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【閲覧注意】寄生虫が生物の行動や進化に関係しているかもしれない②

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の続き……。

 

前回記事では、オーストラリア国立大学の寄生虫学者アレックス・マイヤー氏が“適応的宿主操作仮説”についてまとめていきました。

 

今回はその仮説から、寄生虫と生物の関係についてさらに深掘っていこうと思います。

 

 

謎多き宿主を操るメカニズム

寄生虫が生物を操るメカニズムを解き明かすためのターゲットとして、ランセット型肝炎(Dicrocoelium dendriticum)が注目されています。

 

Dicrocoelium dendriticumは、羊や牛を宿主とする寄生虫です。

  

Dicrocoeliasis より

 

この寄生虫は、卵が宿主の糞に混じって排出され、カタツムリに食べられて孵化・発育します。

 

この時カタツムリの粘液の中に糖分が含まれているため、その次はアリが宿主となります。

 

アリの体内で寄生虫は成熟し、そこから羊や牛に食べられ、またライフサイクルを繰り返します。

 

ここで一つ疑問なのは、牛は基本的にベジタリアンであるということです。

 

なぜ牛に食べられにくいアリに寄生するのか。

 

数年前、ある研究チームがDicrocoelium dendriticumに感染したアリをCTスキャンしたところ、寄生虫の大部分は腹部に集まっていたことが分かりました。

  

それに加えて、アリの脳のすぐそばに1匹だけ寄生することも分かりました。

 

この1匹の寄生虫が何をするのかは未だにわかっていませんが、対象となったどのアリにも脳のすぐそばに1匹だけ寄生虫がいたのです。

 

Dicrocoelium dendriticumに感染したアリ

 

このことから寄生虫は、アリの脳を化学的あるいは物理的に操作している可能性が高いことが分かりました。

  

操られたアリが牛の呼吸などに反応し、食べ物(舌)を通じて体内に侵入するようなプロセスを辿ると考えられています。

 

しかし多くの場合、特に人間に寄生する寄生虫の場合、実際にどのようなメカニズムが働くのかは分かっていません。

 

その理由は、私達は通常、行動データに頼っているからです。

 

行動というのは、性格などの無数の要因が考えられる複雑なものです。

 

また、研究対象として行動データを選択する際、バイアスがかかることもあります。

 

2016年の研究ではトキソプラズマがヒトにおける精神疾患のリスク増加や衝動性の上昇に繋がるという予測がされましたか、この考えを支持する証拠はほとんど見つかりませんでした。

 

人間の行動を変化させる寄生虫は比較的少ないとされていますが、宿主の提供的な操作については、さらに研究が必要な分野でもあります。

 

 

進化の原動力

寄生虫と宿主との戦いは、進化的な競争の一つです。

 

寄生虫は宿主にたどり着く確率を最大限高めようとし、宿主は寄生虫の病気になる確率を最小限に抑えようとします。

 

そのため、寄生虫は宿主に感染しやすくするための適用を開発し、宿主はそれに応じて寄生虫に対する抵抗力や耐性を高めていきます。

 

このことは非常に興味深い結果をもたらす可能性があります。

 

ある心理学者は、人間の脳の進化は少なくとも部分的には寄生虫によってもたらされたのではないかという考えを理論的に展開しました。(Invisible Designers: Brain Evolution Through the Lens of Parasite Manipulationより)

  

推測の域を出ませんが、寄生虫の攻撃を模倣して脳の防御機能を刺激するなど興味深い示唆を与えてくれる考えです。

 

しかし、これがあながち大きく間違ったアイデアとも言い切れません。

 

最近の研究では、セリアック病やクローン病などの過敏性腸疾患に対して、蠕虫療法と呼ばれる腸内に生息する寄生虫による治療が有望視されています。

 

セリアック病の患者が鉤虫に感染するとグルテン耐性が大幅に向上し、鞭虫を投与したクローン病患者は寛解することが多いことが分かっています。

 

炎症性疾患の自己治療によく使われるサナダ虫

 

これらは自己免疫疾患であり、寄生虫感染に対する反応は、その理由のひとつの可能性を示唆している」とマイヤー氏は述べています。

 

過去50年間で人類は、衛生的な環境で育つ機会が増えました。

 

本来であれば、寄生虫に対処していたはずの免疫系が今は機能していないのです。

 

そして、ある人は自分の組織を攻撃することさえあると研究者は述べています。

 

これが衛生仮説です。

 

寄生虫は宿主と寄生虫の双方に、多様化、新しい生態系への参入、適応を強います

 

寄生虫のいる動物の集団は、遺伝的多様性が高いですが、それは寄生虫の成功を制限するためのものでもあります。

 

寄生虫の行動と私達自身の進化的適応を結びつけることができれば、病気の治療や予防の方法にも影響を与えることができるかもしれません。

 

しかし、それ以上に宿主を操作することができる寄生虫は、その生態を理解する手がかりを与えてくれます。

 

寄生虫というと嫌悪感やを抱く人も多いですが、この小さな生き物は、私たちやその他の動物をより大きく変化させる原動力になっているのかもしれません。

 

 

①、②のまとめ

・寄生虫によって宿主の行動が制御される

・詳しいメカニズムは不明だが、脳に何らかの形で作用している

・寄生虫が脳の進化に部分的に関係していると考えられる

 

脳内に異物が入らないようにシャットダウンする機能はとても強力で、脳関門

を通って薬剤を入れることはとても難しいとされています。

 

そう言ったバリア機能も、実は寄生虫とのせめぎ合いの中で発達していったのかもしれませんね。

 

寄生虫と言えば、寄生虫ダイエットという話題が出てきたことがあります。

 

しかし、2015年の研究では効果はないとされているようです。

What Happens to You if You Give Yourself a Tapeworm to Lose Weight?

 

単純に衰弱した結果体重が減ることはあるかもしれませんが、オススメできないダイエット方法ですね。

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