科学

水分摂取目安は男性→1日に1.8ℓ、女性→1日に1.4ℓ

科学

    

人間は1日にどれだけの水分補給が適切なのでしょうか。

  

ある人は1日に1〜2ℓ以上、またある人は自分が飲みたいと思った時に思った量だけ飲むべき、と様々な意見が見られます。

 

科学的には一体どれだけの量の水分が必要とされているのか……。

  

今回はそんな水分補給についての話です。

  

  

必要な水分補給量についての研究

2022年12月12日、Science Newsにて水分補給に関する研究のまとめが掲載されました。

参考記事)

How much water should you drink a day? It depends on several factors.

  

参考論文)

Variation in human water turnover associated with environmental and lifestyle factors

ヒトの体の水の代謝回転量を予測する式を世界で初めて発明 ~23カ国5604人を対象とした国際共同調査の結果から~

  

国立研究開発法、人生物医学基盤・健康・栄養研究所の生理学者である山田陽介氏らが行ったこの研究では、23カ国に住む生後8日から96歳までの5,604人を対象に、水分の代謝のサイクルについて明らかにすることができました。

 

その結果、人の体内の水分代謝は、個人の身体的および環境的要因によって大きく異なるということが分かりました。

  

重水素として知られる水素の安定同位体を使用して人々の体内の水の動きを追跡しました。

  

飲料水は人間の総摂取水分量の半分しか占めておらず、残りは食物から摂取しています。

  

人が1日に飲む量を測定するだけでは、身体が1日に使用する水の量を正確に測定するには十分ではありません。

  

山田氏らは、20歳〜35歳の男性と30歳〜60歳の女性の水分代謝回転率が最も高いことを発見しました。

  

また、これらの数値は生活する湿度、高度、緯度や運動能力などの生理学的要因によって大きく異なりました。

  

水のターンオーバーの下限は1日平均約1〜1.5ℓで、上限は1日平均約6ℓでした。

  

水分代謝回転率は、個人の代謝の健康状態を示す重要な指標となると考えられています。

   

  

最も意外だった発見は、貧しい国に住んでいる人ほど、水分代謝回転率が高いということです。

  

ガーナ、ケニア、ナイジェリア、タンザニアなどに住む人々は、開発が進んだ国(アメリカ、日本、ベルギーなどを含むHDI加盟国)と比べても、必要な水分量が多いということが示唆されます。

    

裕福な国では、室内湿度調節が頻繁に使用されていることが原因と考えられています。

  

人間の総水分量の10%は、細胞内で発生する代謝プロセスによって毎日失われます。

  

この損失は、安全な飲料水へのアクセスが少ない人々にとって大きな問題になるだろうと、山田氏は言っています。

  

世界では20億人以上が安全な飲料水を利用できず、その数は今後も増えると予測されており、「この研究が水不足の人々の脱水症状と戦うことに役立つことを願っている」、と山田氏は述べています。

  

研究の中では、1日に8オンス(グラス8杯≒240mℓ)程度の水分補給が理想的とされていましたが、これが誰にでも当てはまる万能の解決策ではないことも示されています。

    

  

男性→1日に1.8ℓ、女性→1日に1.4ℓ

結局、必要な水分摂取量が分かっていないということになりますが、ある程度の目安は水の代謝回転から導き出すことができると研究では述べています。

   

  

この図は、水の代謝回転と年齢との相関を表したものです。

  

男性では20~35歳で最も高い値を示し平均4.2ℓ/日でした。

  

その後、年齢が上がるにつれて低くなっていき、90歳代では平均2.5ℓ/日 になっていました。

  

女性では30 歳~60歳で高い値を示し平均3.3ℓ/日でした。

  

その後、男性同様に年齢が上がるにつれて低くなっていき、90歳代では平均2.5ℓ/日でした。

  

【水の代謝回転の式】

水の代謝回転 (㎖/日) = [1076×身体活動レベル] + [14.34×体重(kg)] + [374.9×性] + [5.823×1 日の平均湿度(%)] + [1070×アスリート] + [104.6×人間開発指数(HDI)] + [0.4726×標高(m)] – [0.3529×年齢の 2 乗] + [24.78×年齢(歳)] + [1.865×平均気温の 2 乗] – [19.66×平均気温(℃)] –713.1 

  

*身体活動レベル

・座位中心な場合 1.5

・平均的な場合 1.75、高い場合 2.0)

・ 性(女性 0、男性 1)

・アスリート(非アスリート 0、アスリート 1)

・HDI(先進国 0、中間的な国 1、発展途上国 2)

  

これは、その日の平均気温・湿度が分かれば、その人の身体から1日に失われるであろう水分 量を予測できる式です。

  

20~35歳の男性は1日に平均 4.2ℓの水分が失われるわけですが、4.2ℓの水分補給が必要なわけではありません。

  

エネルギー生産の過程で生産される水分が約10%(0.4ℓ)あり、さらに呼気からも水分が入るため、85%(3.6ℓ)程度が必要な水分摂取量となります。

  

日本人の一般的な食事を3食摂取すると、およそ半分の1.8ℓは摂取することができます。

  

以上のことから、水分摂取量の目安は、男性では1日に1.8ℓ女性では1日に1.4ℓとなります。

  

 

まとめ

・20歳〜35歳の男性と30歳〜60歳の女性の代謝回転率が高い

・男性は1日4.2ℓ、女性は1日3.3ℓの水分が失われる

・食事などから得られる水分を除くと、男性では1日に1.8ℓ、女性では1日に1.4ℓが水分摂取の目安となる

  

よく言われる“1日2ℓの水分補給”という基準、女性にとっては多いように感じられますね。

  

腎臓は1日に10Lを超える水分を排泄することが可能ですが、一度に大量に水分を補給すると、電解質のバランスが崩れ、体調不良の原因になってしまいます。

  

起床時

食事前後

スポーツの前後や途中

入浴の前後

  

など、都度コップ1杯ずつ飲むことが適切と考えられています。

  

飲酒中や飲酒後においてはアルコールの代謝に水を必要とすることから、摂取したアルコールと同じかそれ以上の水を飲むなど、より意識して水分を摂取する必要があるようです。

  

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