同様に、報酬を求め、喪失を回避するように無意識に行動しているだけであるというのです。

 

これが、スキナーが“徹底的行動主義”として知られている所以であり、彼自身が自らを“徹底的行動主義者”と呼ぶ理由なのです。

 

徹底的行動主義の考えに対抗する唯一の方法は、身体的なプロセスが、認知や記憶、知識、思考に関係していることを見出すしかありません。

 

人間が持つ情緒や情動、思考と行動の関係を解き明かすのは容易ではありません。

 

彼の徹底的行動主義に対する研究は今もなお続けられています。

 

 

まとめ

・スキナーは、それまで重要とされていた“心や人格”などを排除した心理学を研究した

・彼は、「自由意志は幻想であり、人間の行動は過去の行動結果に依存する」と主張した

・私たちが行う行為は、報酬を求め、喪失を回避するように無意識に行動しているだけなのである

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