国際がん研究機関 (IARC)や世界保健機関(WHO)によって発がん性があるとして再評価されたアスパルテーム。
IARCでは発がん性を4つにグループ分けした内、グループ2Bに分類されている甘味料です。
再評価では、1日の摂取許容量を40mg/kg体重と設定されています。
WHOの担当者は、2023年7月12日の記者会見で「製品の摂取が自動的に健康への影響につながることを示すものではない」と声明を出しています。
“自動的に”という言葉で濁しているのは、「問題ありませんよ」ではなく「今後の研究による」という意味合いが強く反映されていると読み取れます。
今回の記事では、そんなアスパルテームについての研究の一つを紹介します。
参考記事)
・Mice Fed Low Levels of Aspartame Passed on Learning Deficits to Their Offspring(2023/09/22)
・国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について(農林水産省)
・WHO 人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性の可能性示す
参考研究)
・Learning and memory deficits produced by aspartame are heritable via the paternal lineage(2023/08/31)
アスパルテームによる学習能力低下と遺伝
フロリダ大学の研究によって、食品医薬品局(FDA)が安全と判断したレベルよりも低いレベルのアスパルテームを投与されたオスのマウスは、学習と記憶の欠陥が示唆されました。
こうした変化は子孫にも見られ、世代を越えて学習能力や健康に長期的な影響があることが示されています。
今回の研究結果を受け研究チームは、「規制当局が安全性評価の一環として遺伝的影響を考慮すべきであることを強調するものである」と述べている。
研究では、FDAの1日あたりのアスパルテーム摂取制限量の15%に相当する量をマウスで実験しまた。(FDAが推奨するヒトの1日最大摂取量の7%に相当)
アスパルテームを飲み水に混ぜ、16週間摂取させた雄マウス郡と、普通の飲み水を飲ませた対照マウス群とを比較しました。
マウスのアスパルテーム摂取量を15%に設定した理由は、平均的なヒトの摂取量と同等量にするためです。
ヒトは1日あたり4.1mg/kg、つまりFDAの1日最大摂取量の15%に程度と推定されるため、投与量レベルはこれを反映するように設定されました。
認知機能のテストにおいて、アスパルテームを摂取したマウスは、顕著な空間学習障害とワーキングメモリー障害を示しました。
また、2つの投与量レベルの間に有意差は認められませんでした。
その後、アスパルテームを摂取した雄マウスを、普通の水を与えた雌マウスと交配させました。
これらのマウスのオスとメスの子供も、アスパルテームを摂取していないマウスの子供よりも空間学習とワーキングメモリーテストの成績が悪いことが分かりました。
例として、円形のアリーナにある40の選択肢から脱出ボックスを探すテストでは、アスパルテームを摂取していないマウスはすぐに箱を見つけましたが、アスパルテームを摂取したマウスは箱にはたどり着いたもののより多くの時間がかりました。
2022年の研究では既に、アスパルテームの摂取がマウスとその子孫の不安行動と関連していることを発見されています。
神経科学者のプラディープ・バイデ氏は、「これは不安行動とは別の認知機能であり、アスパルテームの影響は以前の論文で示唆されていたよりもはるかに広範囲に及んでいる」と人口甘味料の影響について言及しています。
どういったメカニズムで認知、学習障害が遺伝するのかは明らかになっていませんが、研究者たちは特に扁桃体における神経伝達物質シグナリングの変化が鍵であると考えています。
また、反転学習、記憶の保持、想起には変化が見られなかったこともあり、アスパルテームが認知機能に及ぼす影響は領域選択的であることも研究者らは述べています。
この研究結果がヒトに当てはまるかどうかを確認し、アスパルテームの摂取が認知機能に及ぼす長期的な影響を明らかにするためにはさらなる研究が必要であるとし、今後の研究によるさらなる究明が求められています。
研究の著者は最後に、「我々の発見は、アスパルテームが及ぼす学習と記憶への悪影響は、(アスパルテームを)直接暴露された人のみを考慮した現在の推定値よりも大きい可能性があることを示している」と人工甘味料の危険性について警鐘を鳴らしています。
この研究はScience reportsにて詳細を確認することができます。
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