科学

【研究】日本食と脳の健康との関連性(国立長寿科学研究センター)

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地中海食を中心とした食事スタイルが健康に良い影響を与えるということは、以前から取り上げてきました。

 

全粒粉の穀物だったりオリーブオイルや魚介類からなるタンパク質や質の良い油だったりと、体に必要な栄養素がバランス良く取り入れられ、脳の老化を遅らせるなどの効果もあるのではないかと考えられています。

 

さて、今回はのテーマはそんな地中海食ではなく、日本人に馴染み深い“和食”に関する研究です。

 

日本人も古くから山林から流れる綺麗な水や、それらを基準にした穀物や魚介など豊かな資源に囲まれた生活をしてきました。

 

さらに漬物や納豆などを代表とする発酵食品など、食においては豊かな文化を育んできた歴史があります。

 

そんな日本で盛んに食べられてきた食品たちが、人にどのような影響を与えるのか……。

 

以下にまとめていきます。

 

参考記事)

This Japanese Diet Is Linked to Less Brain Shinkage in Women, Experts Say(2024/04/09)

 

参考研究)

Associations of dietary patterns and longitudinal brain-volume change in Japanese community-dwelling adults: results from the national institute for longevity sciences-longitudinal study of aging(2024/03/12)

 

 

認知機能の低下予防と食事

 

認知機能の低下や認知症は、世界人口の高齢化に伴って5,500 万人以上の人々に影響を及ぼしています。

 

食事、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣は認知症のリスクの上昇に関連していることが分かっており、中でも食事が認知機能の低下予防においてどのような役割を果たすかについては長い間研究の焦点となってきました。

 

これまでの研究では、地中海食の利点について数多くの研究が調査されています。

 

地中海食は、脳の総体積皮質の厚さ白質の容積の増加など、健康な脳の重要な指標にプラスの影響を与えることが分かっています。

 

最近発表された国立長寿科学研究所の研究では、伝統的な日本の食生活に従うことが脳の健康にも有益である可能性があり、典型的な西洋の食事よりも良いことが示唆されました。

 

 

日本の伝統的な食事と認知能力の関連性

 

日本国民は長寿で有名な国です。

 

特に沖縄などの日本の南西部は百寿者(100歳まで生きる人)が異常に多く、この地域はブルーゾーン(非常に長生きする地域))として認定されています。

 

この地域に住む人々の長寿の秘訣は一体何なのか……、

 

研究者はこの謎を解き明かす鍵が、日本の伝統的な食生活のおかげではないかと考えています。

 

古くから日本人は、米、魚介類、果物(特に柑橘類)などを多く食べることが特徴とされています。

 

また、他国(西洋)の伝統食と比べて特筆すべき点は、赤身の肉やコーヒーの摂取量が少ないこと、海藻や緑茶、大豆、もやし、椎茸などのキノコ類の摂取量が多いこと、そして味噌や漬物などの発酵食品を頻繁に摂取していることです。

 

こういった日本食は、特定の目的(減量など)を達成するために設計された食事ではなく、多くの日本人が日常的に楽しんでいた文化的な習慣であることも研究者らは注目しています。

 

日本食と認知機能の関連性を調べた本研究では、40歳から89歳までの日本人成人1,636人を対象に、3日間の食事(飲料も含む)を全て記録するよう依頼しました。

 

各食事の前後には食べたメニューの写真を撮り、どれだけ食べたかを視覚的に記録しました。

 

記録された食事と写真から、各人の1日の平均食事摂取量を計算し、参加者の通常の食習慣の適切な基準値を定義しました。

 

記録に基づくと、参加者の589人が伝統的な日本の食生活に従っていました。

 

次の697人は白米やパンなどの精製された炭水化物、高脂肪食品、ソフトドリンク、アルコールの多量摂取など典型的な西洋食を食べていました。

 

最後の350人は、平均よりも多くの量の植物性食品 (穀物、野菜、果物) と乳製品を含む食事を摂取していました。

 

また、参加者は認知症の遺伝的(APOE遺伝子型)な要素があるか、喫煙の有無、運動の習慣、健康状態 (脳卒中や糖尿病など) の有無など、健康要因に関する情報も考慮されました。

 

これらの前提から2年間にわたって脳の萎縮または縮小 (ニューロンの喪失) の進行について検査を行い、加齢に伴う認知機能の低下なのか、病的な認知機能の低下なのかを分析しました。

 

その結果、伝統的な日本の食事を習慣とする“女性”は、西洋の食事を習慣とする女性と比較すると、脳の萎縮が少ないことを発見しました。

 

伝統的な日本の食事を週間とする男性では、脳の縮小の量に差は見られませんでした。

  

この結果にはいくつかの理由が考えられ、性別間の生物学的違いによるものであると考えられます。

 

例として、マグネシウムや魚、貝類、キノコ、全粒穀物、豆類に含まれる植物性エストロゲンなど特定の栄養素は、女性の脳に対してより強力な保護効果があるようです。

 

男女間の生活習慣の違いも関係する可能性もあります。

 

喫煙などのマイナスの健康習慣は男性の方がはるかに多いことも判明しており、さらに男性の参加者は、伝統的な日本の食生活から西洋的な食事に変わってしまう傾向が高いことが分かりました。

 

女性よりも麺類(精製炭水化物)やアルコール飲料(日本酒)を多く摂取する傾向があったことから、これらの要因が脳の縮小に関与している可能性があると考えられます。

 

脳の保護に関しては、日本食で使用される食品の多くにビタミンポリフェノール植物化学物質不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが要因とされています。

 

これらの成分はすべて抗酸化作用と抗炎症作用で知られており、脳やニューロンの働きを最大限に保つ働きがあることま分かっており、そういった諸々の要因が認知機能の低下を防ぐことを示唆しています。

 

これらのことから、伝統的な日本の食事である、魚、海産物、大豆、味噌、海藻、椎茸などの食品を取り入れることは、認知機能の改善だけでなく健康な体を保つための一助となることが期待されます。

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