引き続きゴヤの絵から“異端審問”の紹介です。
カトリック教義の正統性を維持するため、スペインでは1478年から異端審問が制定されました。
制度が廃止される1834年まで行われていたスペイン異端審問は、それまでの異端審問(中世)とは性質が異なりました。
弁護がなく、密告が推奨され、非公開の上で拷問を加えることも厭わない残虐性を秘め、無実の者を含む多くの処刑者を出すこととなりました。
ゴヤの時代にはかつてほどの尋問行為は行われていなかったものの、彼は19世紀までのスペインの闇に対して憂いを抱いていたとされています。
異端審問への行列
こちらはゴヤの黒い絵シリーズの一つとなっています。
異端審問への行列や異端審問とタイトルが付けられています。(ゴヤ本人が名付けたわけではないので明らかではないですが…。)
この後の様子とも考えられる“異端審問の様子”という絵が存在するため、今回は異端審問への行列と表記します。
フード付きの白いショールは修道士の法衣とされていて、行列の先頭にいるのは大法官とも言われています。
修道士を多く描いていることから、一説には聖イシードロの泉への巡礼の様子ではないかとも言われていますが、その周辺にこの絵のような場所が見当たらないため疑問視する人も多いです。
異端審問の様子
この絵は異端審問の様子を描いたものです。
被告は円錐状の帽子を被り、懺悔服に身を包んでいます。
彼らの周りを囲むのは聖職者と審問官で、その奥には異端審問の見物人が協会を埋め尽くしています。
見せ物としての側面を描くことで、異端審問の異性を示していることが分かります。
自分が異端審問の残虐性について知ったのは、漫画ベルセルクのワンシーンからでした。
ある母親が病気の子供を助けてもらうために聖徒の行列を乱したことでがきっかけで、神からの試練と称して拷問にかけられるシーンです。
その時はっきりと異端審問とは書かれていませんでしたが、それを参考にしていたことは明らかでした。
(ちなみに作中ではこのあとの話でしっかり異端審問やります😭)
現代の日本においてそのような残虐な行為を目にすることがないというのは、ある意味幸せなことだと思います。
ゴヤのように内に秘めた憂を何かによって表現するということは、少なからず(かつてと比べて)平和な社会を形成する一端を担っていると感じます。
そう考えると彼の絵は、ただの暗い社会風刺という以外の側面を見ることができますね。
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