認知・非認知能力で子ども人生が変わる~学力の経済学~【要約】

教育
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今回紹介するのは、中室 牧子氏が著された“学力の経済学”という本です。

  

特定の個人の成功体験ではなく、教育経済学の研究者らが導き出した科学的な方法が紹介されています。

  

冒頭に少し面白い例が書かれていたので、まずはそれから紹介します。

 

  

試験と祖母の急死の因果関係

テストの直前やレポートの提出期限が迫ると、身内(たいていは祖母)が亡くなったために、試験日や提出期限の延長を申し出てくる生徒が出てきます。

  

ダン・アリエリー教授がこの因果関係を調べると、祖母が亡くなる確率は、中間試験の前で通常の10倍、期末試験の前には19倍になり、成績が良くない学生になるとなんと50倍にもなりました。

  

学校で教鞭を執るこの本の著者がこのことを生徒に伝えると、次の試験から祖母の不幸はただの一人もなくなったとのこと。

  

つまり何が言いたいのかというと、

“人間は騙せてもデータは騙すことができない”

ということです。

 

  

「勉強しなさい!」で勉強するのか

次の例は親の関わりと勉強時間の統計です。

  

下の表は、親が子供の勉強にどう関わったかによる結果の違いを表したものです。

・勉強したか確認する=Confirms that the child studied

・勉強を見ている=Watchs the child study

・勉強する時間を決め守らせる=Makes the child adhere to set study times

・勉強しなさいと言う=Tells the child to study

  

More Time Spent on Television and Video Games, Less Time Spent Studying? 

  

上の表が母親の関わりを、下の表が父親の関わりを表し、グラフが右に伸びるほど子どもの学習時間を増加させる効果が高いことを表しています。

  

結果をみると、母親が女の子に対して「勉強しなさい」と言うと、学習時間にはマイナスの効果があることが分かります。

  

このように、データから分析された結果をもとに、親が知るべき子どもとの向き合い方が書かれています。

  

とても参考になり面白かったので、この本で学んだことをまとめていこうと思います。(本に載っていなかったデータは自分が調べたものを載せていきます。)

  

  

ご褒美は結果より努力へ

インプット(勉強すること)にご褒美をあげる場合と、アウトプット(テストの結果など)にご褒美をあげる場合で、テストの点の上がり具合を調べた研究があります。(The Power and Pitfalls of Education Incentives

  

  

インプットの条件は

“予め決められていた出席回数や態度が基準を超えればご褒美”

“本を読んで簡単な質問に答えられたらご褒美”

“算数の練習問題を解く毎にご褒美”

などです。

  

アウトプットの条件は、

“前回よりも点数が上がったらご褒美”

“通知表の評価が高いほどご褒美”

などです。

 

結果はインプットにご褒美をあげる子の方が、テストの点数は上がったと言われています。

 

その理由は、やることが明確であったことが要因と考えられます。

  

インプット側は「〇〇をやったらOK」具体的に何をやれば良いかがはっきりしていることから、行動もしやすく達成感を得られやすいのでしょう。

  

対してアウトプット側のように「テストで点を取ったらOK」などといった場合は、ゴールが遠すぎてまず何をやればいいのかを考えなければいけないですし、適切に考え行動できる子なんてそうそういません。

  

以上のことから、子どもが勉強しなくて悩んでいる親は、子どものテスト結果に対してあーだこーだ言うよりも努力に対してご褒美をあげるという手法の方が効果的なことが分かります。

 

  

褒めるのは”能力”ではなく”努力”

Claudia M. Mueller教授らの実験(Praise for Intelligence Can Undermine Children’s Motivation and Performance )に、褒め方による勉強への意欲向上や低下を調べた研究結果があります。

  

グループを

①能力を褒める=「あなたは頭がいいね」

②努力を褒める=「よく頑張ったね」

③褒めない

に分け、3回のテストをします。

  

2回目のテストだけは難関なテストを実施し、3回目のテストでどう学習意欲が変化したかを計測します。

  

結果は、②の努力を褒められたグループの学習意欲が一番高く成績も伸びたという結果がでました。

  

逆に①の能力を褒めたグループは、テストをやるたびに学習意欲と成績が下がったとされています。

  

理由は、①の能力を褒められたグループは、解けない問題があると自分の才能が足りないからできないと判断しがちで諦める傾向が強く、②の努力を褒められたグループは、解けない問題があると自分の努力が足りないと考えたことが挙げられます。

  

結果的に②のグループの方は難易度にかかわらず、粘り強く挑戦する傾向にありました。

  

以上のことから、褒めるなら結果よりも努力を褒める方が効果的なことが分かりました。

 

具体的には「今日頑張って算数の問題を解決できたね」や「今日は〇時間勉強できたね」など、成長した内容を褒めることが重要です。

 

  

良い先生とは

いい先生のもとで学ぶことができた子どもは、学力を伸ばすだけでなくその後の人生においてもいい影響を与えるとされています。

  

ハーバード大学のチェティ教授らが行った研究では、全米都市圏に通う100万人の小中学生のデータから、20年分のデータを分析しています。(Measuring the Impacts of Teachers IMeasuring the Impacts of Teachers II

  

能力の高い教員が教えた場合、1年で約1.5年分の内容を修得できるなど学習面での効果が見られたうえ、望まない妊娠の確率ダウンや生涯年収のアップ、大学進学率や犯罪率の低下など人生においても様々影響を与えることが分かりました。

  

そしていい先生とは、去年のクラス平均80点を今年も維持する先生ではなく、去年の平均30点だったとしても今年の平均を35点にする先生、つまり生徒の能力を伸ばすことができる先生と言えます。

 

  

非認知能力=生きる力

非認知能力とは、IQテストや学力テストでは計測できないあらゆる力のことを指します。

  

例えば…

意欲:ものごとに対するやる気

忍耐力:結果がでるまで粘り強く取り組む力

回復力:立ち直る力

メタ認知力:自分や周囲の現状を把握する力

自己認識:自分に対する自信

社会適正:リーダーシップなどコミュニケーション力などコミュニティにおける社会性

創造力:自ら新しいことを考えたり、工夫する力

自制心:自分をコントロールする心、意思力、精神力



  

コロンビア大学のミッシェル教授が行った有名な調査結果があります。

  

186人の4歳児の前にマシュマロを用意し、「大人が戻ってくるまで我慢したらもう一つあげる」と約束をし、大人は部屋を出ていく。

  

結果、大人が戻ってくるまでマシュマロを我慢した園児は全体の3分の2だったそうです。

  

その後の追跡調査によると、我慢できた子の方が大学入学テストの点数がずっと高かったことが分かりました。

 

下の図は、貧困家庭の子ども(3~4歳)に対して、非認知能力を高める学習をさせた場合の学力やIQの変化を表したものです。

 

Understanding the Mechanisms Through Which an Influential Early Childhood Program Boosted Adult Outcomes  より

  

赤い線が質の高い教育を施した処置群で、黒い線は普通の教育を受けさせた対象群です。

  

上の図が男子で、下の図が女子です。

  

男女によって差はあるものの、8~9歳になるとIQや学力に大きな差はみられないという結果が分かりました。

  

表面的にみると学力が変わらなければ、非認知能力を伸ばした意味はないと思われがちですが、面白いのはその先の結果です。

  

質の高い学習プログラムを受けた子どもは対照群と比べて、19歳時点での留年率の低下、高校卒業率の上昇がみられます。

  

27歳時点になると持ち家の所持率の増加、過去10年間の生活保護の受給率の低下、被雇用率の上昇がみられます。

  

40歳を超えると、年間2万ドル以上の所得を得る確率の上昇、自家用車の所持率の上昇、貯蓄口座保有率の上昇、5回以上の逮捕回数の減少などが見られます。

 

例え貧困層だったとしても、非認知能力を高める質の高い学習を受けることで、人生における測り知れないメリットがあったと考えられます。

 

  

まず伸ばすべき非認知能力

とは言っても数ある非認知能力から何を伸ばせばいいのか…?

  

著者は“自制心”と“やり抜く力”を伸ばすことがオススメであると述べています。

  

自制心とやり抜く力は、遠いゴールに向かって興味を失わず努力を続けられる能力のことです。

  

確かに、何かにおいて結果を出す人というのは得てして何かしら継続する力があるというのは、人生において身に染みている人も多いのではないかと思います。

  

・自制心の伸ばし方

まず自制心は筋トレと同じで、何かを繰り返し継続的に行動することで身についていきます。

 

背筋を伸ばして勉強をする、使った食器は自分で洗う…はじめは意識しないと行動できないようなことを続けることで自制心が身についていき、やりたいことの前にやるべきことができるようになっていきます。

  

・やり抜く力の伸ばし方

“自分の能力は後天的に伸ばすことができる”と信じてる子どもは、やり抜く力が強いと言われています。

  

親や先生からこのようなメッセージを定期的に伝えられた子どもは、やり抜く力が強くなり、成績もアップしたことが研究によって明らかになっています。

  

逆にこのやり抜く力を低下させてしまうきっかけもあります。

  

「年齢とともに記憶力は落ちる」と書かれた記事を読んだ人は、記事を読んでいない人よりも実際の記憶量が少なくなっていたことも分かっています。

  

やり抜く力を伸ばすには、大人が「お前は馬鹿なんだからもっと頑張れ」など余計なことを言うよりも、「あなたはもっとレベルアップできるよ」という声掛けが必要ということですね。

  

結局のところ気分次第ということになりますが、子どものころから“自分はできるようになる”と信じ込まされていた方が、人生におけるメリットは測り知れないものとなるでしょう。

  

  

※子にやらせたいなら自分もやる

非認知能力はいくつになっても、大人になっても伸ばすことができると言います。

 

大人の姿を見て子は育つと言いますが、子どもに頑張らせるには大人も一緒に頑張らなければいけないというのが自分の意見です。

  

勉強させたいなら自分も勉強している姿を見せる。

  

本を読んでほしいなら「読みなさい」、「読みましょう」と言うのではなく楽しんで読んでいる姿を見せる。

  

言葉ではなく行動で示すことが一番説得力があると思いますし、経験上そうだと感じています。

  

とは言え自分もこれから色んな勉強をしていきたい…。

  

そんなことに気付かされた本でした。

 

参考文献

・「勉強しなさい!」で勉強するのか の参考文献

More Time Spent on Television and Video Games, Less Time Spent Studying?(PDF)

  

・ご褒美は結果より努力へ の参考文献

The Power and Pitfalls of Education Incentives(PDF)

  

・褒めるのは”能力”ではなく”努力” の参考文献

Praise for Intelligence Can Undermine Children’s Motivation and Performance (PDF)

  

・いい先生とは の参考文献

Measuring the Impacts of Teachers I(PDF)

→生徒(学力)への影響

Measuring the Impacts of Teachers II(PDF)

→成人(人生)への影響

  

・非認知能力=生きる力 の参考文献

Understanding the Mechanisms Through Which an Influential Early Childhood Program Boosted Adult Outcomes(PDF)

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