ジョルジョーネ
今回は、前回紹介したティツィアーノに続き、ベネツィア派の代表的な人物であるジョルジョーネと彼の代表的な作品を紹介します。
ジョルジョーネはヴェネツィア近郊生まれの画家で、宗教画や神話画など様々なジャンルの絵を手掛けたとされています。
名門であるジョヴァンニ・ベッリーニの工房にて絵を学び、ティツィアーノを弟弟子としていたとされています。
ティツィアーノと合作で絵を描くこともあり、絵の技術も技法も似ていたと言われています。
ジョルジョーネたちの絵を描く技術は非常に高かったとされていますが、彼は30代前半(1510年)に流行り病によって他界することになります。
そのため彼に関する情報が少なく、その頃に描いた絵が本当に彼のものなのかは現在でも議論の対象となっています。
今回の紹介する絵は、ジョルジョーネが死ぬ前まで描いていた作品の一点、“眠るヴィーナス”です。
眠れるヴィーナス
ヴィーナスはローマ神話における菜園の女神です。
後にギリシャ神話のアフロディーテと同一視され、愛と美と豊穣を司る神として認識されるようになりました。
ジョルジョーネはヴィーナスの絵を描きはじめたものの、背景を描き切る前に道半ばでこの世を去ってしまいました。
彼の死後この絵を完成させたのは弟弟子であるティツィアーノでした。
1510年から1511年にかけて、風景や空の表現を加筆する形でこの絵を仕上げました。
片手を頭の後ろに、もう片手を下腹部に置くスタイルは、女性の裸体を表す古典的な描き方です。
“眠れるヴィーナス”は108×175cmという大きさで描かれていますが、ヴィーナスがここまで大きく描かれることはこの絵以前にはなく、当時かはとても珍しい描き方でした。
また神話画には神々固有のストーリーを思い起こさせるような描き方をする場合が多いです。
しかしジョルジョーネは、ストーリーをほとんど排除した神話画を描くことも、当時としては特徴的でした。
ティツィアーノが仕上げた“眠れるヴィーナス”の足元には、本来キューピッドが描かれていました。
しかし後に塗りつぶされたことから、ジョルジョーネが自分なりの書き方にこだわっていたことが伺えます。
女神と背景に描かれている丘や田園を調和させた描き方は、多くの人を魅了したことが分かります。
この絵が与えた影響は大きく、これ以降“横たわる裸婦”というジャンルを作ることになりました。
弟弟子であったティツィアーノもその例に漏れず、後に“ウルビーノのヴィーナス”を描いています。
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