フィボナッチ数列とは、「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233…」のように一つ前の数字を足した数が続いていく数字の法則で知られています。
黄金比のモデルと同じ数字で表すことができ、自然界の法則の一つとしてしても有名です。
ひまわりの種や松笠の数、ハチやアリなどの祖先の数を数えると、フィボナッチ数列となります。
今回はそんな自然の中でありふれているフィボナッチ数列についてのお話です。
古代の植物でもこの数列にしたがって構造が形作られているものが多いですが、近年、そうでない場合の植物が物議を醸しているようです。
参考記事)
・400-Million-Year-Old Fossil Upends Our Understanding of Fibonacci Spirals in Nature(2023/06/17)
参考研究)
・Leaves and sporangia developed in rare non-Fibonacci spirals in early leafy plants(2023/06/15)
古代の痕跡が残したフィボナッチ数列
植物の茎の葉の並び方、パイナップルの表面、松ぼっくりの鱗片などが気になったことがある方は、知らず知らずのうちに数学的パターンの例を目撃していることになります。
これらの植物に共通するのは、フィボナッチ数列と呼ばれる法則に従った螺旋状の特徴です。
フィボナッチ螺旋と呼ばれるこの構造は、特に植物に広く見られ、レオナルド・ダ・ヴィンチや、チャールズ・ダーウィンなどかつての自然哲学者(自然科学者)たちを魅了してきました。
そんなフィボナッチ数列ですが、最新の研究によって、この視点に疑問が投げかけられたことが話題となっています。
エディンバラ大学植物科学研究所のホリー・アンネ・ターナー氏らによる研究では、4億700年前の化石植物の葉と生殖器官に見られる螺旋を調べました。
その結果、驚くべきことにこ、対象となった種の植物に見られる全ての螺旋は同じ法則に従っていないことが分かったのです。
現代ではフィボナッチ数列に従わない植物はごくわずかしかありません。
6000個の松ぼっくりを分析した研究では、調べて松ぼっくりの97%のフィボナッチ螺旋(スパイラル)が見つかりました。
サルノコシカケなどの歯の先端を見ると、はは、先端から徐々に茎を巻くように螺旋状に配置されているのが分かります。
そう言った形を元に、650種類以上の植物から採集した12000本の螺旋を調べたところ、およそ90%以上の確率でフィボナッチ螺旋が発生していることも分かっています。
現存する植物種の頻度から、フィボナッチ螺旋は古くから全ての植物に多く存在していると考えられてきました。
今回の研究で調べた初期の植物“Asteroxylon mackiei”は、スコットランド北部の化石発掘地であるライニー・チャートから採集されたものです。
化石の薄片を撮影し、デジタル復元技術でA.mackieiの葉の配置を立体的に可視化し、螺旋構造を定量化しました。
この解析からA.mackieiは、葉の配置が非常に多様であり、フィボナッチ螺旋に従わない場合が多いことが分かりました。
このような初期の化石から非フィボナッチ螺旋が発見されたことは、現在の植物種の歴史から見ると非常に稀です。
今回の発見は、陸上植物におけるフィボナッチ螺旋の理解を変えるものです。
全ての葉状植物がフィボナッチパターンに従って葉を成長させることから始まったという見解を覆すことになります。
この研究により、進化の重大な疑問である“なぜフィボナッチ螺旋は現在の植物によく見られるのか”という問いに新たな視点が加わりました。
この疑問は、科学者の間で議論が続いています。
葉が受け取る光の量を最大化するため、あるいは種子を効率よく集めるためなど様々な仮説が提唱されていますが、現在その結論は出されていません。
非フィボナッチ螺旋の植物が発見されたことで、この植物の進化の系譜をたどることで、非フィボナッチ螺旋が淘汰された理由が明らかになり現代の植物の謎が解明されるかもしれません。
いずれにしろ、古代の植物は現代の植物とは少し違う進化をしてきた種があるようです。
これの発見が何を意味するのか……。
今後の研究に期待が持たれます。
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