【前回記事】
この記事は、著書“心理学をつくった実験30”を参考に、”パヴロフの犬”や”ミルグラム服従実験”など心理学の基礎となった実験について紹介します。
「あの心理学はこういった実験がもとになっているんだ!」という面白さや、実験を通して新たな知見を見つけてもらえるようまとめていこうと思います。
今回は、実験社会心理学の研究について取り上げていきます。
社会心理学という学問には、社会学と心理学の部門に分けることができます。
これから紹介するのは、現在の社会心理学の中心をなしている心理学の分野における社会心理学についてです。
実験テーマは、“アッシュの同調行動実験”です。
アッシュの同調行動実験
【本書より引用(要約)】
ソロモン・エリオット・アッシュ(1907~1996年)
社会心理学者のソロモン・アッシュ(1907~1996年)は、同調に関する研究の第一人者です。
彼は、8人の大学生を被験者としてある実験を行いました。
被験者は8人ですが、そのうち7人は実験協力者で、残りの一人が本当の被験者です。
彼らに与えられた課題は以下のようなものです。
まず最初に1枚のカードが提示されます。
そこには図の左のような線(基準線)が1本描かれています。
続いて、長さの異なる線(比較線)が3本書かれたカードが提示されます。
その後、実験の担当者から「3本の比較線のうち、基準線と同じ長さのものはどれでしょうか」と問われ、被験者らが座っている座席の番号順に回答されるよう指示されます。
回答するにあたり、7人の実験協力者たちは明らかに誰が見ても基準線と同じ長さではない線を選び「基準線と同じ長さである」と誤った答えを選びます。
そして最後の席に座って椅子本来の被験者がどのように回答するかを確かめました。
このプロセスを、線の長さが異なる課題を用いて12回繰り返した結果が以下の表です。
実験群(123人)は仕込みの7人を含めた状態で回答させた結果であり、対照群(37人)は実験協力者がいない状態での回答の結果です。
対象群を見てみると、当然のことながら37人中35人が基準線と同じ線を正確に選択しています。
一方、実験群では、基準線と同じ線を正確に選択した被験者は123人中29人しかいませんでした。
誤った比較線を選んだ数を見てみると、全体の3分の2、つまり8回以上同調的な態度を取った被験者が35人います。
おそらく被験者の中には、明らかに違う線を選んでいる周りの態度に疑問を持ち、中で同調を辞めた者もいれば、疑問を持つことすらやめ、最初から周りに合わせようと考えている者もいたはずです。
これら全てを込みにして算出した被験者1人当たりの同調回数は、平均4.41回となりました。
いずれにせよ、人というのは客観的に見れば明らかに間違っているとしても、多数の人が選択しているのであれば、自分も同調してしまうということが言えます。
些細な同調は生活の各所に見られる
明らかな間違いでも、それを選択してしまう心理は、こういった実験から見て取れるのですね。
しかしこの実験には批判もありました。
それは、被験者にとって線の長さを選ぶことがそれほど重要なものではないということです。
グルメサイトの評価ななどで左右されてしまうのは、こういった実験結果を反映させることができるかもしれません。
そのような些細な同調は、生活の各所に見ることができます。
では、これが人の命に関わるような重大な決断だったらどうでしょう。
それでも人は周りに同調してしまうのでしょうか。
それを明らかにした実験があります。
ミルグラムの服従実験です。
次回この心理実験について触れていきます。
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