私たち人間が感じることのできる光には限りがあり、その限られた光を網膜が受け取って生活することができています。
かつて動物や昆虫は私たちと同じような光を感知して生きていると考えられてきました。
しかし、こういった人間以外の生物の中には、紫外線や磁場を感じ取ることができるものもいます。
物理学者アルバート・アインシュタインは、こういった生物が持つ特性についても興味を持っていたようです。
今回は近年発見されたアインシュタインの手紙から、当時の動物の不思議な能力に言及した様子についてご紹介したいと思います。
参考記事)
・Long-Lost Letter Shows That Einstein Predicted That Animals Had ‘Super Senses’(2023.4.8)
動物が見る世界
鳥が磁場を読んで飛行経路を決めたり、虫が紫外線を認知して花の蜜や花粉の場所などを判断したり……。
多くの動物は、人間とは違う世界の見え方がしていることが現代の研究では分かっています。
まだこういった認識がなかった頃、物理学者のアルバート・アインシュタインは、動物が持つ特別な力について他の研究者と議論を交わしていました。
1949年、アインシュタインとグリン・デイビスは、動物の知覚と物理的な世界との関係についてやり取りを行っていたようです。
アインシュタインはやり取りの中で、「渡り鳥と伝書鳩の行動を調査することで、まだ知られていない何らかの物理的プロセスの理解につながるだろう」と返信しています。
そこから70年以上経った今、アインシュタインの予感が正しかったことが分かっています。
渡り鳥は、クリプトクロムという青色光受容体によって磁場を感知することができ、迷うことなく何1000キロも移動することができます。
ウミガメ、イヌ、ミツバチなど他の動物も、地球の磁場を感知する驚くべき能力を持っていることが示唆されています。
コウモリの反響定位が発見されると、レーダー技術が発展するなど、アインシュタインがこの手紙を書いた頃から、生物学と物理学はかつてないほど融合し始めていました。
生物の学問は、彼の専門外ではありましたが、人間には見えないミツバチの世界に関して、アインシュタインが、他の生物学者同様に魅了されたことが分かっています。
アインシュタインによってタイピングされたメモの中では、ミツバチが光の偏光パターンを使用して移動することが記されています。
デイビスはこの新しい生物学的知識が将来の技術にどのように役立つかについても、関心を持っていたようで、アインシュタインもより多くの生物学的研究が必要であると主張していました。
当時の技術ではまだ応用が効かないだろうと2人とも考えたようです。
光の研究が進んだ現代では、スマホのカメラなどに表わされるような、生物学的研究から派生したテクノロジーが身近なところで使われいてます。
しかし、何十年にもわたる研究にも関わらず、未だに多くの謎が残されています。
動物が光を知覚したり、地球の磁場を感知したりする正確なメカニズムはまだ解明されておらず、様々な手で完治する方法が異なったりもします。
先程紹介した渡り鳥が持つクリプトクロムは、実は人間の細胞にも備わっており、これらの細胞は磁場の変化に反応することも明らかになっています。
紫外線や放射線など私たちが認知できない光の作用は多く存在し影響を受けますが、磁場など多くの動物が当たり前に感じている感覚も、実は私たちの中で何らかの影響を及ぼしているのかもしれませんね。
そんな、アインシュタインが残した手紙から読みとれる、科学の進歩でした!
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